オーディションでの突然の追加台本に頭がフル回転|
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』スレッタ・マーキュリー

――2022年に放送された『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(以下、『水星の魔女』)では、主人公のスレッタ・マーキュリー役を務められました。ガンダムという歴史あるシリーズ、しかもテレビシリーズでは初の女性主人公とあって、プレッシャーも大きかったのではないでしょうか?

© 創通・サンライズ・MBS
市ノ瀬:最初の頃は、やっぱりものすごくプレッシャーを感じていました。
マネージャーさんから「決まったよ!」という連絡をもらったときは、夢のような嬉しさを感じる反面、ものすごい緊張感も同時にありました(笑)。
――なかなか、ほかのアニメでは味わえない緊張感ですよね(笑)。
市ノ瀬:あまりの大役なので不安も大きかったのですが、ただ、「そんな気持ちじゃ、多分演じ切ることはできないだろうな」と思ってもいたので、「精一杯、スレッタちゃんを演じることを楽しもう」という方向に必死に自分の気持ちを切り替えたら、だいぶ気持ちが楽になり、楽しくアフレコにも臨めました。
――過去のガンダムシリーズも見返したりしたんですか?
市ノ瀬:「ガンダム」と名のつく作品に出る以上、もっと詳しくならなきゃいけないと思っていたので、『機動戦士ガンダム』を見返したりもしました。
――シリーズの1作目を見返したんですね……!
市ノ瀬:はい。私、アムロがホワイトベースから逃げ出して、砂漠の酒場でランバ・ラルさんに会うシーンが好きなんですよね。
アムロがホワイトベースのクルーだとなんとなく気付いているけど、あえてそこでは返すという、その行動にはいろいろ考えちゃいましたね。

――かなり渋めのシーンがお好きなんですね(笑)。話が少し戻ってしまうんですが、オーディションのときの裏話などはありますか?
市ノ瀬:そうですね……
オーディション用の資料は事前に渡されていたものがあるんですが、現場に入ると、そこに追加資料があったんです。
――えっ、それはオーディションで読む台本として、ですか?
市ノ瀬:そう、しかも3ページくらいあるやつ。かなり準備してきたつもりだったけど、それを渡された瞬間に、「うわっ、どうしよう!」ってすごく焦りましたね。
オーディションが始まるまで10分ほど時間があったので、台本を読んで自分の中でシーンを固めて……と、もう頭フル回転でした(笑)。
――それは大変でしたね……!実際、スレッタを演じるときにはどんなことを意識されていたんでしょうか?

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市ノ瀬:オーディションの段階で「普段過ごしているときと、ガンダムに乗っているときは、ガラッと雰囲気を変えて大丈夫。ガンダムに乗っているときはかっこよく」とディレクションをいただきました。さらにエリクトは「ナチュラルで、幼く」と、それぞれディレクションをいただいていたので、それに応える形で、スレッタとエリクトは役作りをしていきました。
ただ私自身、現場に入ってからもスレッタやエリクトが先々、どんな状況になっていくのか、物語がどう展開しているのかを知っていたわけではないので、その都度、渡される台本を見ながら模索していきました。

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――そうだったんですか……!?
市ノ瀬:でも、そこには小林監督のご意向がちゃんとあって、「先のことをすべて知ってしまうと、それを予測したお芝居になってしまうから」ということで、あえて先々の展開は、キャスト陣には秘密にしていたそうです。
だから、私としてはとても純粋に先入観なく、辺境の水星から出てきたスレッタ・マーキュリーという少女を演じさせていただいたな、という気がしています。