2026年2月2日(火)更新
三浦佳生がミラノで描く「自画像」
「過去の自信にとらわれ過ぎない」
三浦佳生(オリエンタルバイオ/明治大学)選手が、1月21日から25日にかけて北京国家体育館で行なわれた四大陸選手権で3年ぶり2度目となる金メダルを獲得しました。三浦選手は、既に今月7日(日本時間)に開幕するミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪の代表メンバー入りを果たしています。
ミス挽回の工夫
1月24日のショートプログラム(SP)。曲は「Conquest of Spaces」でした。全身黒の衣装に身を包んだ三浦選手は、開始早々、持ち前のパワーとスピードを全開にしました。
冒頭の4回転サルコー+3回転トーループを決めると、さらにスピードに乗り、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)、4回転トーループも成功させました。
後半、チェンジフットコンビネーションスピン、ステップシークエンス、チェンジフットシットスピンはレベル3と課題を残したものの、シーズンベストとなるSP98.59点を叩き出し、首位発進しました。
翌日のフリースケーティング(FS)。曲は昨シーズン(2024-2025年シーズン)から継続して使用している「シェルブールの雨傘」です。
出だしはよくありませんでした。冒頭の4回転ループでは片手を、コンビネーションを予定していた2つ目のジャンプは両手をつき単独になりました。それでも何とか転倒を免れることで、減点を最小限にとどめました。
ミスを挽回するため、単独ジャンプを4回転+3回転のコンビネーションジャンプに切り換えるなど成長の跡も見てとれました。
フリーは175.14点で4位。しかし、SPの高得点がものを言い計273.73点で逃げ切りました。
「自分の演技を振り返って、改めて“フィギュアスケートをやっていないな”という感覚があった。ガツガツ滑ってジャンプを跳んで盛り上がって……。スケートで魅せるのではなく、自分のパワーだけで魅せにいっている感じでした」
メンタルコーチとの出会い
三浦選手がそう語ったのは、一昨年のことです。「フィギュアスケートをやっていない」という内省的な言葉に、複雑な心境を垣間見ることができました。
昨シーズン(2024-2025年シーズン)、三浦選手は精彩を欠きました。四大陸選手権は6位、グランプリ(GP)シリーズのアメリカ大会こそ3位で表彰台に上がったものの、NHK杯では6位に終わりGPファイナル進出を逃しました。全日本選手権では8位。演技中にミスが重なると集中力が途切れる様子も散見されました。
そんな三浦選手にメンタルコーチがついたのは、GPシリーズ・フランス大会直後の2025年10月です。コーチの名は辻秀一さん。著名なスポーツドクターで『メンタル・トレーニングの第一人者が明かす一生ブレない自分のつくり方』などの著作もあります。
辻さんの指導を受けるようになってから、三浦選手は周りのことを、あまり気にしなくなりました。以前は他のスケーターの演技やスコアを確認してからリンクに上がっていましたが、それをやめたのです。
「周りの選手が何点、点数を出そうがどんな演技をしようが、自分のやることは変わらない。自分がベストを尽くすためには、この方法がベストなのかなと思いました」
そして、続けました。
「先生にこう言われました。“自信というのは未来につなげにくい。自信とは過去の積み重ねであり過去形のものだから、簡単に自分を裏切るよ。一方、信じて行動する、ということは現在進行形でできること。だから、信じることは未来につなげやすいんだ”。また“過去の自信にとらわれ過ぎず、自分を信じてあとに控える演技に集中することだけを考えなさい”とも言われました」
三浦佳生のフィギュアスケートとは何か。葛藤の末に導き出した自画像とでも言うべき滑りを、ミラノのリンクで表現してもらいたいものです。

二宮清純





