私と似ている部分とそうでない部分|『防振り』メイプル

©2023 夕蜜柑・狐印/KADOKAWA/防振り2製作委員会
――1期、2期を通じて、特に印象に残っているシーンはありますか?
本渡:とくに印象に残っているのは、機械神との戦いのシーン。あのアニメってバトルシーンがすごく綺麗に描かれているじゃないですか。カット数も多いし、展開も早いし。
とくに機械神戦でのメイプルの全力さは、2期ではすごかった覚えがあって。あのシーンは私も自分の肺活量と戦っていました(笑)。
あとは、暴虐の状態になるシーンは全般的に、本当に大好き(笑)。ボイスチェンジャーの処理が入っているんですけど、収録のときは完全に私の声のまま録っているので、「やったよ、サリー!」とか「いえーい!」とか、現場とアニメとで声が変わっているのが面白くて!
化け物がピースしている映像に、かわいらしい声を当てるっていうのが、いかにも『防振り』だなって感じがしてすごく好きです。
――暴虐の声は、収録のときは普通の声なんですね……!
本渡:じつは、そうなんですよ!暴虐の状態で7体くらいに分身して、まるで何かの映画みたいに横並びで暴虐が歩いてくるみたいなシーンがありますよね。

©2020 夕蜜柑・狐印/KADOKAWA/防振り製作委員会
あのシーンも好きだなぁ。ああいう遊び心というか、「何これ!」みたいな感じ(笑)。
メイプルがらみの絶望感を描くのが、本当うまいんですよね……!「結局、最終的なラスボスってメイプルじゃん!」という感じすらしてきちゃう(笑)。
――『防振り』のアフレコ現場での思い出や、共演者の方々とのエピソードなどはありますか?
本渡:1期の頃は、アフレコ終わりにスタッフさんも含めて、みんなでタイ料理を食べに行ったりしていました。やっぱりみんなでご飯を食べるといいですよね、一気に仲良くなれるというか。
スタジオ内とミキサー側のブースだと、どうしても壁の隔たりがある分、緊張感があるんですが、同じ食卓を囲んでからはすぐに団結できるようになった記憶があります。
とくに『防振り』って、内容的に現場の空気感が良くないと成り立たないような気がするので、収録後のご飯はすごくいいきっかけになっていたと思います。
――2期になると、コロナ禍で分散収録が中心だったんですよね。
本渡:そうです。2期の収録中の思い出といえば……あ、初めて現場で一緒になった事務所の後輩との収録かな。
ある日の時間割で、その子と一緒になる予定だったんですけど、ちゃんとどの子かわからなくて。でも、なんかとんでもなく若い中学生くらいの子がいるなと思ったら、まさかのその子が後輩だったんです。
初めて会うから挨拶もしたんですけど、私とまさかの干支が同じ……!つまり、当時の私の12歳下でした。
あまりにも若いものだから、そこで「先輩としていい姿見せなきゃ!」って急にあたふたしちゃいまして(笑)
――「教えてあげなきゃ!」みたいな気持ちが強くなっちゃったんですね。
本渡:そうなんです!でも緊張しても何もいいことはなくて、案の定、収録中にペンは落とすし、台本も落とすし、しまいにはレシーバーを床に引きずって歩くという……。
結局、帰り際に「こうなっちゃ……いけないよ。わかった?」というのが、精一杯でした(笑)。
みんなで仲良くワイワイとやる場面もあれば、私が勝手にテンパって背筋が伸びてしまうような場面もある。それが『防振り』の現場だったなっていう、ある意味、思い出深い(?)現場です。
――お話聞いていると、その光景が目に浮かぶようです(笑)。本渡さんご自身は、オンラインゲームは?
本渡:最近は、あまりできていないんですが、コロナ禍はモンスターハンターをやっていましたね。アイスボーン。
キャラに名前をつける時に、とりあえず自分が満足すればいいかと思って、人間に『カエデ』、オトモに『ホンド』って付けたんですよ。ソロのうちは、それで楽しんでたんですけど、オンラインでやってみたら、オトモが横に並ぶと『ホンドカエデ』って、キャラクターの上に表示されるんですね。
「あれ。これ、私ガチオタに見られてるよな」って気づいて(笑)。
――見えますね(笑)。
本渡:そのとき「オンラインゲームでは本名を使うもんじゃないな」ってようやくわかりました。楓をメイプルにしたり、理沙をサリーにしたりも、「そっかぁ!だからかぁ!」って(笑)。
――そこでようやく!(笑)本渡さんから見て、「自分とメイプルが似ているなぁ」と思う部分はありますか?
本渡:どうだろう……似てる部分もあるけど、けっこう対極な感じかなと思います。
名前と、"のんびりやっていこう"というマインドと、あと痛いのが嫌なのは似てるかな(笑)。
私、痛いのが嫌すぎて全身麻酔で、親知らずを4本を一気に抜いたくらいなので。全方位のほっぺたが腫れて、顔が四角くなりましたけれども……。

▲「こんな感じで、四角い顔に!」と身振り手振りで伝えてくれる本渡さん。親知らずでおでこは四角くならないと思いますが……
似てないのはステータスを防御力に全振りするところ。前知識なしで「やってみるか」みたいな。その場その場で動けるところが、私とは違うなと思っていて。
私は色々調べてみたり、体験してみたりしてから自分が動くのを決めることが多いんですけど、メイプルはそういうのを全然気にせず、自分の感覚だけで進んでいける。
だからすごく羨ましい生き方をしている子だなって、思います。
取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