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▼今年はイギリス現地で刊行20周年です。「本は読み返すと見方が変わる」と仰っていた松岡さん自身も、今読み返して何か感じ方に変化はありますか?

私も年をとりましたけれど、不思議と感じ方は変わりませんね。今でも読み返すと最初の興奮が蘇ります。ペガサス文庫が静山社から出ていますが、これは少年少女、小さなお子さん向けに総ルビで読みやすくしました。その時「10年経っているからもう一度翻訳を見直してみよう」と、最初から読み直したんです。これは直した方が良いと思う言い回しや、7巻を読んで初めて分かる謎に基づいて訳し直した所もあります。ですが、不思議と大きな変化はなかったんですね。最初に読んだ時に、必死になって訳した時の感覚が未だ残っています。ですから、ハリー・ポッターに関しては、私の世界は一貫して変わっておりません。

また、本の歴史では日本はまだ20周年ではないですが、不思議なことに私自身の20年という人生の節目が重なっています。前の主人が亡くなり20年が過ぎ、新しい主人と結婚して10年が経ちました。10年前、亡き主人がずっと応援してきた日本ALS協会が創立20年を迎え横浜で国際会議を開きました。「日本で国際会議を」という亡き主人の夢、さらに「一度でいいからベストセラーを出したい」という、主人から引き継いだ2つの夢が叶ったのも2007年でした。

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▼今改めて読み返すと、感情移入するキャラクターが変わられた、という事はありますか?

スネイプですかね。第1巻から絶対何かあると思っていましたので、はっきりとそれが何か分かった時に「ああ、やっぱり。スネイプはこういう人間だったか」と。複雑で屈折した人間ですけれど、魅力的ですね。私が翻訳を始めたのは50代半ばを過ぎていたので、その時に感じた人間に対する考え方は、今でも大きくは変わっていないと思います。でも、これが10代の時に読んでいたり、30代の時に訳していたならばだいぶ変わったかもしれません。ですから、10才で読み始めた方は20歳で読み返し、30歳で読み返し、それこそ何周年か記念の時に読み返すことをお勧めします。

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▼「読んだ原作本が1冊増えるごとに、トランプ大統領への評価が低くなる」という研究結果も出ているそうで、ハリー・ポッターには“他者を受け入れる”という考えや多様性を受け入れる土壌を育む力があるとも言われますが、今この社会においてハリポタを読む意義はあると思いますか?

物語の世界というのは精神世界ですので、政治と直接には関係が無いと思います。J.K.ローリングも、世界中がその発言に注目していて、政治に影響を与えるほど力がありますが、彼女自身が政治的な発言をしているとは決して思いません。今回のトランプに関しては「トランプはヴォルデモートよりも悪だ」とTwitterで発言しているのを読みました。でも、政治的な発言と物語の世界とは一線を画すべきものだと思います。

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▼政治とは一線を画しつつもハリー・ポッターの世界は人間社会に通じるものが描かれていますよね。

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そうです。ローリングは子供向けに書いた覚えはない、とずいぶん昔に言っています。つまり自分が本当に面白いと思えるものを書いた。この物語には世界が凝縮されていると思います。愛、友情、勇気、つまり人間が描かれています。J.K.ローリングは人間の本当に汚い部分も見ていますから、その意味で面白いんですね。上っ面な人間の描き方をしていない。これを読めば「こういう人間がこういう事を考えるんだ」と、特に小さいお子さんの心には強く残るかもしれませんね。大人になって読んでも、決して薄っぺらではない内容です。

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