インタビュー

声優・白井悠介

声優・白井悠介
ロングインタビュー #1

あの時、僕は原点を見失っていた。
遠回りしながら、ようやくたどり着いた
「アニメ声優になりたい」という思い

2024年8月23日更新

YUUSUKE
SHIRAI
INTERVIEW

『美男高校地球防衛部LOVE!』鳴子硫黄や『佐々木と宮野』の佐々木先輩をはじめ、『東京ミュウミュウ にゅ~♡』赤坂圭一郎、『アイドリッシュセブン』二階堂大和、さらには『ヒプノシスマイク』ではシブヤ・ディビジョンのMCグループ「Fling Posse」の飴村乱数役としてラップも披露もするなど、持ち前のイケボを武器に、役に合わせて幅広い演技を見せる白井悠介さん。数々のヒット作に出演する人気声優ながら、そこに至るまでの道のりは、けっして平坦ではありませんでした。このインタビューでは全3回にわたってその道のりと転機をたどりつつ、出演作品に対する思いも交えながら声優・白井悠介の素顔に迫ります。

渋い声に憧れて声を録画していた

声優・白井悠介

――小さな頃はどんな性格のお子さんだったんですか?

白井:運動やスポーツが好きで、よく友達と外でサッカーや野球をしているような活発な子でしたね。結構ヤンチャでよく転ぶ、すり傷やアザも多くて親にはだいぶ心配をかけていたと思います。

地元は長野県で男三兄弟の次男。夏休みは海やキャンプ、冬はウインタースポーツにも連れて行ってもらい、アウトドアな過ごし方をしていました。

――習い事もされていたんですか?

白井:兄はピアノ教室に通ってたんですけど、僕は全然興味もなく……そのかわり、地域の少年野球チームに入って、中学2年生まで続けていました。

本当は、ずっとサッカーがやりたかったんですけどね(笑)。

――リヴァプールファンのイメージがあるのでてっきりサッカーをやっていたのかと思ってましたが、野球少年だったんですか?!

白井:「父が野球好き」というところから野球を始めてしまって、その期待を裏切るのが申し訳なくて、なかなか言い出せずにいたんですよね。一度だけ、小学校高学年のときにサッカークラブを体験しに行ったこともあるんですけど、途中からというのもあって、あんまりチームメイトとなじめなくて、結局始められず……。

でも、ずっとサッカーが好きで、観戦もゲームもサッカーばっかりでしたね。野球ゲームはほぼやったことない……(笑)

もちろん野球もやると楽しいから続けてたんですけど。

――かなりアクティブなスポーツ少年だったんですね。一方で、アニメやゲームも昔から好きだったんですか?

白井:もちろんです。友達と外で遊ぶのも好きだけど、家でじっくりアニメを見るのもゲームをするのも好きでした。

当時よく観てたのは『機動戦士Vガンダム』『新機動戦記ガンダムW』などガンダムシリーズ。王道なものでいえば『ドラゴンボール』とか。カードダスもめちゃくちゃ集めて、ファイルに入れてましたね。

――カードダス、懐かしい!スカウターとかありましたね…!

白井:ありましたよね。いまでも実家を探せばあるんじゃないかな(笑)

あと小学生の頃は『爆走兄弟 レッツ&ゴー!!』もめちゃくちゃ好きで、烈と豪に憧れてミニ四駆を外で走らせたりとか(笑)。

――それ僕もやったことある。外でミニ四駆を走らせると、タイヤのゴムが白くかすれちゃうんですよね(笑)

白井:そうそう(笑)。

よくよく考えてみると、その当時から「自分もアニメの世界に入りたい」みたいな感覚がきっとあったんじゃないかなと思います。

――結構、声優という職業を意識し始めたのも早かったんですか?

白井:声優を意識し始めたのは、たしか小学校高学年から中学生に差し掛かる頃ぐらいだったと思います。

最初は「あ、この声聞いたことある。あのキャラと一緒だ!」みたいなことを発見するのが楽しい、くらいなもので。それがだんだんと「あ、この声優さんの名前、あのキャラと一緒だな」というふうに繋がっていってどんどん興味が湧いてきました。当時は特徴的な声の声優さんが多くて、それも興味を持ったきっかけの一つだと思います。

中学〜高校ぐらいには、声優さんの声マネをして、ガチャガチャで手に入れたフィギュアを動かしながら声をあてて、それを録画してました。

――もうだいぶ声優という職業を意識してやってる感じですね。

白井:そうだと思います。なんとなく自分の中では「そっちの方向に行きたい」って気持ちがあった気がします。

――どんなキャラをイメージしながら声マネをしていたんですか?

