一度は就職するも、覚悟を決めて声優の道へ
――高校2年生のときに「声優になりたい!」と思った。あれ? でも、その後は大学へ進学することになるんですよね?
小林:僕自身は行く気満々で専門学校の資料も集めて、親を説得するための準備もたくさんしていたのですが父親にまったく話を聞いてもらえず……当時は、いまほど声優がメジャーな職業でもなかったですし、親からすれば心配したがゆえのことだったんだと思います。
「とりあえず大学には行きなさい」ということで、僕もそれで家を飛び出すほどの度胸もなく……大学に通いながら専門学校に通うことも考えたりはしたのですが、いろいろな理由があってそれもできずじまい。で、あれよあれよという間に就活の波に飲まれて、「いまさら声優なんてめざしても遅いだろうなぁ」と諦めの気持ちから、就職して……という感じでした。
――そんな諦めの気持ちから一転、就職後に会社を辞めて、専門学校へと入学します。そのいきさつを詳しくお聞きできますか?
小林:職種として、日々同じことを繰り返す業務が多くて、そんな日常に物足りなさを感じていたのが一番の理由でした。
じゃあプライベートで「何かしよう」と思ったときに、アミューズメントメディア総合学院の日曜日だけのクラスに通うことにしたんです。もちろん声優の夢が頭の片隅にありましたが心の中ではもう年齢的に遅いと思っていて、どちらかというと「アニメ好きの友達をつくろう」くらいのノリで、趣味感覚で通い始めました。
――何がきっかけで、声優一本に絞ることになったんでしょうか。
小林:通っていたアミューズメントメディア総合学院の特徴で、日曜日の週一クラス(専科)というのは、半年に一度、クラス替えのオーディションをするんです。
そのオーディションで一番上のクラスに合格しないと、そもそも事務所の所属オーディションを受けることができず、専科の学生はそこを目指してレッスンをしてるんです。
それで、入学してから半年経って受けたオーディションで運良く一番上のクラスに受かったんです。聞いてみると、入学半年でそのクラスに受かるって結構珍しいらしくて。その時に、「あれもしかしたら、これいけるんじゃない?」っていう気持ちになり……。
――入学半年で一番上のクラスに入ったことで、自信が出てきた?
小林:それはあると思います。先生から褒めてもらう機会も多かったし、なによりクラスメイトから「裕介って主人公声だよね」とよく言われていたことも大きかったですね。自分で自分の声を聞いてもピンとは来ないけど、でも周りの人が言うんだったら、きっと自分には何かがあるはず。
一番上のクラスへの合格結果がきたその日は、すごく悩んだんですが、一日悩んで、「このまま仕事を続けるか夢を目指すか。それなら夢を目指したほうが面白いだろう」と考えて、仕事を辞めよう、という気持ちになりました。
ただ一つ懸念だったのが、親になんて言うか。
――確かに、一度反対されてますもんね。そこでご両親にはなんて?
小林:それが、その時は意外すぎるくらいあっさりとOKを出してくれて。
最初に「声優になりたい」って言ってから6〜7年、社会人も経験した上で、それでもまだやりたいというのならとりあえずやってみれば、となかば諦めた感じで言われて。
親の承諾が得られたことで、自分の中では完全に「声優になるんだ!」という心構えになりましたね。
『ダンまち』第5期の見どころ
――『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか(以下、ダンまち』の第5期も始まりました。アフレコ現場はどんな雰囲気でしたか?
小林:とくに今回はこれまで登場したキャラが勢揃いするようなシーズンだと感じました。久しぶりにお会いする方もたくさんいました。僕は1期の時にモブで参加していたので、時を経てレギュラーとして参加できて嬉しく思っています。
メインキャストの方々は、松岡くんや島﨑くんをはじめ同世代が多いこともあって、すごく現場が楽しいですね。みんなそれぞれキャリアを積んで、できることや演技の幅が変わっている中で、10年前からのキャラを演じる姿を見ていると、過去にタイムスリップしたような感覚になります。
――『ダンまち』では主人公・ベル役の松岡禎丞さんと、『Re:ゼロ』とは逆の立場での共演ですよね。
小林:そうですね。このシーズン、松岡くん演じるベルにとって精神的に辛いストーリーが続いたので演じる身にも負担がかかりそうだなと感じました。休憩に入ると自然と彼のところに話しかけに行っていたのですが、心のどこかで彼の大変さに共感してしまうものがあったのかもしれません。
――小林さんから見た、『ダンまち』第5期の注目ポイントを教えてください。
小林:とにかくバトルの見どころが満載です。僕が演じるヘグニも、普段は残念な面が目立ちますが戦闘となるとフレイヤ・ファミリアの主戦力の一人としてその力を存分に発揮しますのでご注目ください!
©大森藤ノ・SBクリエイティブ/ダンまち5製作委員会
取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