特集アメリカ大統領選2016

選挙結果分析
米国民はなぜトランプを選んだのか

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2016年米大統領選挙で勝利集会を開いた
トランプ氏
(写真:ロイター/アフロ)

大統領選挙の結果は、事前の予想を覆し、トランプ候補の勝利となりました。トランプ氏は来年1月に第45代米国大統領に就任します。米国民はなぜトランプ氏を選択したのでしょうか。

エリート社会に対するアンチテーゼ

トランプ氏が勝利した理由を一言で説明すると、ワシントンを中心としたエリート社会に対するアンチテーゼということになるでしょう。トランプ氏は裕福な家庭に育ち、不動産事業で財を成した大富豪ではありますが、ニューヨークの下町育ちです。4度も会社が倒産するなど、波瀾万丈の人生を送ってきましたから、いわゆる典型的な知的エリートというわけではありません。

一方、クリントン候補はエール大学のロースクール(法科大学院)を卒業したエリート弁護士で、夫のビル・クリントン氏が大統領に就任するとファーストレディとして活躍。その後は、上院議員、国務長官とこれ以上ないほどの経歴を積んだ人物です。政策面では十分すぎるほどの能力があるといわれていますが、逆にこうしたワシントンでの華麗な経歴が逆効果となってしまいました。

格差が激しい米国

米国経済はリーマン・ショックという危機はあったものの、総じて好調であり、世界経済の牽引役となっています。しかし、欧州各国と比較すると米国は格差が激しく、経済成長の波に取り残されてしまった人たちの間には根強い不満が蓄積していました。既存のエリート層の多くは、順調な経済が続けば、やがて全員に恩恵が行き渡ると考えていましたが、これに対して強烈なノーを突きつけたのがトランプ氏でした。

トランプ氏は、不法移民が米国の労働者の職を奪っているとして激しく非難。TPP(環太平洋パートナーシップ)協定やNAFTA(北米自由貿易協定)についても国益にならないと否定的な見解を示しました。もっともトランプ氏が掲げる政策をよく見ると、大胆な減税など、従来と同じく富裕層にメリットをもたらすものも少なくありません。しかし、白人労働者層を念頭に置いた発言は非常に効果的で、ワシントンのエリートに対する挑戦者というイメージをうまく演出することに成功しました。

ワシントンに対するアンチテーゼは成功パターンのひとつ

確かにトランプ氏には差別発言などがありましたが、大統領選挙においてワシントンに対するアンチテーゼを打ち出すというのは、主要な成功パターンのひとつです。カーター大統領(第39代)やレーガン大統領(第40代)もワシントンに対する反発が当選の要因となっていますし、現職のオバマ大統領も同じストーリーで選挙戦を勝ち抜きました。その意味では、トランプ氏の反ワシントン戦術は極めて正統なやり方ともいえます。

(The Capital Tribune Japan)

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