声優・井上和彦
ロングインタビュー #1
物や場所にこだわらず、心を遊ばせる
「風まかせ」で歩んできた声優50年
2024年12月20日更新
INOUE
INTERVIEW
『美味しんぼ』の山岡士郎役や、『NARUTO -ナルト-』のはたけカカシ役、『夏目友人帳』のニャンコ先生/斑役など、長年にわたり数多くの名作で主要キャラクターを演じてきた声優・井上和彦さん。その柔らかくも力強い声質で、二枚目のイケメンから愛らしい動物まで、キャラクターの個性と心情を魅力的に表現し、幅広い世代のファンを惹きつけています。2024年には声優50周年を迎え、自伝書『風まかせ』を出版。「どんな状況も肩の力を抜いて楽しむ、どんなことにも学ぶ姿勢を忘れない」という井上さんに、全3回にわたってインタビューを実施。その出演作品や役への向き合い方をひもときながら、声優としての生き様に迫ります。
声優50周年の一年を振り返って
――2024年は声優デビュー50周年ということで、各種イベントから本の出版、そして舞台出演までお忙しくされていたかと思います。振り返ってどんな一年でしたか?
井上:とにかく忙しくて、50周年にして、こんなに目まぐるしく日々が動いていくのかと、驚いていましたね。
各所から、お祝いしていただく企画でお声がけいただくのですが、その企画が上がるたびに「忙しくなるの、僕じゃない?」という気持ちでね(笑)。
その忙しさに付いていくのは大変でしたが、終わってみると「ありがたいな」という気持ちが残る。そんな一年だったと思います。
――2024年3月26日は70歳の誕生日ということで、誕生月には自著『風まかせ』の出版、当日にはネオロマンスの出演声優陣が揃うニコ生配信もありましたね。
『井上和彦 バースデー&アニバーサリー特番 supported by animelo』より
「animelo+」は声優・アニソンアーティストのコンテンツを 専門に
配信する
ニコニコ内のチャンネル。
井上:本当、豪華なメンバーが揃い踏みでしたね。ネオロマンスシリーズ自体も30周年という節目の年だったから、なんだか同窓会みたいな感じがしてね。
そこでネオロマンス作品について、みなさんとお話しをしたり、過去のイベントの出来事を振り返ったりして、それがすごく盛り上がったんですよね。そしたら後日、その放送があまりに盛り上がって楽しかったというので、2025年1月のイベント開催が決まったらしいんです。
『ネオロマンス 30th Anniversary』
2025/1/25(土)・26(日)
昼・夜4回公演予定 KT Zepp Yokohama
チケット一般販売12/24(火)より開始
井上:僕自身、2006年頃からネオロマのイベントに出演していますが、それまでだって舞台には出ていたけど、声優としてのイベントって、今ほどはなかったんです。だから最初は「本当に盛り上がるの?」くらいに思いながら出演してみたら、それはまったくの勘違いで。
僕が舞台に出た瞬間に、歓声で壁が揺れてましたからね。あんな大歓声を浴びてしまったら誰だって「俺、人気者になったんだ」と勘違いしてしまいますよ(笑)。というぐらい、作品のすごさ、ファンの熱というものを感じるのが、ネオロマのイベントでした。
ステージイベントに関しては、僕は「ネオロマに育ててもらった」と思っていますし、そこで出会った仲間たちとの繋がり、いまだにこうやって集まって盛り上がれるくらいの絆が生まれたっていうのは素晴らしいですよね。
とくに関智一くんとは今年の夏、『井上和彦50周年記念公演』ということで二人芝居もやらせてもらって。それを3月26日のニコ生の放送で告知したりね。
――井上さん50周年の起点になったのが、そのニコ生の放送だったんですね。関さんとの舞台『エニグマ変奏曲』についても、すこしお話をお伺いできますか?
井上和彦50周年記念公演 Kazz'S
『エニグマ変奏曲』
大阪公演:2024/12/27(金)~12/29(日)
近鉄アート館
井上:僕が演じるのは、孤島に住んでいるノーベル賞作家のアベル・ズノルコ。関智一くんが演じるのは、地方の新聞記者のエリック・ラルセン。ラルセンが島にやってくるところから話が始まります。
舞台上のセットもシンプルで、二人の会話が中心の芝居です。ある「謎」をテーマにお互いの腹の中を探り合うような駆け引きがあったり、そこから少しずつ本当のことが明かされていき、徐々に二人の関係性が変化していくというストーリーです。
――夏に東京で上演しましたが、その後、2024年の12月末に大阪で再演されるのが決まっていますよね。
井上:そうなんです。夏の公演を観にきていただいた方からも多くの反響の声をいただいて、ありがたいことに舞台が終わって少ししてから大阪での再演が決まったという。
本当は再演の予定はなかったものだから、夏に公演を終えた段階ですっかりセリフを忘れてしまって。
それに年末ということもあって、二人のスケジュールを合わせるのがなかなか大変で、収録の合間を縫って「ここならできるね!」とか言いながら、いま頑張って二人で稽古しています。面白さは保証しますから、これを読んで興味を持っていただいた方は、ぜひ観にいらしてください。