ドラマCDからアニメ化まで
『薬屋のひとりごと』猫猫との出会い
――2024年の話題作であり、2025年から第2期も放映する『薬屋のひとりごと』。悠木さんは主人公・猫猫(マオマオ)を演じていらっしゃいますが、まずは同作品との出会いから教えていただけますか?
悠木:『薬屋のひとりごと』との出会いは、元々ドラマCDで猫猫役としてキャスティングをしていただいたのがきっかけでした。その頃から数えると、じつは結構長い付き合いになる作品なんですよ。
収録をするたび、「いつか映像でも見てみたいね」「でも、作画コストハンパなさそうだよね(笑)」とよく話をしていました。
ドラマCDとして、映像なしで声だけで猫猫を表現して……というのもすごく楽しいお仕事ではあったんです。とはいえ、『薬屋のひとりごと』って猫猫のモノローグがすごく多い作品じゃないですか。それに、ドラマCDが音だけに集中して聴いてもらうコンテンツだったこともあって、じつは最初、すごくドキドキしながら猫猫を演じていたんです。それなのに、猫猫ってすごい落ち着いているじゃないですか……!歳の割に(笑)。
©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会
――たしかに……! 「本当に17歳なのこの娘?!」と思いますよね(笑)。
悠木:頭がいいからなんでも飲み込んで成長するし、考えていることは達観しているし、何度も修羅場をくぐり抜けてるから肝も座ってるし(笑)。
ドラマCDで猫猫を演じているときには、どっしりしている猫猫に対して、私のほうがドキドキばかりしていて、むしろ猫猫の落ち着いた感じに救われていたんです。キャラクターに支えられていた、というか。
そんなわけでしばらくの間、彼女のほうがずっと立派で精神年齢が高い気がしていました。それが最近になってようやく、猫猫の精神年齢に自分が追いついてきた感じがして。ようやく「彼女の気持ちに寄り添ってあげられるかなぁ」と思えるようになった。
ちょうどアニメ化の話をいただいたのが、そんなことを考えている頃だったので、その頃から改めて猫猫を演じられる機会をもらったことが、すごく嬉しくて。
――ドラマCDのときと、アニメでの演技とで悠木さんの中で何か意識的に切り替えているものというのはあるんでしょうか?
悠木:一番大きな違いは「絵があるかないか」ですよね。
アニメだと、目が大きくてかわいらしい、華奢な女の子であることがすぐにわかってもらえるので、その分、猫猫のドライなキャラクターを際立たせる様に意識しています。
やっぱりアニメから観始めた方に「ジャスト」だと感じていただける演技をしたいなって。周りのキャストとのバランスであったり、どんな媒体で、どんな方が楽しむのかによって同じキャラクターでも味付けを変えることが、各現場で求められます。
――実際、第1期の放映では反響も大きかったと思います。どんな気持ちで受け止めていましたか?
悠木:そもそも原作が大人気で、2つの雑誌でコミカライズされ、ドラマCDも人気……という作品なので、「アニメ化となったからには下手なものは世に出せないぞ……!」というのがキャスト陣含め、制作スタッフみんなの心の中にあったと思います。
そんな気持ちで、最初のPVを観たときに作画、音楽の気合いの入り方を感じて「これだけのクオリティなら、きっと世の中にポジティブに受け入れてもらえるな」と。そしたら、思った以上にみんなに大きく響いて。「いま出せばきっと売れるよ!」という出し方ではなくて、丁寧に丁寧に愛されて育まれた作品として世に出たものなので、そうやってしっかり作り込まれた作品が世の中の人の心に響いたというのは、作り手の一人としても、すごく感動しました。