宮野さんの手ほどきで長ゼリフを鍛えられた
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『虚構推理』岩永琴⼦

――『虚構推理』では“怪異”たちの知恵の神である主人公・岩永琴子を演じられています。あの作品は、物語も複雑でセリフのなかにも虚構と真実が入り混じっていて、観ていても大変そうだな、という気がしていました。

©城平京・片瀬茶柴・講談社/虚構推理製作委員会
鬼頭:『虚構推理』は第1期が放映されたのが結構前で、しばらく期間が空いて第2期を収録した作品だったのですが、ちょうど『鬼滅の刃』が始まったのと同時期にオーディションを受けた記憶があります。
先に九郎役の宮野真守さんという大先輩の役が決まっていたので、「相手役も同じレベルの人だろうな。そしたら、私、絶対受かんないじゃん」と勝手に思い込んでいたんですよね。
そしたら予想に反して、オーディションに受かってびっくり、みたいな。でも、始まってみたらおっしゃるとおり、まあ難しくて(笑)。
――とくにどんなポイントに難しさを感じていましたか?
鬼頭:推理ものなので、とにかくしゃべるセリフが多くて長いんです。それを意味が伝わるようにしなければいけないし、物語の中で重要な部分は聞かせるように言わなければいけない。最初は、しゃべり切るだけでも精一杯という感じでした。
でも、ありがたいことに宮野さんが毎回、「このセリフ、この文節は何が一番伝えたいかというと、この“〇〇”だよね」とか、「ってことはこのセリフにかかってくるのは、このセリフのこの言葉だから、ここは立てて言ったほうがいいよね」とか、ていねいに教えてくださったんです。もう、本当国語の授業を教えてくれる家庭教師みたいな感じ(笑)。
そのおかげで、少しずつどんなふうに考えてセリフをしゃべればいいのかがわかるようになってきて、回を追うごとに、自分から意識的にセリフの読み方が工夫できるようになっていったと思います。
――前回の『地縛少年花子くん』で、緒方さんのおかげで成長できたというお話もありましたが、こちらでも結構学びが大きかったんですね。
鬼頭:そうだと思います。それに私、「自分があまり台本に書き込みをしないほうがいいタイプなんだ」って気づけたのが『虚構推理』がきっかけだったんですよね。
とくに第1期は難しい漢字もたくさん出てくるし、「長ゼリフを読めるようにしなきゃ」という思いもあって、台本にめちゃくちゃ書き込みをしていたんです。読み仮名をふったり、息継ぎの箇所に細かく線入れたり。
でもその結果、目が滑るようになってしまいました。逆に台本が読みにくくなってしまって、噛んだり、つっかえたりすることが多くなってしまった。
逆に、第2期ではあまり書き込まず、強調すべき大事な言葉だけ目印をつけておくくらいになりました。
琴子のセリフが難しかった、そして宮野さんがいろいろと教えてくれたおかげで、『虚構推理』では長ゼリフに関してだいぶ鍛えられた気がします(笑)
――鬼頭さんが感じる『虚構推理』の魅力を教えていただけますか?

©城平京・片瀬茶柴・講談社/虚構推理2製作委員会
鬼頭:私が感じるこの作品のいちばんの魅力は、「真実とは違った、虚構の推理をする」という新しい観点の推理ものであることだと思います。しかも妖怪や怪異がいて、言ってしまえば「なんでもアリな世界」じゃないですか(笑)。そんなファンタジーの世界での出来事を、あくまで現実的に推理していくのがすごく面白いし、それがまた真実だったり、誰かを思ってのウソだったりして、それが魅力だなって思います。
推理ものって、すこしイメージがカタくなりすぎてしまうこともあると思うんですが、『虚構推理』は適度にコミカルな要素もあったり、ひと息つけるような要素もあるので、総じて楽しく見られる作品なのも、いいなって思いますね。すごくかわいらしい女の子の主人公だけど、結構過激な下ネタを言うとか(笑)。
コメディーと推理要素のいいバランス、そして独特な世界観とキャラクターが織りなす摩訶不思議な出来事を、現場の近くで目の当たりにしているような気持ちで楽しんでいただいていたら嬉しいですね。