2026年11月2日(月)更新
中井亜美、仏大会で2季目好発進。「プレッシャー」制して金メダル
プロ野球など、スポーツの世界では「2年目のジンクス」という言葉を、しばしば耳にします。シニア1年目の昨シーズン(2025/26年)、ミラノ・コルティナ冬季五輪女子シングルにおいて、日本フィギュアスケート史上最年少の17歳でメダリスト(銅)となった中井亜美選手(TOKIOインカラミ)の2シーズン目がスタートしました。
「怖いもの知らず」
中井選手は、ほぼ満点といっていい昨シーズンについて、今年6月に開かれたドリームオンアイス後の囲み会見で「怖いもの知らずでワクワクと楽しむ気持ちだけでシーズンを過ごしていました」と振り返りました。
しかし、18歳になった今、「怖いもの知らず」だけで、この先も突っ走れるとは限りません。今シーズンに入ってからは「プレッシャー」や「緊張感」、「覚悟」といった言葉を多用するようになってきました。
それらを時系列に沿って紹介していきましょう。
・6月26日 ドリームオンアイス
「今回のドリームオンアイスでも、やっぱり緊張感も多少のプレッシャーもありました。今後、先生方に相談しつつ、自分でちゃんと向き合って乗り越えていければいいな、と思っています」
・9月30日 木下グループ杯 前日練習
「去年より、若干の緊張感はあるんですけど……。大舞台で緊張を跳ね除けて頑張ってきたという自信だったり、結果も出したので自分を信じることができればいいな、と……」
・10月15日 2026/27年シーズン会見
「大きな国際大会に出て、うまくいった試合がたくさんあったことで、“簡単”に思われているかもしれないですが、必死に頑張ってやってきました。1年1年ちゃんと覚悟を持って、しっかり結果を残したいです」
グランプリ(GP)シリーズ初戦は10月23日(日本時間)から始まったフランス大会(会場はアンジェ)。ショートプログラム(SP)でピンクの衣装に身を包んだ中井選手は「ポル・ウナ・カベサ」を披露しました。
彼女の代名詞であるトリプルアクセルは、回転が抜けてシングルになったものの、ミスを引きずることなくルッツ+トーループの3回転の連続ジャンプ、単独の3回転ループを見事に成功させました。スピン、ステップはすべて最高難易度のレベル4の評価を得ました。スコアを70.66点とし、3位につけました。
重圧を乗り越えた証
中井選手は、トリプルアクセルのミスについては「動揺せずにしっかりと気持ちを切り替えられたのは収穫でした」と語り、フリープログラム(フリー)に向けての抱負をこう述べました。
「フリーは自分らしいプログラムになっているので、しっかりとフランスのみなさんに(自分らしさが)伝わるように演技をしたいです。トリプルアクセルは絶対に成功させたいなと思います」
そして迎えた翌日のフリー。中井選手は黄色の衣装姿で氷上に立ちました。プログラムは「パリのアメリカ人」。冒頭のトリプルアクセルは空中で軸がやや斜めになったものの、安定した体幹でバランスを取り、見事な着氷を披露しました。連続ジャンプや単独ジャンプも全て成功させ、両こぶしを突き上げてガッツポーズ。笑顔をつくった直後に、ほんの少しの涙が垣間見えました。それが何より「重圧」を乗り越えた証でした。
結果はフリー自己ベストタイとなる149.08点。SPとの合計を219.74点として首位に立ちました。2位のアナスタシア・グバノワ選手(ジョージア)に16.92点差をつけ、中井選手は2年連続でGPシリーズフランス大会を制しました。
演技後、彼女は胸を撫でおろして、こう語りました。
「今日の朝からプレッシャーを感じていました。公式練習でも6分間(練習)でも自分自身を信じることができなかった。曲が始まる前、自分を信じてあげることが一番大事だと思い出して、信じ切ることができた。その結果として良い演技ができたと思います」
さらにはフリーでのトリプルアクセルについて「100点満点ではないですが……」と前置きして、こんな話も。
「この緊張感の中でぎりぎりでしたけども、耐え抜いて着氷することができたのは、大きな経験になりました。こういう状況でも成功できるんだ、と学びになりました」
中井選手のGPシリーズ次戦は、日本時間11月15日からスタートする第4戦・アメリカ大会(エヴェレット)です。プレッシャーを力に変えながら成長していくプロセスを見守りましょう。
(取材/大木雄貴、構成/二宮清純)

二宮清純





