インタビュー

声優・鬼頭明里 ロングインタビュー #1

AKARI KITOU INTERVIEW

アニキとの共演がターニングポイントになった

『地縛少年花子くん』八尋寧々

声優・鬼頭明里

――『地縛少年花子くん』のアニメシリーズではED曲も歌われていますよね。同作品との出会いからお聞きできますか?

地縛少年花子くん

鬼頭:元々、マンガの第1巻が発売されたときにいわゆる“表紙買い”をして、面白い作品だなと思ったのが『地縛少年花子くん』との出会い。「アニメ化するならすごくやりたい」というのは、アニメ化が決まる前から思っていました。

そして2020年にアニメ化することが決まって、オーディションを受けることになったんです。そんな気持ちだから、オーディションに受かったとき、すごく嬉しかったのを覚えています。

ちなみに、花子くん役の緒方さんはオーディションの段階ですでに決まっていて、そのオーディションでは全員が「緒方さんとお芝居をする」というめずらしいスタイルのオーディションでした。

だから緒方さんはずっとスタジオにいて、八尋寧々の役を受ける人たちが、どんどん入れ替わりで掛け合いしていくという感じ。

――すごい豪華なオーディションですね……!緊張はしませんでしたか?

鬼頭:いや、むしろ緒方さんが花子くんを全開で演じてくださるので、私としては掛け合いもやりやすかったです。

ただ寧々という役が、自分の中でのイメージが、私の地声とすごくかけ離れたキャラクターだったので、めちゃくちゃ高い声を作ってオーディションにのぞんだんです。

それがいいのか悪いのかもわからなくて、客観的に聞いたら無理しているように聞こえるんじゃないかという不安も大きかった。

でもありがたいことに選んでいただいて、そこでようやく「この声でよかったんだ」って思えた。もう4~5年前になりますが、第1期の頃はそんな思いもあったのですごく楽しく寧々を演じさせていただいた記憶があります。

地縛少年花子くん

――現場での雰囲気、アフレコ時の共演者との思い出などはありますか?

鬼頭:現場はすごく仲良くて、みんなで飲みに行ったりもよくしていました。

アフレコでいうと、やっぱり緒方さんとの共演が、私の声優人生に大きく影響を与えていただいたと思っています。それまで私は、マンガを読んでいて頭の中でイメージする声を再現するという意識で、アニメのアフレコにのぞんでいたんです。

でも、緒方さんは現場での共演者のお芝居だったり、相手との感情だったりをすごく大事にしている役者さんで。その緒方さんから、第1期が録り終わったあとの飲み会で「君はこのままだと行き詰まるかもしれないな」と言われたんです。

――行き詰まる……! かなり直球の言葉で言われたんですね。

鬼頭:そうなんです。で、私が「なんでですか?」って聞いたら「録り直しでもう1回やるときに、私がお芝居をどれだけ変えても同じものが返ってくるんだよね」と。

言われてみると、私、確かに相手のセリフを聞けていなかったんですよね。私の中で「寧々はこう喋るもの。こういう感情で喋るんだ」と考えて、私と寧々という「個」でお芝居をしていた。でも掛け合いって本来、相手のセリフを聞いて、それに対して返すことで出来上がる「和」でお芝居をするものなんですよね。そのことに、緒方さんの言葉で気づきました。それ以来、相手の感情やお芝居が変わるなら私のお芝居も変わるはずだと意識するようになり、相手のセリフを聴いて、その反応としてセリフを喋るようになりました。

――お芝居への姿勢というか、考えること、気にすることがガラッと変わりそうですね。

鬼頭:それまではアフレコ前の台本チェックも「ここの台詞はこういう感情」「話の流れとして、ここはこういう言い方」というのを家で決めてから練習していたんです。

でも、それをしすぎると演技が決め打ちになってしまうので、その準備は最低限でいいのかなと思うようになって、逆に練習量は減らしていきました。ただ、現場では相手のセリフに対してとっさに感情をのせて反応してお芝居をしなければいけないので、その変わりキャラクターの感情や性格のほうを、より考えて自分の中に入れるようにして。

――やり方を大きく変えた。変えてみて、やりづらさはなかったですか?

鬼頭:むしろすごくやりやすくなって、音響監督さんのディレクションに対しても、現場でより柔軟に変えることができるようになりました。家でお芝居を決めてくると、「自分の中ではこう」という固定観念がなかなか消せず、現場のディレクションにもあんまり応じられないことがあったので。

それで、最近になって 『地縛少年花子くん』第2期で改めて緒方さんと共演したときに「自由に楽しんでやれるようになってるね」と言っていただけたんですよね。

あのとき、緒方さんにかけていただいた言葉で、ちゃんといい方向に自分が変われていたんだな、っていうのが『地縛少年花子くん』を通じて数年越しに確認できたような気がしました。

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