三屋清左衛門役
北大路欣也インタビュー

藤沢周平の傑作長篇小説を原作とした、人気オリジナル時代劇シリーズ最新作「三屋清左衛門残日録 あの日の声」が日本映画+時代劇 4Kでテレビ初放送される。6作目となる本作では、己の矜持をかけ正義を貫こうとする男に訪れる悲劇と、葛藤を抱えながらも事件解決に奔走する清左衛門の姿が描かれる。主人公の三屋清左衛門を演じた俳優・北大路欣也さんに本作の魅力や、時代劇作品に対する思いを語ってもらった。

――6作目となり、また新たな事件に向き合われるわけですが、三屋清左衛門という人物に対する思いを教えてください。

毎回テーマは変わるので、とても新鮮な思いでやらせていただいています。そして、この主人公、清左衛門の人間性は非常に“大人”で、なかなかお目にかかれないぐらいの人物像だと思うし、これは原作の藤沢先生の魂だと思う。そういうエネルギーが僕を支えてくれていると思うんです。だから、この衣装を着て鏡の前で、「清左衛門にこれからなるんだなあ」と思ったときに、ある意味で“自分を超えてくれる”“そういう世界に入っていける”という喜びや、やりがいがあるし、気持ちいいですよね。こういう人物になれたらいいなあというのが主人公に対する思いです。

――今回の脚本を読まれて、北大路さんはどう思われましたか。

なんだか、現在とオーバーラップするような感覚を覚えました。今の日本だけじゃなくて、世界中のあらゆる情勢には、こう、“揺らぐ人間の心”があるじゃないですか。そういうことを今回の脚本には感じました。
だから珍しく怒りも感じました。逆にいえば、「まだ我々はここまでなのか…」というような思いもあった。でもその中でやっぱり一番大切なのは“出会い”であり、“お互いを支え合う思い”。そこが最終的には、どの作品にも出てくる大きなテーマだと思うんです。
今回も振幅はあったけれど、最後はちゃんと落ち着いたところにたどり着けたかなという感じです。それは僕だけじゃなくて、みなさん、登場する人物をそれぞれのポジションを持ってやっていらっしゃるわけだけれど、何か全員がそれを感じたんじゃないかなって思いましたね。

――時代劇だけれども、そのテーマ的には現代が投影されているということでしょうか?

“今を生きている”っていうのと、“生かされている”っていうのもあります。だから、その辺のバリエーションといいますか、人それぞれの思いっていうのは必ずしも一致しないと思うので、その中であがきながら先頭を切っていかなきゃいけない。その先頭を切れる主人公の持ち味っていうのは本当に憧れますよね。

――清左衛門は地位や肩書きのない人物ですが、そういう人物だからこそ表現できる世界や物語というのはどういったところにあるのでしょうか?

清左衛門は先代の殿の御側付というか、現在でいえば秘書官みたいな感じの方で、決して自分が前面に出る立場ではなく一歩引いて、殿を支えて、それからあらゆる計画を立てる。殿にその行動をしていただいて、それがいい方向に向かうようにということをいつも考えている。だから、自分自身のことをどうしようかと考えて生きてきた人ではなく、やっと今のように残日録を綴るようになって、自分のことを考えられるようになった。与えられた務めに対して、その人のできる精一杯のことをやりきったっていうのかな。そういうことはすごいことだと思うんです。だから、やっぱり清左衛門には憧れますね。

―お馴染みのキャストの方々に加えて、今作あらたに加わった内田(朝陽)さん、駿河(太郎)さんなど新しいキャストとの共演についてはいかがでしょう。

何度もご一緒した方々もいらっしゃるし、初めての方もいらっしゃる。
僕は役のイメージでまず対面するんです。そして演技をしていくにつれて、「この人はこういう人生を生きているんだなあ」とか、「こういう感覚を持っているんだな」ということをお互いに感じ取れる。
だから最初は会話もないんだけれど、日が経つごとにいろんな会話ができるようになる。
それはもちろんプライベートの話でもあるし、役を通してでもあるんだけれど、やっぱりその役の持っている魅力を十分に感じ取って、現場でお互いにぶつかるっていう新鮮な喜びがありますね。僕が体験していないことを経験談として聞けるわけですよ。「へえ~」と思うこともありますし、やっぱりそういう出会いっていうのはすごく幸せなことだなと思いますね。
昔のことを言うと笑われるけれど、僕はこの東映京都の撮影所で13歳からやっているわけですから、もういろいろな方との出会いや別れがありました。その中でまだ新しい出会いがあるっていうのはありがたいですよ。

――6作目ということで、「三屋清左衛門残日録」シリーズは北大路さんの長いキャリアの中で、どういう作品なのかというのを教えていただけますでしょうか?

