2024年7月24日(水)更新

ドジャースと五輪の深い関係
ラソーダで金、ソーシアで銀

 五輪における野球は、1992年のバルセロナ大会で正式競技になって以来、2021年の東京大会まで、6回実施されていますが、シーズンが重なるため、現役のメジャーリーガーは原則として出場することができません。

 ところが、ここにきてメジャーリーガーの参加が現実味を帯びてきました。ドジャースの大谷翔平選手、ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手、フィリーズのブライス・ハーパー選手らスーパースターが、28年ロサンゼルス大会出場に興味を示す発言を行ったからです。今回は五輪野球とドジャースの関係について述べてみましょう。

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オマリーの国際化路線

 メジャーリーグの中でも、ドジャースは最も野球の国際化に熱心な球団です。元オーナーのピーター・オマリーさんに、私がインタビューしたのは93年のことです。以下は、その時のインタビューの一部です。

「私は日頃から、野球こそ世界共通の素晴らしいスポーツだと考えてきました。実際、野球をオリンピックの正式競技に認めてもらうために、何年もかけてIOCに働きかけたこともありますし、ドジャースとしても暮れに日本や台湾に遠征したり、今シーズンには韓国の若者と契約を結んだりしました」

 オマリーさんが野球の五輪正式競技化に熱心に取り組んできたからではないでしょうが、主にマイナーリーガーなどプロの出場が認められるようになって以降の米国代表監督は、皆ドジャースと関係のある者ばかりです。

 まずは00年のシドニー大会で指揮を執ったトミー・ラソーダさん。ドジャースの監督として通算21シーズンで、ワールドシリーズ優勝2回、リーグ優勝4回を誇る名将です。

「私の体を切ってみろ。ドジャーブルーの血が流れるだろう」とのフレーズで有名ですが、日本では野茂英雄さんを「グレート・マイ・サン」と呼んだことでも知られています。

 ドジャース監督退任から4年後、シドニーの地で米国代表の指揮を執ったラソーダさんは準決勝で韓国を3対2、決勝でキューバを4対0で破り、米国に初の金メダルをもたらしました。

 残念だったのは、04年のアテネ大会出場を目指したフランク・ロビンソンさんです。アメリカ大陸予選で敗れ、本大会出場を果たすことができませんでした。ロビンソンさんと言えば、史上初めてア・ナ両リーグでMVPに選ばれた名選手中の名選手です。通算2943安打、586本塁打、1812打点。また75年には選手兼任で黒人初のMLB監督(インディアンス)に就きました。ドジャースには72年の1シーズンだけプレーしました。ちなみにアテネ大会で優勝したのはキューバでした。

28ロス大会の指揮官は!?

 アテネから4年後の08年北京大会、米国代表を率いたのが、日本でもお馴じみのデービー・ジョンソンさんです。引退した長嶋茂雄さんの後釜と期待され、75年と76年の2シーズン、巨人でプレーしましたが、73年にブレーブスで43本塁打を放った時の輝きを見せることはありませんでした。

 監督としては86年、メッツをワールドチャンピオンに導いています。99年と00年はドジャースを率いましたが、ポストシーズンゲームには進出できませんでした。

 北京では準決勝でキューバに2対10と大敗。3位決定戦では星野仙一監督率いる日本に8対4で打ち勝ち、銅メダルを手にしました。

 新型コロナウィルス感染拡大により、1年延期になった21東京大会の米国代表を率いたのは、捕手としてドジャース一筋の現役人生を送ったマイク・ソーシアさんです。現役引退後はドジャースのコーチやマイナーチームの監督も務めました。指揮官としてのハイライトは02年のシーズンで、エンゼルスをワールドシリーズ優勝に導きました。

 東京でソーシアさん率いる米国代表は21年ぶりに決勝に進出し、五輪史上2度目の金メダルを目指しましたが、日本が誇る森下暢仁、千賀滉大、伊藤大海、岩崎優、栗林良吏の5人の投手リレーの前に打線が沈黙し、0対2と完封負け、銀メダルに終わりました。

 4年後のロサンゼルス大会、米国代表監督は5たびドジャースとゆかりある人物が務めるのでしょうか。ひそかに注目したいポイントです。

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二宮清純

二宮清純 スポーツジャーナリスト

1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。

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