2025年9月24日(水)更新
ロサンゼルス・ドジャース1年目の昨シーズン、MLB史上初の「50-50」(54本塁打、59盗塁)を達成した大谷翔平投手が、今年も「50-50」をやってのけました。しかし、今シーズンのそれは「50本塁打、50奪三振」。もちろん、こちらもMLB史上初です。
ドジャース(大谷翔平・山本由伸・佐々木朗希所属)の放送予定はこちら
9月16日(日本時間17日)、ドジャースタジアムでのフィデルフィア・フィリーズ戦。「1番DH兼投手」で出場した大谷投手は、1回、53本塁打でナ・リーグのホームラン王争いのトップに立つカイル・シュワバー選手からスライダーで見逃し三振を奪いました。これが今シーズン50個目でした。
この日、大谷投手は5回を投げ、許したランナーは1回、プライス・ハーパー選手に与えた四球のひとつだけ。ヒットは1本も打たれませんでした。
記念すべき50個目の三振を奪ったシュワバー選手との1回の対戦では、初球に101.7マイル(約163.7キロ)のストレートを投げ込みました。このボールを含め、この日は“100マイル超え”が7球もありました。
5回を投げ終えた時点で、スコアはドジャースの4対0。球数は、まだ68球。この日の調子からして、投げようと思えばまだ投げられたはずですが、そこはベンチの判断です。シーズンの佳境で、もしものことがあったら元も子もありません。
結局、降板後の6回にリリーフ陣が捕まり、一挙6点を奪われ6対9で逆転負け。チームは投手リレーに課題を残しました。
4対6と2点を追う8回裏、大谷投手ならぬ大谷選手はこの日、4回目の打席に立ちました。1-0のカウントから投じられたデービッド・ロバートソン投手の内角に食い込むカットボールを振り抜くと、高い弧を描いてライトスタンドのポール寄りに飛び込みました。先行するシュワバー選手に3本差とする今季50号でした。
二刀流といえば家元のベーブ・ルースさんについて触れないわけにはいけません。ボストン・レッドソックス時代の1915年に18勝(8敗)、16年に23勝(12敗)、17年に24勝(13敗)を記録しているルースさんですが、この頃はピッチャーが本業で、バッターとして目立った活躍はまだ見せていません。
レッドソックスでのラストイヤーとなる19年に29本塁打、114打点でホームランと打点の2冠王に輝いているものの、ルースさんがバッターとして本領を発揮し始めるのはニューヨーク・ヤンキースに移籍した20年以降です。通算714本塁打のうち9割以上の659本塁打をヤンキースでマークしています。
そのルーツさんは、50本塁打以上を4回(20年=54本、21年=59本、27年=60本、28年=54本)記録しています。その4シーズンで、最も盗塁数が多かったのは21年の17個です。すなわち「59-17」。ホームランと盗塁の「50-50」には届かなかったものの、それでも通算123盗塁を記録しているのですから、走ることに消極的ではなかったようです。
ではホームランと三振の「50-50」についてはどうでしょう。ヤンキースに移籍後、ルースさんは、ほとんどマウンドに立っていません。登板したのはわずか5試合(20年=1試合、21年=2試合、30年=1試合、33年=1試合)。その5試合とも勝ち投手になっているのですから、やはり強運の持ち主だったのでしょう。
50本塁打以上を記録したシーズンの最多奪三振は21年の2個。すなわち「59-2」。ちなみに23勝をあげた16年には、自己最多の170奪三振を記録しています。
投げるたびに、打つたびに、そして走るたびにMLBの記録を塗り替える大谷選手。今シーズンのショータイムも、いよいよクライマックスへと向かいます。
二宮清純
1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。