——はしもさんは、韓国ドラマを「ベタの宝庫」とおっしゃっていました。
はしも:
そうですね。ベタは間違いないです。裏切らない。
——例えば、「幼少期の頃に縁がある」みたいな設定が多いじゃないですか。「またか」となることはないんですか?
はしも:
全然ならないです。むしろ、韓国ドラマはそれでいい!それこそがいい!っていう感じです。 それでお互いネックレスとか写真の半分を持っていたり、親同士が結婚してしまって兄妹になるなら、なおいいですね。
——もはや様式美ですね。韓国ドラマ初心者の方に向けて「こんな観方をしたら面白いよ!」というようなアドバイスはありますか?
はしも:
「韓国ドラマは、6話から観てもいいんだよ」というのは、結構 韓ドラ初心者の方には言っています。 韓国ドラマって1話から5話あたりまでは、物語の前提や背景を説明していくようなつくりの作品が多いと体感的に思っていて。 で、大体物語が展開し始めるのが6話くらいからなので、そこから観始めてもいいんじゃないかと。
——言われてみると確かに、後半から加速度的に面白くなる作品が多いような気がします。
はしも:
日本のドラマと比べると話数が多かったりするので、そこも韓ドラ初心者の方にはネックになりますよね。 それを「途中からでいい」と思えるとずいぶんハードルが下がると思います。もちろん、100%楽しむなら1話から最後まで走り抜くほうがおすすめですが、観終えてから答え合わせ的に1〜5話を観るというスタイルも全然いいと思います。「スターウォーズ」と同じ理論で。
——今回ご紹介いただく『カンテク~運命の愛~』は韓国ドラマの中でも時代劇というジャンルで、韓ドラ初心者にとっては“時代劇”というジャンルも、一つハードルが上がる気がします。
はしも:
そうですね。だから僕としては「家事しながら観るくらいでもいいんだよ」とお伝えしたいですね。 6話からで、しかも家事しながら。もう、ハードルは低く低く……。それぐらいの気持ちで観てたら、いつの間にか家事の手を止めて、19世紀朝鮮王朝の世界にどっぷりハマっている自分がいることに気づくんじゃないかと思います!
STORY:
19世紀、朝鮮王朝の王イ・ギョン(キム・ミンギュ)は親迎行列の途中で何者かに襲われ、最愛の王妃とともに銃で撃たれて命を落とす。 王と王妃が銃で殺されたという話を聞いた都城一の情報商であり巫女のカン・ウンボ(チン・セヨン)は、以前銃の売人の情報を売ったことを思い出す。 王の遺体から銃弾を探し出そうとするが、死んだはずの王が突然息を吹き返し、驚きのあまりその場を飛び出してしまう。 その後、幼い頃の記憶がないウンボは、実の父親の友人だという大司憲ペク・チャヨン(オム・ヒョソプ)に連れられ、大罪人として囚われる父カン・イス(イ・ギヨン)の姿を目にしてすべての記憶を思い出すのだった。一方、生き返ったものの王妃を失った悲しみに暮れていた王はある日の晩、夢の中で王妃とそっくりな女性と出会い…。
©2019-20 TV Chosun
はしも:
この作品が好きなのは、なんといっても「本物の純愛ストーリー」が楽しめる作品だからですね。。ジャンルとしては時代劇なので、入口でつまずいてしまう人も多いかもしれませんが、それよりも一途に一人の女性を思い続ける王様の純愛に、胸がときめくんですよ。少女漫画的な要素も感じられて、時代劇の中ではすごく観やすいタイプのドラマだと思います。
この作品は、朝鮮王朝時代の王様が王妃を選ぶ儀式「カンテク(揀択)」が主題で、たくさんの女性が王様に選ばれようとしてカンテクに参加するんですが、 最終審査で選ばれないと一生結婚できないというルールがあるんです。現代で考えるととんでもない話のようですが、だからこそライバル関係に拍車がかかって、 女性同士の泥沼バトルが宮廷内で繰り広げられていきます。でもそんな中で王様は、「絶対、自分が本当に好きな人としか結婚しない!」と一人、ひたすらまっすぐに、自分に正直に生き続ける。その姿がめちゃくちゃ尊いです。
