
声優・本渡楓
ロングインタビュー #2
頭で考えたことを体に染み込ませて、
マイク前に立ったら心でお芝居をする
2025年3月7日更新
HONDO
INTERVIEW
幅広いキャラクターを的確に演じ分ける力と、繊細な感性で直向きにキャラクターに向き合う姿勢を武器に、『魔女の旅々』イレイナ役、『夜桜さんちの大作戦』夜桜六美役、『ゾンビランドサガ』源さくら役、『パリピ孔明』月見英子役など、数々の人気作品でヒロインを演じている声優・本渡楓さん。彼女のお芝居に対する姿勢を形づくったのは、駆け出しの頃に現場でかけられた「本渡はもっと、素直にお芝居をしたらいいのに」という、いまは亡き音響監督の言葉でした。それから今日に至るまでこの言葉の意味に向き合い続け、マイク前に立ってきた本渡さん。このインタビューでは全3回にわたり、彼女の出演作品やキャラクターに対する思いやこれまでの歩みをひもときながら、その声優としての信念に迫ります。
頭で考えたことを染み込ませて心で演じる

――役作りについてはどんなことを意識していますか?
本渡:長いこと自分では「感覚的なタイプ」だと思っていました。でも、どうやら論理的なタイプだということに、最近気づきまして。
というのも、コロナ禍前後くらいに感覚肌でお芝居をする声優さんとお話しをしているときに、自分の口から「距離感」とか「関係値」という言葉でお芝居のことを説明していたことがあって。それでふと、思った以上に「私、めっちゃ頭で考えてお芝居してるじゃん」って気づいたんです。
あと、前回のインタビューで『かみさまみならい ヒミツのここたま』の頃の親方さんのお話もしましたが、じつは別の現場でその親方さんのさらに大親方みたいな方に、かけてもらった言葉もあって。
――どんな言葉をもらったんでしょうか?
本渡:「怒る芝居をするとき、ただ怒りを爆発させるだけだと『怒ってます、私!』という説明になる。でも“怒る”って相手が大切で助けたいから怒ることもある。その“怒る”は思いやりじゃない?」と。
これは一例ですけど、要は、その人物は相手にどんな思いになってもらいたくてその言葉を喋るのか、行動するのか、を考えるということなんですよね。それまでのお芝居ではそこまでセリフを深くとらえて感情表現ができていなかったので、その着眼点を教わったのは、私にとってはすごく大きかったと思います。
――“怒る”という感情表現一つとっても、場面ごとに意図や奥底にある思いが変わる。深い言葉ですね…!
本渡:そうなんです。ただ、深く考えるっていうのはものすごく大事なんだけど、考えれば考えるほど自分のお芝居が固くなっていく気もしました。
理性ってすごく大事なものなんだけど、私の感覚だと理性がある状態で演技するとマイクと自分の間で、その“理性”がフィルターみたいに邪魔してしまう気がするんです。でもそのキャラクターからしたらその世界でその状況に立たされたから、しぜんと怒っているわけであって「よし、怒るぞ」と理性的に思ってセリフを喋っているわけではないですよね。
先ほどの「頭と心の違い」の話にも通じるんですけど、頭で深く考えることは大事である一方、心でお芝居することも大事。いまは「事前に頭で考えていたことを自分に染み込ませて、現場では心でお芝居する」ができたら、一番いいのかな、と思っています。

▲「マイクと自分との間に“理性フィルター”があるんです」と教えてくれた本渡さん
――染み込ませる、って素敵な表現ですね。
本渡:難しいんですけどね。台本を読み解いて自分なりの考えを突き詰めたうえで、最後はフィーリングで素直にお芝居をする。
頭も心もどちらも大事で、どちらか一方が欠けてもダメ。私自身、結構物事に白黒をつけるというか、ゼロヒャクで考えがちなタイプなので、親方さん、大親方のお二人からもらった言葉を、いま必死に自分のものにしようと思っているところです。
――ちなみに、ご自身としてはどんな役を演じているときが楽しいですか?
本渡:いっぱいいっぱいあるんですけど……なんだろうなぁ。「自分から物事に立ち向かう人」かな。受身ではなく、自分から攻めていくような。すごくざっくりですけど(笑)。
そういう人物は演じていて楽しいし、お芝居をしているだけでそのキャラクターから勇気がもらえる気がします。
――となると、やっぱり主人公やヒロインが多そうですね。
本渡:確かに、主人公やヒロインはそういう役割が多いかもしれませんね。
主人公やヒロインを演じるときは別の楽しさもあって、やっぱりそのキャラクターの周りで起きる出来事が多いんですよね。その色々な出来事に振り回されるのも楽しいし、いろいろなキャラクターと掛け合いができるのも楽しい。
いつも同じ視点から眺められるので、演じるキャラクターのいろいろな側面に触れられるという意味でも楽しさがあります。