若い頃から現代劇や時代劇も含めて、本当にいろいろな役をやらせていただいたけれど、清左衛門は若くては絶対にできない役です。ですから、僕はある程度経験を積んで、70歳ももう後半になったこの時期に出会えたのがものすごくラッキーだったと思います。だから、ある意味ですごく自然体で入れたというか、受け入れることができた。
実際はもっと前にこのお話をいただいたのですが、その時は、全く自信がなくて、「いや、とんでもない」と「僕の今の経験ではこんな役をまだやりきれないからもうちょっと待って」と話して、それから10年後ですからね、実際に第1作ができたのは。その間プロデューサーも待ってくれていて、チャンスを与えてもらったというのは、それはものすごい出会いですよね。滅多にそういう出会いはないですから。だから、そういう意味で本当にありがたいといいますか…。自分自身の人生と、清左衛門の人生とを並べるっていうわけにはいきませんけれど、僕には僕なりの“残日録”があるよっていう思いがあります。
僕は、“理想の老後”を清左衛門を通して表現できているのが幸せですね。清左衛門を取り囲むそれぞれの人物の愛情が、彼に結集しているような気がするんです。だから、本当に理想的な老後なんです。清左衛門は奥様を先に亡くしているので、その寂しさはあるんだろうけれど、息子の嫁がフォローしてくれて、なんと恵まれた老後を送っているんだろうと思います。

――現在、時代劇の新作を見られる機会は非常に貴重になっています。
そういう意味も込めまして、時代劇への思いをお聞かせいただけないでしょうか?

僕はこの「三屋清左衛門残日録」は現代劇だと思っているんです。彼の想念なんて現代の人は持っているかなと思って。こんな想念の人がいたらいい会社ができるだろうし、いい街ができるだろうし、いい村ができるだろうし、と思うぐらい。
こういう格好をしているから昔というイメージが出ちゃうんだけれど、僕には時代劇と現代劇の境がない。時々、現代劇をやってるときに「これは時代劇だな」なんて思ってやっているときもあります。
そのテーマや役柄にもよるけれど、僕にはもう現代劇も時代劇も一つの輪になっているんです。だから現代劇をやっているときに、「今度、時代劇でこういうこともできるな」なんて思いながらやっていることもあるし、時代劇をやっていて、「現代劇でもこういうふうにしてもいいなあ」と思うこともある。だから、時代劇も現代劇も両方やらせていただけているというのは、ものすごくありがたいことだと思っています。


――時代劇というジャンルを守っていくためにはどうすれば良いと思われますか?

僕は若手俳優さんや中堅俳優さんとよく仕事をするんだけれど、時代劇をちゃんと愛してくれて、ちゃんと継承してくれている。これは、いいなあと思いますね。時代劇だからこそ伝えられる“波動”ってあると思うんです。それを守ってくれている後輩がいるのは嬉しいですよね。だから若い方が時代劇をやられるときは「うまくいってほしいな」と本当に思うし、そういう方からもし「ゲストで来てください」と言われたら飛んで行きますよ(笑)。
僕は、先輩に憧れて、「こういうふうにやれよ」って言われて、追いつこう追いつこうと思いながらいろんなことをやってきたので、それがもし後輩の方々に伝わっていけばうれしいです。

番組概要

番組名
三屋清左衛門残日録 
あの日の声
(みつやせいざえもんざんじつろく あのひのこえ)
放送日時
2022年9月19日(月・祝)
19時~ TV初放送
【再放送】9月25日(日)15時~/10月10日(月)14時~
詳しい放送情報はこちら
放送
チャンネル
日本映画+時代劇 4K (436ch) J:COMプレミアチャンネル (299ch)
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