——はしもさんのネタ、韓国あるあるはどうやって生まれたんですか?
はしも:
4〜5年前くらいだったと思うんですけど、コロナ禍になる前に芸人たちでインスタグラムやTik Tokとかでショート動画を流すのが流行った時期があるんです。 「細かすぎて伝わらないモノマネ」的な小ネタやギャグとか特技をアップする芸人がたくさんいて、「お前もやった方がいいんじゃない?」的な空気が、どことなくあったんですよ。
で、まず相方の俵山がやり始めて、初めてバズったときに「橋本もなんかやれば」って言われて。で、ちょうどあるあるネタも流行ってたし、自分ができるのって韓国系のことぐらいしかなかったので、やってみたんですよね。
ただ、どっかで「バカにしてるんじゃないか?」みたいに受け取られるのが最初は結構怖くて。本当に好きでやってるのに、そういう冷ややかな目線にビクビクしながら上げてましたね。
——そうだったんですね。
はしも:
で、最初に上げた「韓国料理店で、厨房に通す声が多すぎる」というネタを上げた動画がすぐに数万回再生されて。で、僕らは一日3ステージ、満席でお客さんが入ったとしても300人×3なんで、1000人行かないくらい。それが動画を上げたら一瞬で何十倍もの人が観てくれたわけですよね。
やっぱり、芸人としての知名度も上げたいですし、本格的に動画でネタを上げていこうか、というふうに始めたのがきっかけです。
——とくに反響の大きかったネタというと?
はしも:
韓国ドラマあるあるで、「最後は必ず静止画」ですね。ちょうどNetflixで韓国ドラマが流行りだした時期の少し前に上げていたので、時期的にもハマってかなりドンって再生数が上がりました。
『韓流ドラマあるある最後は必ず静止画』 pic.twitter.com/vQ1cBXs4TW
— スクールゾーン はしも (@schoolzonehsm) October 9, 2019
——ちなみに、相方の俵山さんからは
「韓国あるある」のネタに対する感想はどうなんですか?
はしも:
いや、とくに。なんか相方は、前に付き合っていた彼女にデートをすっぽかされて、SHINeeのライブを観に行かれていたことがあるらしく、そこからK-POPアイドルに対する憎悪というか嫉妬というか、があるらしくて、というのは言ってました。
——(笑)。芸人仲間で、韓国ドラマの話題で盛り上がれる人っているんですか?
はしも:
いやぁ、あんまりいないんですよね。強いて言うなら、トレンディエンジェルの斉藤さんと奥さんはたまに情報交換したりしますが、あとは吉本の社員さんですかね。あとは韓国ドラマではないですが、K-POPのことだとジェラードンのかみちぃさんとは話します。
でも韓国ドラマで盛り上がれる人が少ないので、ちょっと寂しいですね。
インタビューの休憩中、トイレから帰ってきて突然、
「怒りすぎて逆に“ハッ”と笑ってしまう、韓国ドラマあるある」をやり始めたはしもさん
〈ドラマ解説〉
はしも:
タイトルに“復讐”という言葉が入っているので、ぱっと見の印象は結構ゴリゴリのドロドロ系なのかなと思ったら、全然胸くそ悪い感じがなくて、観終わってみるとわりとスッキリできる作品だったなという感想です。
あと、すごく感じたのがこのドラマが「韓国じゃなきゃ生まれない作品」だということ。ストーリー的に、SNSやインフルエンサーの位置付けがすごく重要で、その描き方に韓国と日本でのSNSの捉え方の違いがよく表れています。韓国ユーザーのほうがSNSの情報に対する信頼をより強く感じていて、そういう社会的構造を利用した復讐劇というところも、社会派サスペンスというか、このドラマ特有の面白さに繋がっていますよね。
これは2019年のドラマですけど、気づけば日本も、今このドラマのような感じになっている気がします。SNSを開くと、嫌でも流れてくる芸能ゴシップ。そのユーザーの反応次第で、芸能人の一進一退が左右されたりするし、「これを見据えていたのか、韓国のエンタメは!」という気持ちになりました。
一見、全32話とあるので長いような気がしますが、一話あたり30分弱なので、実質16話分。短い分、次が気になってどんどん見入ってしまう中毒性があるドラマです。
© 2020-21 TV Chosun
STORY:
ヘラ(キム・サラン)は韓国で最もホットなインフルエンサー。夫は国民的MCで、自著の出版や番組出演など、順風満帆な日々を過ごしていた。ところがある日、年下のアイドル出身リポーターのヒョンソン(チョン・ウィジェ)との根も葉もない不倫スキャンダルに巻き込まれ、ヘラの人生は一夜にして崩れ去ってゆく。世論や夫からも見放され、さらには賠償金請求までされた絶体絶命のヘラの前に、弁護士のミンジュン(ユン・ヒョンミン)が現れる。そして、弁護を引き受ける代わりにヘラが運営する“復讐チャンネル”でライブ配信を続けるよう要求する。ヘラはかつての知り合いが経営するクサン企画の仲間と共にミンジュンから依頼を受け、様々な復讐を代行しチャンネルを通して配信していく。しかし、その様々な復讐の裏には、ある大きな陰謀があるのだった――。
