ただ甘いだけじゃない青春の1ページを描く|
『ハニーレモンソーダ』石森羽花
――『ハニーレモンソーダ』では、主人公の石森羽花役を演じられています。初めて原作を読んだときには、どんな印象でしたか?
市ノ瀬:本当にタイトル通り、ただ甘いだけじゃなくて、酸っぱさもあれば炭酸のようなピリッとした刺激もある作品ですよね。高校時代の人間関係の中に詰まった、そのバランスが絶妙に描かれていると思います。

©村田真優/集英社・ハニーレモンソーダ製作委員会
特に物語の前半は、過去にいろいろなつらい経験をした羽花ちゃんが高校に入学して、一歩一歩自分の道を頑張って歩んでいく姿が描かれていて。その頑張りが、胸に刺さってくる。
それが背中を押してくれるような感覚もあって、「私も頑張ろう」っていう気持ちに自然となれるような気がします。
――この作品での役作りは、どんなことを意識されていましたか?
市ノ瀬:自分自身も大人になって上京してから人見知りになって、羽花ちゃんに近い心情を経験したので、お芝居としてはすっと入っていけるような感覚はありました。
ただ、羽花ちゃんって、普通のセリフ以外にも、モノローグとナレーションもたくさん喋るので、現場では「ナレーションは俯瞰でお芝居してください」というディレクションをいただいたんですが、感情の置き場が難しく、苦戦しました。
特に羽花ちゃんって少しずつ明るく積極的になってどんどんクラスになじんでいく、物語の中で成長するタイプの子なので、物語全体のバランスを見ながら「ここは気持ちが盛り上がっていくんだけど、盛り上がりすぎちゃいけない」みたいな場面もあったりして。

©村田真優/集英社・ハニーレモンソーダ製作委員会
――物語全体のバランスを見つつ、しかも人物、モノローグ、ナレーションを一つの収録で演じ分けなきゃいけない……。一回の収録でも頭がこんがらがってきそうですね……。
市ノ瀬:ナレーションだけ別で録る瞬間もあったりしたこともあるんですけど、基本的には一連の流れの中でなので、すごく難しかった記憶があります。
――ちなみにアフレコ現場での思い出などはありますか?
市ノ瀬:最初の頃こそメインの役だけでの収録ばかりだったんですが、最後のほうはクラスメイト全員で録る機会があって。そうなると「本当に高校のクラスじゃない!?」っていうくらい人数が多い現場になって(笑)。
収録の合間にみなさんとお話させていただいたりとかして。特に矢野さん(三浦界役)、土岐さん(高嶺友哉役)、八代さん(瀬戸悟役)の三人が中心になって「どんな学生時代を過ごしてた」とか、みなさんで盛り上がりました。

――楽しそうですね!(笑) ちなみに、市ノ瀬さんは北海道のご出身ですが、北海道ならではの「学生あるある」とかあったりしますか?
市ノ瀬:これは中学時代の話なんですけど、私が通っている学校って制服ではなく、基本的にジャージ登校だったんです。たまに座学の授業だけの日とか、式があるような特別な日は制服を着る感じで。
普通の制服通学なら「少し着崩したりする」みたいに、ちょっとおしゃれに制服を着ようとするんだと思うんですが、ふだん着ているのがジャージなので、その学校指定のジャージにおしゃれ性をみんな見出していて(笑)。
――おしゃれ性を見出す(笑)。
市ノ瀬:その中で、「切りジャー」と呼ばれる文化がうちの地元にはありました。
いわゆるやんちゃな感じの子たちがやることが多かったんですけど、ジャージをとにかくガビガビに切るんです。ほとんどハーフパンツくらいの丈まで(笑)。
――市ノ瀬さんもやっていたんですか?
市ノ瀬:いや、ジャージって切っちゃったらもう戻せないし、冬は寒いので私はやってなかったです(笑)。
あれは謎の文化でしたね。