コラム

アスラファ体験してもらいました! 武田真治 篇

フランス発の人気ミステリー『アストリッドとラファエル 文書係の事件簿』の魅力について、観たらすっかりドハマりしたという俳優・武田真治さんに語っていただきます。女性バディならではのしなやかな空気感で描かれた作品の魅力から、武田さんらしい筋肉への例えや、武田さんが人生において大切にしている言葉まで。アメリカや韓国の海外ドラマとは一味違ったフランス作品特有の表現と魅力に、独自の視点で迫ってくれました。

多様な社会に基づいて人間が描かれた作品

——本作をご覧になって、どのような第一印象を抱かれましたか?

「あらゆる面において、最先端の題材を扱っている刑事ドラマだな、と感じました。主人公のアストリッドは、抜群の記憶力を持つ自閉症の資料係。まず彼女の描き方が、単なるポリコレ的な配慮ではなく、純粋に『能力を認める』という今の世界的な多様性社会のあり方に基づいているように感じました。膨大な資料から情報の断片を繋げ、犯人を導き出してしまう、彼女の能力。その才能が買われ、事件現場にも出向いていく。そのプロセスが極めて近代的ですよね。おそらく以前のドラマであれば、自閉症の主人公を現場に駆り出すために、周囲を説得するまでの一悶着にもっともっと時間を割いていたと思います。1話目から彼女の才能が存分に活かされる展開は、非常にテンポが良く見やすかったですね」

——その人の「できること」にスポットを当てる。その視点こそが、今の時代に求められている気がします。

「まさに今の時代にフィットしていますよね。アストリッドはコミュニケーションこそ苦手ですが、周囲は彼女のマイナスではなく、抜群の推測力というプラスの面を見ている。普通の刑事が持ち得ない独自の視点で事件を解決していく姿を見ると、日本でも同じように、秀でた能力をもつ方々が、当たり前に社会へ出ていけるようになってほしいなと、深く考えさせられます」

“女性同士のバディ”に感じる新鮮な心地良さ

——本作は世界各国、幅広い世代から支持を集めていますが、その理由はどこにあると思いますか?

「真逆の性格のバディが関係を深めていく構図は、恋愛もののボーイ・ミーツ・ガールでよくあって、最初は大嫌いから始まる物語には王道の面白さがありますよね。ただ、今回はアクティブな女性刑事と、記憶力にすぐれた自閉症の女性という組み合わせ。この二人がバディになっていく姿は、男同士が仲良くなっていく模様を見るのとは違う、どこか新しさを感じるんです」

——女性同士のバディという設定自体、刑事ドラマとしては新鮮な切り口かもしれませんね

「そうなんですよ。コミュニケーションが苦手なアストリッドをラファエルがフォローしていく姿も、男性同士のバディものなら、行く先々でいちいちケンカを繰り返していたと思うんです。でも、今の時代においては、そうした衝突ももはやナンセンスに感じてしまいます(笑)。女性同士だからこそ、ラファエルが柔らかくその場を収め、アストリッドにとって居心地のいい空気を作っていく。そんなやさしさのある関係性が、非常に新しい切り口だなと思いました」

やり始めれば、自然とやる気は出るもの

——本作のファンの間では心に残る言葉が多いことも人気の理由です。武田さんが今、大切にされている言葉があれば教えてください。

「今でいうと『やり始めればやる気が出る』という言葉です。何かを始める時、自分にできるのだろうか、向いているのだろうかなどと、ついつい頭で考えてしまいがちですが、何事もやり始めてしまえば、自然とやる気は湧いてくるものなんですよね」

——どんなことにでも当てはまる、非常に説得力のあるメッセージですね。

「以前、バラエティ番組で経験のないガラス細工に挑戦した際もそうでした。やり始めたら『こうしたい、ああしたい』という意欲がどんどん湧いてきて、結果的に番組で優勝してしまった。まさに、やり始めたことでやる気が出た結果だと思います」

——それは、やはり筋トレにも通じるお話でしょうか?

「筋トレもまさにそうです。トレーニングで一番重く感じるときは、その日の最後に扱う最高重量ではないんですよ。じつは、いちばん最初のウォーミングアップで持つ、重りも付いていないバーだけの状態が一番重い。なぜなら、その瞬間が最もやる気スイッチが入っていないからです。だからこそ、『やり始めればやる気が出る』。とにかくやってみようと、いつも自分自身に言い聞かせています」

——この言葉を聞いて、人生に対して前向きなやる気が湧いてくる方も多いと思います。

「もしそう感じてくださる方がいたら、まずはこのドラマを見始めてほしいですね。見始めてさえいただければ、きっと最後まで見続けてしまうはずですから(笑)」

「アストリッドは遅筋、ラファエルは速筋」

——物語が進むにつれ、アストリッドとラファエルの二人の絆もより深く、濃密に変化していきます。そこで、武田さんに二人の関係を「筋肉」に例えてもらいたいのですが……。

「僕が一生懸命ドラマの話に戻そうとしているのに、そうやって無理やり筋肉の話をさせようとする……。僕とインタビュアーさんとのせめぎ合いも、一種のバディのようなものなんでしょうか(笑)。

そうですね……。

行動力で謎を解いていくラファエルは、ベンチプレスやスクワットのような、瞬発的なパワーを出す『無酸素運動』。対してアストリッドは、膨大なデータからじっくり答えを導き出す、ランニングのような『長期的・継続的な運動』。つまり、ラファエルが『速筋』で、アストリッドが『遅筋』。その二つが組み合わさって一つの体が動くような関係性、と言えるのかもしれません。

——なるほど……?

「いや、今のよく絞り出した方だと思いませんか!ただ、この例えを聞いて、二人の関係性のイメージがより遠くなってしまった人がいないか、今はそれが心配です(笑)」

フランスならではの感性で描かれた良質なサスペンスを

——本作の魅力を改めてお願いします。

「そもそもなんですけど、まず『謎解きもの』として非常に質が高いんですよ。登場人物の設定も新しく、女性同士のバディだからこそ、無駄な衝突をせずにしなやかに事件を解決していく気持ち良さがある。では、男性が見て物足りないかといえば決してそんなことはありません。刑事が現場で取るべきシビアな判断もしっかり描かれていて、ハードボイルドな瞬間も多々あります」

——派手なアクションばかりに頼らない、大人のためのエンターテインメントという印象ですね。

「そうですね。ド派手な爆発やアクションではなく、練り込まれたストーリーをじっくり楽しみたい方にこそ、ぜひ見てほしい作品です。あと、フランス語の響きってすごく耳なじみがいいんですよ。どこかかわいらしさもあるし、温かみがあって。そんなやさしい口調なんだけど、さらっと皮肉を言っていたりする。そのギャップも面白く、全体的にとてもおしゃれな雰囲気を感じますね」

——最後にメッセージをお願いします!

「海外ドラマファン……といっても、最近はアメリカや韓国、中国の作品に偏っているという方も多いんじゃないでしょうか?そういう方には、ぜひこの作品に触れてみてほしいです。フランス作品ならではの、おしゃれな映像や街並み、そしてどこか見慣れない独特の空気感。これらは、ほかの作品ではなかなか味わうことができない要素だと思います。

ほかでは味わえない良質なサスペンスでありながら、映像の美しさ、その場に漂う空気感も含めて、作品として非常に練り込まれています。そうした雰囲気を楽しみながら、じっくりと謎解きの世界に浸ってみてほしいですね」

取材/中村実香 文/郡司 しう 撮影/梶 礼哉

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