2024年3月25日(月)更新

大谷翔平、開幕戦で超全力疾走
“永遠の野球少年”のワクワク感

 韓国のソウル・高尺(コチョク)スカイドームで行われたサンディエゴ・パドレス対ロサンゼルス・ドジャースのMLB開幕戦。注目のドジャース大谷翔平選手は「2番・DH」で出場し、5打数2安打1打点1盗塁の活躍で、チームの5対2の勝利に貢献しました。

ドジャース(大谷翔平・山本由伸所属)の放送予定はこちら

3つのゴロアウト

 大谷選手のドジャース初安打は0対0の3回表2死後の第2打席で生まれました。北海道日本ハム入団時に「11」を受け継いだ“尊敬する先輩”ダルビッシュ有投手の外角高めのツーシームを、ライト前に弾き返しました。直後に二盗に成功し、わずか2球で二塁打にしてしまいました。

 2本目のヒットは8回表4対2と逆転に成功し、なおも1死一、二塁の場面。エイドリアン・モレホン投手の変化球を詰まりながらもレフト前に落とし、二塁からランナーを迎え入れました。

 しかし、この2本のヒット以上に私が注目したのが、3つのゴロアウトです。

 まずは1回表、ダルビッシュ投手の4球目の外角ツーシームをとらえた打球はショート・キム・ハソンの前へ。普通の打者なら6-4-3の併殺という場面ですが、ファーストにボールが転送されるよりも早く、大谷選手が一塁ベースを駆け抜けていました。

 2つ目のゴロアウトはドジャース1対2の5回表。先頭打者のムーキー・ベッツ選手がセンター前にヒットで出塁し、大谷選手は、この日、3回目の打席に入ります。パドレスのピッチャーは2番手の左腕トム・コスグローブ投手。快音を発した打球は通常より右寄りに守っていたサード、タイラー・ウェード選手の好守に阻まれ、一塁ランナーのベッツ選手が二封されました。この時も大谷選手は全力疾走で一塁ベースを駆け抜けました。

 そして3つ目のゴロアウトは7回表の場面です。スコアは1対2のまま。マウンドには5番手の左腕ワンディ・ペラルタ投手。

 低めの変化球を引っかけた打球は一塁線へ。マウンドを駆け下りたペラルタ投手が素早くボテボテのゴロを処理し、一塁へ送球。大谷選手は長いストライドをフル回転して全力疾走。間一髪でアウトになりましたが、ペラルタ投手は一塁までの到達の速さにびっくりしたに違いありません。

原点は高校球児

 メジャーリーグの“相場観”として、ホームラン争いするようなパワーヒッターは、あまり全力疾走しないものです。全力疾走しない、と言って悪ければ、全力疾走しても大して速くはありません。

 しかし、大谷選手はどんな打球でも全力疾走するのです。ロサンゼルス・エンゼルス時代からそうでしたが、ドジャースに移籍して、よりその意識が強くなっているのでないでしょうか。

 その背景にあるのが、自らに与えられた「2番・DH」というポジションです。メジャーリーグにおける“2番最強論”は今に始まったことではありません。パドレスの2番は21年に42本塁打でナ・リーグのホームラン王に輝いたフェルナンド・タティス・ジュニア選手です。

 守備位置につかない大谷選手は、バットのみならず足でもチームに貢献したい、という気持ちが人一倍強いようです。キャンプから、積極的に走塁練習に取り組み、エキシビションゲームではヘッドスライディングで帰塁するほどの気合いの入れようでした。

 折しも、今、日本では春の甲子園が開催されています。高校生ですから技術そのものはまだまだ未熟ですが、一塁への全力疾走には心が洗われます。

 大谷選手はメジャーリーグの頂点に立つ立場になっても、高校球児、いや野球少年当時の思いそのままにプレーしているような気がしてなりません。大谷選手のプレーが、なぜ私たちをワクワクさせるのか。それは彼が“永遠の野球少年”だからでしょう。

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二宮清純

二宮清純 スポーツジャーナリスト

1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。

メジャーリーグもプロ野球も。

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