白井:渋い男性声優さんの声に憧れてて、例えば『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に出てくるサウス・バニング大尉みたいな、いぶし銀キャラのモノマネはめちゃくちゃしてましたね。

全然そんな声じゃないのに!(笑)

でも意外と、マネで声を出していると低い音が出るようになったりするんですよ。多分、その頃にやってた声マネのおかげで、声域は広がったんじゃないかな。

専門学校のオーディションを見送り

声優・白井悠介

――高校卒業後は、本格的に声優を目指すために上京されます。

白井:じつは2歳上の兄も声優志望で、高校2年生のときに、まず兄が上京して専門学校に入ってるんですね。その影響はかなり大きかったと思います。「声優って目指してもいいんだ」みたいな。当時なんてインターネットもまだ情報が十分じゃないし、目指すにしても「どうやって目指せばいいんだろう」くらいの感じでしたから。

先に上京していた兄がいろいろ教えてくれて、声優の道に入ろうというときに兄にはすごく背中を押してもらった気がします。

考えてみたら子どもの頃から兄のマネばっかりしていたんですよね。それこそミニ四駆も、アニメも、ゲームも。兄は真面目でしっかり者な長男というタイプで、小さな頃から尊敬してました。

――それで上京して、専門学校に入られるんですよね?

白井:はい、最初に入学したのは東京アナウンス学院という専門学校で、2年間通いました。高校までと違って自分が好きなことを学べるし、友達は同じようにアニメが好きな人ばっかり。専門学校自体はめちゃくちゃ楽しかったですね。

それで2年間通った総仕上げとして、いろいろな事務所にみてもらえるオーディションがあるんですよ。基本的にはみんな、それを目標に2年間、授業を頑張るわけです。どこかの事務所の目に留まれば、声優としてのデビューに一歩近づくわけですから。ふつう、みんな受ける。

だけど僕、そのオーディションを受けなかったんです。

――えっ?!なぜですか?

白井:いや、今考えても意味がわからず……。

「2年間何をしに行ったんだよお前は!」と当時の自分に言いたい……。

一応、そのオーディションのために撮影する宣材写真の撮影料が高くて、当時はそのお金が払えなかったという理由はあるんですが、今思えばその時だけ親に土下座するとかやり方はいくらでもありますし、本当に意味わかんない。

なんでオーディション受けなかったの、俺。

声優・白井悠介

――当時の白井さんはどんなことを考えていたんでしょうね(笑)。

白井:うーん……ただ、当時授業を受ける中でナレーションが楽しくて「ナレーションがやりたいのかも」とは思っていたんですよ。

それで専門学校は卒業しちゃうんですけど、その後ナレーションが強い事務所の養成所に入ることにしたんです。

――じゃあ、意外にも声優業はナレーションからのスタートだったんですか?

いや、そこでも1年半通うんですが何か自分の思い描いていた理想と、現実の感じがあんまり合わなくて。

専門学校では同級生と楽しい感じでやってきたのに、養成所に入った途端、同期がみんなライバルみたいな感じでギスギスしてて……。自分の気持ちの切り替えがうまくいかなかったんだと思うんですけど、なんとなくついていけなくなってしまって。

2年目の夏休みに「あ……もう通えないな」と思ってしまい、そこを辞めることにしたんです。

――振り返ると、そのときはどんな気持ちだったんでしょうか?

白井:うーん……多分、純粋に「自分がその状況を楽しめていない」というのが大きかったんだとは思うんですよね。

それで養成所を辞めたあと、実家に帰ったときにちょうどドラマを観ていて、「ドラマの世界、楽しそう」と思えてきて目移りしてしまって。そこから俳優を目指すことにしたんです。迷いに迷ってる暗黒時代(笑)

――そんな時期もあったんですか……!

白井:俳優事務所のワークショップや体験レッスンを見つけて参加したり、一般公募のオーディションを受けたりはしていたんですけどあまり思うように行かず。

中途半端な気持ちで望んでいたのもあったと思うんですが、そんな時期が1年半くらい。

その間もアニメは好きでずっと観ていたんですけど、ある時ふと「俺、アニメに出たくてこの世界に入ったんじゃん。やっぱり声優になりたい!」という思いが、またふつふつと湧いてきて。

――この業界に飛び込んで、頑張っているうちに自分が何をしたいのか、わからなくなっちゃったんですね。

白井:本当にそうです。そこから自分としては初心に帰る、原点回帰のつもりで、改めて声優を目指し始めたんです。

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