声優・岡本信彦
ロングインタビュー #2
そのキャラクターのセリフ以外の部分を考えると立体感が
生まれる。
点と点を繋いでいくキャラの作り方
2024年3月1日更新
OKAMOTO
INTERVIEW
『僕のヒーローアカデミア』の爆豪勝己役をはじめ、『青の祓魔師』の奥村燐役、『とある』シリーズの一方通行(アクセラレータ)役、『葬送のフリーレン』のヒンメル役など、数々のヒットアニメで主要キャラを演じる声優・岡本信彦さん。ときに仲間思いの熱いキャラから、ときに狂気に満ちたクレイジーなキャラまでを演じ分けつつ、そのキャラクターの魅力を深く引き出し、圧倒的な存在感を放つキャラへと昇華させます。その幅広さと奥行きを感じる表現力は、一体どこから生まれるのか。このインタビューでは全3回にわたって、その人となりをひもときながら、声優・岡本信彦の素顔に迫ります。
思い描いていたイメージと
実際に声優になって感じた現実の違い
――実際に声優になってから、それまで思い描いていたイメージと現実の違いを感じたことはありますか?
岡本:驚いたことでいうと、現場でのレコーディングの流れですかね。それまでドラマの現場などで思い描いていたイメージだと、撮影前の読み合わせをする日があって、後日、本番撮影という流れ。ですが、声優は現場入りするとすぐにラストテストをして、そのまま本番に入ります。最初のレギュラーは10〜15時でのレコーディングだったんですが、その一連の流れを時間内でやりきってしまうのはびっくりしました。
最初の頃は「やり直しがきかない」「覚悟を決めて仕事に望まなきゃいけない」と感じながら、レコーディングにのぞんでいたと思います。
――確かに、現場入りしてすぐに本番となると、準備してのぞまないと大変なことになりそうですね。しかも新人の頃は、先輩方に囲まれてやるわけですから……。
岡本:そうですね。それこそ「できないやつだと思われたくない」という気持ちは強かったと思います。
――とはいえ、「憧れている先輩に会ってテンション上がっちゃう」とかはなかったんですか?
岡本:「あ、このキャラクター!あの声!」みたいなことは心の中ではたくさんありましたよ(笑)。ただ、ミーハーな感じにならないようには、意識していました。現場でそれを伝えたら失礼なんじゃないかと思って。
だから、少し仲良くなってから「じつは、あのキャラクターがすごく好きで」とお伝えすることのほうが多かったです。
――ほかに、声優になってみて初めてわかったことや感じたことはありますか?
岡本:この取材でもこんなに顔写真を撮影しておいてアレですけど、「こんなに写真撮るの?」と思った記憶があります(笑)。
声優って、“裏方の仕事”というイメージがあったし、顔を出さずにお芝居ができる職業だと思って声優になった部分もあったので。ですが、僕が声優をめざし始めた頃から結構顔出しする方が増えてきて、いざ自分が声優になったときにも意外に取材が多いのにはびっくりしました。
――岡本さん的には、それは良い方向の驚きでしたか?
岡本:いや、最初は嫌でしたね。「そのために声優になったわけじゃないんだけど!」とか当時は思っていました(笑)。その気持ちはじつは今も少し名残があって、僕、外見やファッションに無頓着なんですよ。おしゃれにまったく興味がなくて、洋服を買うときも、仕事と紐づけるようなことを自分に言い聞かせて、無理やり口実を作って買うようにしていました。
正直、取材やテレビ番組がなかったら、一生真っ黒の服を着ていたかも(笑)。
――え〜、それはめちゃくちゃ意外です。
岡本:元々の僕は、「おしゃれしなくても、別に死なないし」とか思っちゃうタイプなんですよね(笑)。でも、写真撮影にしても洋服にしても、今はだいぶ意識が追いついてきて、「取材を受けたり番組に出ることで、アニメを見てくれる方もいるんだ」と思うようになってからは、頑張れるようになりました。
もし、元々ビジュアルに自信があったら、おそらく声優ではなく、俳優という職業を選んでいたと思うんですよ。前回お話した「自分がどんな価値を出せるか」を考えたときに、自分のビジュアルが価値になると思えるほど、外見に自信があるタイプでは全然ないですね。