2024/7/20(土)放送
パラスポチアーズ!
〜パラアスリート全力応援〜
182cmの長身を活かした力強いスローイングを武器にメダルを狙う、ゴールボール男子日本代表の宮食行次(みやじきこうじ)選手と、パリパラリンピックで3つの種目に内定を決めたパラ水泳、田中映伍(えいご)選手を紹介。
少年時代から打ち込んできた野球経験を活かし、競技開始わずか1年で日本代表に選出。東京パラリンピックではチーム最多の13得点をあげ、日本を5位入賞に導く。ポイントゲッターの宮食選手が東京大会から更なる進化を遂げ手に入れた武器とは…。
テレビで見た自身と同じ両上肢欠損のパラスイマーに影響を受け水泳の世界へ。パラリンピックの舞台を夢見て週6日のトレーニングで肉体改造を行い、2023年に4つの種目で日本新記録をマークしたスーパールーキー!パリ大会では50mバタフライ、50m背泳ぎ、100m自由形に出場しメダルを狙う。
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応援団長の中山秀征がパラスポーツを体験しながら、ルールやテクニックなどを解説し、その魅力に迫るとともに、パラアスリートの熱い思いを聞く。
第16回は、ゴールボール男子の宮食行次選手と、パラ水泳男子の田中映伍選手に迫る
長身が生むパワーと野球で培った感覚でボールを投げ込む
ゴールボール男子日本代表は東京2020パラリンピックに開催国枠で初出場し、10チーム中5位と健闘。その後、着実に力をつけ、パリ2024パラリンピックの出場権を自力で勝ち取った。躍進の中核を担う選手の1人が、1995年生まれの宮食選手。182cmの長身を生かした力強いスローイングが武器だ。
宮食選手に、応援団長・中山秀征がインタビュー。事前情報をもとに「小学5年生の頃から視力が低下してきたんですか?」と尋ねると、宮食選手は生まれつき視野が狭くなる病気で、それが発覚したのが小学5年生のときだったと説明する。発覚しても小学時代から中学時代までは野球、高校時代はソフトボールをプレーしたが、病が進行し、競技を断念することに。その矢先にゴールボールに出会った。「野球を通してボールを投げる感覚を身に着けていたので、最初から人よりうまく投げることができた。周りが凄いと言ってくれたのでパラリンピックを目指してみようと思いました」という。
新たな投げ方を習得し、エースとして得点量産を誓う
競技開始から1年で日本代表に選出された宮食選手は、パラリンピック東京大会でチーム最多の13点をマーク。日本のエースの座をつかみ、パリ大会に向けて新たな投げ方も習得した。ボールが発する音を頼りに守備を行うゴールボールでは、斜めに走り、その逆方向にボールを投げるフェイントが使われる。足音に注意を引きつけ、得点チャンスを作り出すのだ。宮食選手は「以前は左に走って右に投げることしかできなかった。でも練習して右に走って左に投げることができるようになりました」という。野球でのポジションがキャッチャーだった宮食選手は、「ピッチャーをリードする上で、スライダーとシュート両方を投げることができたら全然違う。(打者を)迷わすことができれば、真っすぐ投げたときに差し込ますこともできる」と野球にたとえて“両投げ”のメリットを語る。宮食選手にとって、ボールを投げることも駆け引きも、野球で培ったノウハウが土台になっている。
宮食選手は「(パリ大会では)30点以上取れたらうれしいし、そうでないと金メダルは獲れない。日本代表が金メダルを獲るところを見届けていただけるよう頑張ります」と力強く語った。その言葉通り、日本代表はパリ大会の決勝で延長戦の末、勝利。宮食選手は30点には届かなったものの、チーム最多となる21点を挙げ、金メダル獲得に大きく貢献した。
同じ障がいを持つ選手に魅せられ本格的に競技の道へ
2004年生まれの田中選手は、肢体不自由で5番目に障がいが重いS5クラスの選手。自由形、背泳ぎ、バタフライなどさまざまな泳法で泳ぐ。生まれつき両上肢欠損という両腕がない障がいがあったが、幼い頃から水泳やサーフィンなど、複数のスポーツに取り組む活発な少年だった。水泳1本に絞るきっかけになったのは、「リオデジャネイロ2016パラリンピックで、(現在は引退した)中村智太郎選手の泳ぎを見たから」。中村選手は5大会連続でパラリンクックに出場し、メダルも獲得した両上肢欠損のパラスイマー。「自分と同じ障がいがあっても世界と対等に渡り合っているのを見て、かっこいい」と思い、自分もそうなりたいと中学から本格的にパラ水泳に取り組んだ。当初は思うような結果が出せなかったが、大学に入ってから練習量を増やし、ウエイトレーニングも始めて急成長。2023年に500m自由形など4種目で日本記録を更新し、2024年春季チャレンジレースでも結果を残して3種目でパリ大会代表の座をつかんだ。「初めてのパラリンピックなので、緊張はすると思いますけど、自由な泳ぎをしてベストを出せるように」と意気込んで臨んだパリ大会は、50m背泳ぎ6位、50mバタフライ5位、100m自由形8位と全種目で入賞。今後、さらなる躍進が期待できる選手だ。
文/佐藤新