© 2020-21 TV Chosun
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はしも:
韓国ドラマでは珍しく、あまりラブストーリーのにおいがしない作品で、それが観ていて逆に新鮮でしたね。だんだん仲間が増えて復讐して、という展開は『梨泰院クラス』にも通じるところがあるので、意外と男性のほうがハマってしまう韓国ドラマなのかなと思います。
で、詳しく説明するとネタバレなので詳しくは言えないんですが、物語は、小さな復讐と大きな復讐の二軸で進んでいくような感じなんですよ。大きな復讐だけの話だと、最後の瞬間までイライラメーターが溜まってしまうので、観ていてしんどいんですが、数話ごとに小さな復讐が入ってくるので観ている側は少しずつスカッとできる。その二軸で進むのが、効果的だった気がしますね。
その溜めて放つ感じが、どことなくサウナに近い。あえてストレスをかけて、一気に解放して、その解放状態が最高に気持ちいい。韓ドラサウナ。「よし、今日は韓国ドラマで“整う”ぞ!」という感覚で、観ていただきたいですね。
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はしも:
なんといっても主役のキム・サランさんの演技力ですよね。一夜のスキャンダルで転落して、徐々に這い上がって復活していく人気キャスター、あの、物静かな表情の奥にある負けん気を感じさせる女性を演じられるのは、すごいですよね。
表現が合っているかどうかはわからないんですが、すごく演技に安定感があると感じるんです。例えば韓国ドラマって、結構カットの繋がりというか適当なときもあるんですよ。雨が降り始めたシーンで、前のシーンは全然濡れてなかったのに、次のカットではずぶ濡れになってるみたいな。僕もドラマの撮影現場を見学させてもらったことがあるんですが、演出スタッフがカット前の状況を把握するのも結構難しくて、意外に演者自身が把握していないといけない部分も大きいんですね。
キム・サランさんは、シーンの繋ぎで、表情一つとっても違和感があるシーンがまったくなかったので、多分自分でしっかり把握して撮影にのぞんでるんだと思うんです。そういう細かなところまで行き届いて演技しているから、役への感情移入もしやすいですし、作品に引き込む力も強いのかなと思います。
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はしも:
弁護士役のチャン・ミンジュンを演じたユン・ヒョンミンさん。じつはこの方、元々韓国のプロ野球リーグで活躍していた元プロ野球選手だったんです。 で、今回のドラマでは勝率100%の敏腕弁護士として主演を演じて、もうずば抜けてハマり役で、もうどんだけ才能の塊なんですかっていう……尊いを通りこして、もはや男として嫉妬してます。
ドラマの中では基本的に冷徹で、笑わない役柄なんですが、物語が進むにつれてどんどん人間性とかが見えてきて、後半に笑みが溢れたときには、もう尊さしかなかったですね。このドラマを観ていて、「もしかして、復讐が成功したときにしか笑わないんじゃ……」と思っているくらいだったので。
やっぱり韓国ドラマって主役の人たちの演技がめちゃくちゃ大事で、それによって作品にどれだけ入り込めるかどうかが違うので、キム・サランさんとユン・ヒョンミンさんの演技力がこのドラマを下支えしていると思います。物語の中でのチャン・ミンジュン弁護士の変化と、それを表現するユン・ヒョンミンさんにも注目してみてください。
はしも:
以前、この企画でお話した「韓国ドラマは6話から観てもいい!」という上級テクを応用すると、この作品は一話が30分なので12話前後から観てもらってもいいと思います。それに、毎話冒頭の3〜5分は、前話後半のあらすじが必ず入る構成で、しかも微妙に未公開のシーンを足していて、よりわかりやすくなっています。
なので、ぶっちゃけ前半だけ見ればOK。つまり、12話から観始めて、かつ毎話前半だけ見れば、だいぶ時短で作品を追い切れます。ただ、そうなってくると「何のために観てるのか」という哲学的な問いが発生してしまうので、あくまで時短をする必要がある人だけはそうやって観ていただいて、作品としては面白いので気になる方は1話から普通に観てください。
(取材・文/郡司しう)
NSC(吉本総合芸能学院)東京校16期卒業。2011年、俵山 峻と「スクールゾーン」を結成。独自の感性が光る唯一無二のコントで人気を博す。 また、幼少期より慣れ親しんだ韓国ドラマやK-POPの知識、特技である韓国語を生かした「韓国あるある」をSNSで発信し、大きな話題を呼んでいる。
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