一般的に時代劇って、ハードルが高く感じられがちですが、じつは韓国ドラマは時代劇のほうが沼だと思っています。 「昔は、こんな儀式が実際にあったのか」と思うと想像も膨らみますし、昔の文化や風習、衣装なども新鮮です。 現代では体験できない世界だからこそ、逆にリアリティを帯びてくるように感じます。あります。ぜひ時代劇の沼に足を踏み入れてみてください。 6話からでいいので。
©2019-20 TV Chosun
はしも:
韓国ドラマの魅力の一つに、僕は「足かせ」があると思っています。 「遠回り」と言い換えてもいいかもしれません。両想いだし、お互い気持ちを伝えればすぐに結ばれる。 視聴者も結末はなんとなく想像できますよね。だけど、運命の歯車が微妙にズレていって、結ばれるはずの二人の距離感が全然近づいていかないという焦らし。
右に行けば解決するのに左に行ってみたり、絶対行っちゃいけない方に行ってみたり、言ってはいけないことを口にしてしまったり。 だから見えてるゴールになかなか辿り着けないんですが、その遠回りが韓国ドラマの良さでもあり、魅力でもある。その中でもとくに「遠回りの物語」を存分に楽しめる作品になっているのが、『カンテク~運命の愛~』だと思います。
©2019-20 TV Chosun
はしも:
いいドラマにはいい登場人物が欠かせないですが、『カンテク~運命の愛~』もまた、愛すべき登場人物が多い作品だと思います。 まずは、キム•ミンギュが演じる王イ•ギョン。昔好きだった人を一途に思い続けるまっすぐな性格の王様ですが、 ちょっとおバカだったり抜けているところがあって、それがキャラクターの愛らしさにも繋がっています。 キム•ミンギュの甘いマスクが生きる役どころだと思います。
次にヒロインのカン•ウンボとその双子の姉を一人二役で演じるチン•セヨン。 彼女は時代劇クイーンとも呼ばれていて、伝統衣装と髪型がよく似合う俳優です。 『カンテク~運命の愛~』でも、性格が対照的な双子を演じ分けていて、プロの演技のすごさに圧倒されましたね。
あとは政治的な人間関係や女性同士のバトルが渦巻くなか、そのシリアスさをやわらげてくれるコミカルな脇役たち。 19世紀朝鮮王朝の話、というと重たい感じがしますが、途中途中でドラマをポップな雰囲気にしてくれる貴重な存在です。
©2019-20 TV Chosun
はしも:
これはもう、『カンテク~運命の愛~』を語る上では絶対に外せない要素です。 例えば『梨泰院クラス』のパク•ソンジュなんかは「キスがやさしい」と言われたりするんですが、この作品のキム•ミンギュは対照的で、 ガーンという“ぶつかり稽古的な”キスなんです。 擬音でいうと「ブチュ」に近い。最初観たときは「インパクトのあるキスをする人だな」くらいに思っていたんですが、考えているうちに思ったよりあのキスに心をもっていかれている自分がいました。今やもう『カンテク~運命の愛~』の一番の見どころだとすら思っています。
キム•ミンギュが演じる王イ•ギョンのまっすぐで一途な心が、キスの仕方にも現れてしまう。 キスシーンが拝めるのは物語の後半ですが、そのシーンを楽しみにしながら、ストーリーを観進めていただきたいですね。 来るとわかっていても、ラピュタの「バルス」にも似た「来たー!」という感じが味わってもらえると思います。
©2019-20 TV Chosun
はしも:
『カンテク~運命の愛~』の主題ともなったカンテクの儀式ですが、じつは2012年の『太陽を抱く月』という時代劇作品の中でも、 カンテクが重要なシーンになっています。僕は『カンテク~運命の愛~』のほうがよりストレートな純愛な感じがして好きでしたが、 共通点をもった二つの作品を見比べて観ても面白いと思います。
(取材・文/郡司しう)
NSC(吉本総合芸能学院)東京校16期卒業。2011年、俵山 峻と「スクールゾーン」を結成。独自の感性が光る唯一無二のコントで人気を博す。 また、幼少期より慣れ親しんだ韓国ドラマやK-POPの知識、特技である韓国語を生かした「韓国あるある」をSNSで発信し、大きな話題を呼んでいる。
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