インタビュー

声優・山下大輝

声優・山下大輝
ロングインタビュー #1

「下手なんだから自分に合わないことはやめなさい」

僕の“個性”を武器に変えた恩師の言葉

2024年3月22日更新

DAIKIYAMA
SHITALONG
INTERVIEW

声優としてデビューしたての2013年に『弱虫ペダル』小野田坂道役で主役を演じ、以来、『僕のヒーローアカデミア』緑谷出久役、『あんさんぶるスターズ!!』朔間凛月役、『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』ナランチャ・ギルガ役など大人気作品で主要キャラクターを熱演してきた山下大輝さん。取材中、時折感じられたのは言葉のなかにほとばしる情熱と、まっすぐ物事を見る眼差し。過去の経験も、かけられた言葉も、すべてを大事に積み重ねていく山下さんのあり方は、戦いを通じて成長していく少年漫画の主人公のそれのようです。このインタビューでは、全3回にわたって、その人となりをひもときながら、声優・アーティストとしての山下大輝さんの信念に迫ります。

「ジーニーになりたい!」
ディズニーの歌に憧れた少年時代

声優・山下大輝

――まず、幼少期のお話から伺いたいと思います。どんな少年時代を過ごされていたんですか?

山下:小さい頃はとにかく習い事をたくさんしていました。父がテニスコーチだったので、物心がつく前からラケットを持ってテニス三昧の毎日。一方で、母はピアノの先生だったので、音楽や芸術、表現系の習い事にも通っていて、テニス、ピアノに加えて習字、モダンバレエ、あとは別の音楽教室……

――すごい量ですね…! 子供ながらに、いやになったりはしなかったんですか?

山下:いやになるものもありましたよ。テニスに関してはもう半ば強制的にやらなきゃいけなくて、正直そんなに楽しいとは思っていませんでした。

ただ、当時は「テニスが生活の一部」みたいな感覚だったので、やって当たり前というか、学生になってからもずっと続けてはいました。ですが、心のどこかにはずっと引っかかりがあったような気がします。

――でも、中学生で全国大会なども出られてるんですよね?

山下:父が、すごいスパルタだったんです(笑)。夏休みも毎日テニスクラブに通って、生活は本当にテニス一色。大会に出て勝てば父が「よっしゃー!」と喜ぶけど、負けるとブチ切れる。父の顔色をうかがいながらやっていたと思います。

だから、高校生くらいになって周りの子たちが将来の夢とか職業を考え出す頃に、「あれ、テニスを、将来の夢にしたいんだっけ?」という気持ちがだんだんと出始めて。「自分の人生だし、もっと自由に考えていいはずだよな」という気持ちになってからは、ようやく好きなものが好きと、言えるようになりました。

――その気持ちを、お父さんに伝えたときはどんな反応でしたか?

山下:じつは伝えていないんですよ。高校卒業後、何も言わずに上京したので。もし、当時伝えていたらぶっ飛ばされていたかもしれないですね(笑)。僕には兄もいるんですが、テニスに関しては兄のほうが優秀で、父も兄のほうに付きっきりだったので、それもなんか嫌で。

――少年の山下さんにとって、なにか複雑なモヤモヤがあったんですね。一方で、歌やお芝居などの表現の世界に対する興味も小さな頃から同時に育っていったと。

山下:そうです。母が小さい頃によくディズニー映画のビデオを見せてくれて、それが大好きになって何度も何度も見返していたんですよね。それがきっかけで歌や音楽ってすごくいいな、と思うようになって。

声優・山下大輝

――どんなところに惹かれたんですか?

山下:ディズニー作品って基本的にミュージカルのつくりになっていると思うんですが、キャラクターたちがなにか思い悩んだり、一歩踏み出すときだったり、夢に向かって行こうという感情を発散するときに、かならず歌うんですよ。それが、すごく前向きでポジティブなもののような気がして、キラキラ輝いて見えていたと思います。あの感覚が、自分の中でビシッとハマったというか、すごく素敵だと思ったんですよね。

あとは、ディズニーや好きなゲームの曲を母がよくピアノで弾いてくれて一緒に歌っていたんです。その頃の楽しい思い出や気持ちがずっと残っていて、それは今の自分の夢とも繋がっているのかなと思います。

――とくに思い入れの強い作品やキャラクターはありますか?

山下:僕の中では、ジーニーですね。『フレンド・ライク・ミー』をはじめ、楽しく生き生き歌っているのを見て、子供だった僕は「ジーニーになりたい!」ってずっと言っていました。思えば、声を使ったエンターテインメントに興味を持つようになったのは、それがきっかけなのかなと。

ジーニーが次から次にいろいろな声で歌っているシーンが大好きで、何度も巻き戻して観て、母に歌や声マネを聞いてもらって、「聴いて!似てる?」とか言ってずっと声で遊んでましたね。それが僕の中での始まりというか、声での表現の原点なのかなと思います。

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