『Paradox Live』
cozmez・矢戸乃上 珂波汰に対する思い
©Paradox Live2024
――『Paradox Live』では、「cozmez」という双子ユニットの兄・矢戸乃上 珂波汰(やとのかみ かなた)としてラップも披露しています。珂波汰については、どんな思いで見ていますか?
©Paradox Live2024
小林:最初は彼がスラム街で育ったということぐらいしか知りませんでした。だけど楽曲が出るにつれて、彼らの両親の事や、育ってきた環境が如何に過酷だったかがだんだんとわかってきて。
一方で、そういう過去があるからこそ、周りが珂波汰のことを認めて気にかけてくれる、いまの環境は彼にとってとても恵まれたことだと思うんですね。愛情を受けて育って来なかったがゆえに、そのやさしさを突っぱねてしまう性格ではあるんですが、少しずつそういう態度もやわらいでいる。
彼自身が、自分と他人にちゃんと向き合えるようになってきた。それがここ数年、いい形でcozmezの楽曲にも反映されてきている気がします。僕自身、彼のことを本当に理解できているかどうか自信はないけど、一足飛びではなくゆっくりと成長させてあげたいな、と思いながら演じています。
――大きな成長を描かない。
小林:むしろ「変わってない」と思われるぐらいがちょうどいいのかなって。でも、僕としてはちゃんと変えていくつもりで演じてはいるので、そのくらい不器用な変化で成長させてあげたいという気持ちで、彼のことは考えています。
――珂波汰としてパフォーマンスするときには、どんな気持ちでのぞんでいますか?
小林:僕自身、これまでヒップホップを聴かずに育ってきてしまって、初めてスタジオに入ったとき、レコーディングに4~5時間かかってしまい「ヒップホップって怖い!」と感じたのを覚えています。
ヒップホップだけでも難しいのに、そこに珂波汰というキャラクターも載せて音楽として表現しなければいけないので、そこは今でも試行錯誤しながら見つけていっている感覚はありますね。なかなかその塩梅を自分で決めるのは難しいですね。
――ライブでのパフォーマンスは、どうのぞんでいるんですか?
小林:ライブだと、もうそういうのは考えず珂波汰としてのアレンジを押し出すイメージで歌っています。
振り付けも、とくに決められていないことが多くて「自由にやってください」という感じなんですが、一緒に歌ってくれる那由汰役の豊永(利行)くんがアドリブですごくいろいろな動きを表現してくれる人なので、そのインスピレーションで色々とパフォーマンスの幅が広がっていくのは、自分でもやっていて楽しいです。
その分、集中していないとすぐに歌詞がどこかに持っていかれるので、動きも歌も含めて集中力はめちゃくちゃ必要なんですが……。
『炎炎ノ消防隊 参ノ章』放映決定
アーサー・ボイルを演じるにあたって
――『炎炎ノ消防隊』では、アーサー・ボイル役を務められています。アーサーは、どんな思いをもって演じていますか?
小林:僕、じつはデビューしたときからギャグに対する苦手意識が自分の中にあるんです。それは家庭が厳しくて、あまりお笑いに縁がなく育ってきたのも理由だと思うんですが、一般的な笑いのツボというのがあまりわからなくて、みんなが笑うシーンで「何が面白いんだろう?」というのをよく感じているんです。
仕事でも、自分としては精一杯ギャグっぽくやってるつもりでも、「もっと面白くして」「ギャグっぽくやって」とか言われてしまって、「いや、やってるんですけど!」という経験もたびたびしていて。
そんな中で、「滑ってなんぼ」というキャラクターのアーサーは、めちゃくちゃありがたいんですよ! みんなが「はい?」って首を傾げるくらいが正解で、無理に笑いを狙いにいかなくていいという安心感のおかげで楽しく演じることができています。
――めちゃくちゃ面白いですね!(笑) それって自分で気づいたんですか?
小林:いや、僕が話したときになんか気まずい感じで終わるのを見ていた中井和哉さん(第8特殊消防隊の大隊長・秋樽桜備役)が「なんか、アーサーっぽいよね」「その感じ、俺は好きだよ!」って言ってくれて(笑)。
それで、「なるほど!じゃあこれで行こう!」と思って、どんなに場が微妙な空気に包まれても、「あ、俺いま自分の仕事まっとうしました」という気持ちになれています。
――アニメ見ていると、アーサーが面白くてふつうに笑っちゃいますけどね(笑)。
小林:そこで調子に乗って狙いに行くと、多分面白くならないんだろうと思います(笑)。
ギャグの話ばかりしましたけど、アーサー自信はとても強いし、内に秘めた消防官としての思いもかなり熱いモノを持っているので、そういうシーンとのメリハリがあるのは演じていてすごく楽しかったです。
視聴者からも、そういうギャップに魅力を感じてくれていた方の声はわりと多く聞こえてきていました。
――ぱっと見は、「少年マンガにいそう」だと思うんですけど、絶妙にいそうでいないですよね。
小林:そうですね。主人公の相棒的な立ち位置って、ふつう相棒のほうがしっかりしているパターンが多いですけど、相棒のほうが抜けてるってめずらしいですよね(笑)。
――ちなみに、アフレコで記憶に残っている出来事や思い出などはありますか?
小林:たしか、マキ役で入っていた上条沙恵子さんが『炎炎ノ消防隊 壱ノ章』がレギュラーとしては初めての作品で、すごく緊張していたんです。
だけど、蓋を開けてみたらお芝居から緊張なんかまったく感じさせないし、僕は上条さんの演技がすごく好きだったんですよね。ストレートに感情を表現する新鮮さがすごくて、自然と自分の新人の頃を思い出させてくれて、なんとなく自分の気持ちにもスイッチが入りました。
ほかの先輩方も含めてベテランと若手がいいバランスで混ざり合って、それがお芝居にいい具合に反映されていく現場だなというのは、アフレコのたびに感じていましたね。
――現場での空気感も良さそうですね。
小林:仲良くなるまでは時間がかかりましたけどね。
そうそう。最初は、なぜか制作陣から「梶原くんが小林さんと仲良くなりたいと言っていたのでよろしくお願いします」という話を聞かされていたんです(笑)。
当時、岳人くん、上条さんは20代で一番年代が近いのが僕。先輩とはいえ、話しかけるのは緊張しましたし、いつ、どうやって話しかけようか常にうかがっていました(笑)。
だんだんと打ち解けていって、ご飯も一緒に行ったり、遊びに行ったり。次のシーズンの放映が発表されましたが、二人に会うのがすごく久しぶりなので、どんな変化をしているのか、いまから会うのを楽しみにしています。
――ありがとうございます!最後に、『炎炎ノ消防隊』の作品の魅力を教えてください。
小林:この作品は、ジャンルでいえば「ダークファンタシー」にあたると思うんです。人体発火現象で人がどんどん燃えてしまったり、森羅やアーサーたちが何と戦っているのかがはっきりとしなかったり、物語の中に秘められた謎がたくさんあって。
物語の中に、謎が明らかになっていかないむずがゆさが終始まとわりついてくるし、だからこそ気になって続きを観てしまうという魅力もある。そんな、そこはかとなくほの暗い、でも暗すぎないトーンが、僕はめちゃくちゃ好きです。
『炎炎ノ消防隊 参ノ章』は2025年4月~、2026年1月~と、分割して2クールで放映予定でまだまだ時間があるので、気になる方はぜひ壱ノ章からチェックしてみてください。
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課
取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