二宮清純コラムパラリンピック 奇跡の物語
~ビヨンド・ザ・リミット~

2026年3月10日(火)更新

伊藤樹は“氷上のファンタジスタ”
格上チェコに敗北も次以降に収穫

 敗れはしたものの、大健闘と言っていいでしょう。ミラノ・コルティナパラリンピックのアイスホッケーで、世界ランキング8位の日本は3月7日(現地時間)、同3位のチェコと対戦し、接戦の末、2対3で競り負けました。中北浩仁監督は「残念だが、次につながる大きな試合になった」と手応えを掴んだ様子でした。

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「楽しみながらやる」

 1次リーグは、8チームが4チームずつに分かれ、A・B各グループの上位2チームが準決勝に進出することができます。

 グループBに属する日本はチェコ、カナダ、スロバキアの順に戦います。
「金・銀はちょっと見えないですけど、3位は全然(あります)。歯車さえ噛み合えば……」

 開幕前、そう語っていたのは20歳のエース伊藤樹選手です。
「一番大事なのはチェコ戦。この試合にフォーカスを当てて頑張りたい。緊張しないのは難しいかもしれないけど、楽しみながらやれば普通のパファーマンスは出せると思っています」

 さて、チェコは、どういうチームなのでしょう。冬季パラリンピックには2010年バンクーバー大会から5大会連続で出場していますが、まだメダルはありません。10年バンクーバー大会と14年ソチ大会の5位が最高です。ミラノ大会では、ダークホース的存在といったところでしょうか。

<チェコは、組織立った守備システムとタイムリーな得点力、そして強力なゴールキーパーを組み合わせ、ヨーロッパで最も安定感と規律に優れたパラアイスホッケーチームの一つとして着実に地位を確立しています。チェコはミラノ・コルティナ・オリンピックに第3シードで出場し、世界選手権(2023年、2024年、2025年)で3大会連続銅メダルを獲得するなど勢いに乗っています。この勢いは、アイスホッケー界の最高峰の舞台で活躍できるチェコの実力を裏付けています>(「国際パラリンピック委員会公式サイト」2026年2月28日配信)

 伊藤選手は「自分は代表で一番ドリブルがうまい。1対1では絶対に負けない」と言い切るほどの自信家です。予選では、6得点4アシストの活躍で、日本を2大会ぶりのパラリンピックに導きました。

華麗なステッキさばき

 ユニホームは日本が白、チェコが赤。先制したのは日本です。第1ピリオド6分過ぎ、伊藤選手から鵜飼祥生選手に渡ったパスを38歳の新津和良選手がゴール前で合わせました。パックを浮かせる技ありのシュートでした。

 その後、チェコは第1ピリオド8分過ぎ、11分過ぎに相次いでシュートを決め、2対1と逆転しますが、日本も負けてはいません。第2ピリオド5分過ぎ、フリーになって抜け出した伊藤選手が右手でキープしたパックを、ゴール前で素早く動かし、左手で決めました。

 これで2対2、同点です。ここぞという場面で、伊藤選手の個人技が光りました。
「自分がパックを持ってからの爆発力は本当に世界トップクラス。自分が真ん中の位置でファーストタッチすることによって、ある意味ショートカウンターになるんです」

 大会前、伊藤選手が話していた通りの得点パターンでした。

 6歳でアイスホッケーに親しんだ伊藤選手ですが、本人も語っていたように、アイスホッケーとパラアイスホッケーは、全く似て非なる競技です。

 9歳で事故に遭い、パラアイスホッケーを始めた際は、満足に滑ることすらできなかったそうです。現在、代表チームでキャプテンを務める熊谷昌治選手は「この子が(パラ)アイスホッケーをやったとしても、趣味程度かな」と思ったといいます。

 それが、今では日本の点取り屋にして若きエースです。華麗なステッキさばきは“氷上のファンタジスタ”といっても過言ではありません。

 試合は第2ピリオド8分過ぎ、チェコのカプコ・ルーカス選手に決められ2対3で敗れました。それでも伊藤選手は「メダルが見えていることを実感できた」と強気でした。少ないチャンスをいかにものにするかが、今後に向けての課題です。

二宮清純

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