仕事以外は、子供とリヴァプール
――休日は、どんな過ごし方をされているんですか?
白井:土日とか、子供が保育園お休みだと。とにかく家族でおでかけですね。連休なら旅行に行くし、うちの子は魚が大好きなので水族館にもよく行くし。夏ならグランピングとかプールとかね。
僕一人だとインドアでずっと家で寝ちゃうんですけど、家族だとアクティブに結構動き回ってます。それはやっぱり、自分も小さい時に親にキャンプやアウトドアにたくさん連れて行ってもらった経験が大きいのかもしれないですね。
――それと白井さんといえば“熱狂的なリヴァプールFCファン”と公言してますよね。結構、生活を占める「サッカー」の割合は大きいんですが?
白井:もちろん「サッカー」という大きなくくりも、好きは好きなんですけど、ぶっちゃけ日本の代表戦とかは全然観ないんですね。ワールドカップはリヴァプールの選手が出てる国を応援しちゃいます。あくまで好きなのはサッカーよりも、“リヴァプールFC”という感じです。
――そんなに好きなんですね!
白井:どのチームだって熱いファンはいると思いますが、そのなかでもとくにリヴァプールのサポーターって本当に熱狂的なんですよ。
なぜって、選手たちの気持ちが前面に出ているから。プレーの内容、試合中のジェスチャー、掛け声から選手たちの熱気が伝わってきて、ファンもその興奮に包まれるんですね。
――リヴァプールFCが好きになったきっかけは?
白井:もともとわりと好きなチームではあったんですが、がっつりファンになったのは、チャンピオンズリーグ2004-05シーズンの決勝、リヴァプールファンは「イスタンブールの奇跡」とも呼んでいるあの一戦を観て、ですね。
対戦相手はイタリアの名門クラブ、ACミラン。前半はACミランの圧倒的な攻撃で3点取られてしまっていた。圧倒的に不利な状況で迎えた後半、ジェラードのヘディングから1点を返すと、そこから一気にリヴァプールが勢いづいて、3点返して同点まで追いついた。その後、延長戦でも決着がつかずに、PKをリヴァプールが制して、逆転優勝。
その劇的な展開とすさまじいプレーを、当時一人暮らしだった部屋で、リアルタイムで観ていて、もうガシッと心を掴まれてしまいました。多分、観終わったのは朝7時ごろだったと思うんですが、一人で興奮して、叫んで、泣いて……。
――めちゃくちゃ熱いですね……!
白井:そうなんですよ。その試合もそうですけど、リヴァプールってそういう劇的で胸アツな展開が多くて、全然目が離せないんですよね。今は配信サービスも増えて、試合がどんどん観られる環境になってきたので、もう毎試合リアルタイムで観戦しています。
――そこまで…! あなたにとって、リヴァプールFCとは?
白井:生きがいそのものですね。
『アイドリッシュセブン』二階堂大和への思い
――ゲーム、ライブ、アニメと数々のメディアで大ヒットとなっている『アイドリッシュセブン』では、IDOLiSH7の二階堂大和役を演じられています。白井さんから見た、二階堂大和はどんな人物ですか?
白井:彼は、物語が進むにつれて頼れるリーダー的な存在になっていきますが、元々は「復讐のためにアイドルになった」と複雑な思いを抱えて芸能界に入っているんですよ。「飄々とした面倒くさがり屋のお兄さん」という人物像の奥には、実は強い思いがあって、メンバーに対する思いも熱い。
そういう彼だからこそ、物語の中で成長した部分ってすごく大きかったし、彼の成長がメンバー同士の絆、結束力に与えた部分というのもあると思います。
第3部で自分の過去を曝け出してふっきれてからは、飄々とした態度こそ変わりませんが、リーダーとしての責任感や自覚が彼の中でより大きくなっていくのが目に見えてわかって、グループやメンバーを成長させようと引っ張っていく姿がすごく魅力的だったと思います。
――どんな思いで、二階堂大和を演じていたのでしょうか?
白井:自分のことを「面倒くさがり屋」だと言うくせに、メンバーの変化にいち早く気づいて気遣ったり、メンバーのためなら泥をかぶることもいとわなかったり。最初の頃はグループの最年長リーダーとして“頼れるお兄さん感”を前面に出すように意識していたんですが、途中からは彼の心の中にある情熱を感じてもらえるよう心がけていました。
あとはストーリーが進む中で、彼に起こる変化は、やっぱりどうしても意識しますよね。
本来持っていた芸能界に対する嫌悪感に近い感情も、メンバーやほかのグループとの時間を重ねる中で変化していって、だんだんと大和自身の“アイドル”に対する目線が変わっていくんですよね。そしてグループのために自分の過去と向き合い、メンバーにも過去を打ち明ける。
そうした彼自身に起こる変化があって、単なる"頼もしいリーダー”を超えて「唯一無二のIDOLiSH7のリーダー」へとなっていく。マネージャーさんたちにもそんなふうに感じてもらえたら、僕自身が大和の変化をうまく演じられていたのかなって思います。
©BNOI/アイナナ製作委員会
――ライブでは、大勢の観客の前で歌唱やパフォーマンスをされています。その緊張感たるや、相当なものだと思いますが……
白井:それが、意外と僕ライブは緊張しないんですよ。もう観客が多すぎて、逆に人前に立っている感覚ではなくなってしまうんです。もっと人数が少なくて、目と目が合って表情までわかってしまう距離感だと緊張するのかもしれないんですが。
大和としてライブをするときは、僕自身もライブを楽しむというか、ステージに立つとわりと自然にスイッチが入るタイプなので、ふだんの声優・白井悠介だったら絶対にしないようなことでも、けっこうできてしまうタイプなんですよね。
――それは意識的に、っていう感じとは違うんですか?
白井:そう、やろうと思ってやる、って感じじゃないですね。それよりもステージに立っていると自然にそういうパフォーマンスが出てくる、というか。
ただ、唯一緊張するとしたらライブ中のMCかなぁ。歌唱やパフォーマンスよりも、挨拶や締めくくりの言葉、感想を求められたときは結構緊張します。
大和自身がリーダーという存在だから、やっぱりどこかで「リーダーらしい言葉で締めなきゃ!」とか考えちゃうんですよ。しかも、考えれば考えるほどMCのときの緊張が大きくなる。
そんな時に「リーダーとしての緊張感も大和自身がリーダーとして抱えてるものに近いのかな」と思うと、やってやろうという気持ちになる。本当、僕ら声優のほうがアイナナのメンバーから力をもらってパフォーマンスをしてるんだなと思います。
取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