「楽しい」を選び続けて声優になった

――本渡さんの「座右の銘」はどんな言葉ですか。
本渡:「思い立ったら吉日」ですね。逆に、思い立たなければ何もしない(笑)。
文字どおりの“怠惰”で生きてるんですけど、でも「楽しそう!これやろう!」って思ったものは、誰かに止められたとしても、きっと止まらずにやってしまうと思います。逆に「絶対やってみせるぞ!」って意地になるかも(笑)
興味が湧いたものは、まずやってみる。何事も手を出してみようという気持ちはあります。
――最近だと、どんなことをやってみたり?
本渡:元々、私は料理にデバフがかかるタイプなんですよ(笑)。苦手じゃないけど、突き詰めるほどの興味はないし、「手間がかかるくらいなら外食のほうがいい」と思ってしまうタイプ。
そんな私ですが、最近になって「朝ごはんを自分で用意しよう!」という気持ちになり、めちゃくちゃ簡単な朝ごはんを作るようになりました。
――どんなきっかけで「朝ごはんを……」と思ったんですか?
本渡:こうやって東京で声優のお仕事ができるようになって「ご飯、買って帰れる」「出前取れる」「お弁当、持って帰れる」という状況にひたすら甘えて、日々幸せではありました。
ただ、ふと「ん?出前の出費ってけっこうでかいよな」って思っちゃったんですよね。
例えば、卵、納豆、冷凍ご飯、フリーズドライのお味噌汁を買っておせば、あとはお湯入れてレンチンすればOK。こっちの方が安く済むぞ、ということに、いまさらながら気づきました(笑)。
――たしかに出前も便利ですけど、実際外食よりも高くなることもありますもんね。
本渡:そうなんですよ。いまは、その気持ちで朝ごはんの支度を続けられてる状態。
でも、まだあんまりいろいろなことを考えられてはなくて、この間は、自分が目玉焼きとソーセージが苦手だということをすっかり忘れて、作ってしまいました(笑)。
――なんでそうなる!?(笑)
本渡:いや、冷蔵庫にあるのはわかっていて「そろそろ賞味期限だから食べなきゃな」って思ったらそれを作っていたんですよね……。
最近、おいしいゆず胡椒をもらったのでそれを付けつつ、「これはタンパク質だ!」って自分にいい聞かせてなんとか食べましたけど(笑)。

▲「気づいたら、玉子を手にフライパンに油を引いてました」という本渡さん
――「やってみよう」が強すぎて「なに食べたい」は二の次になってしまった感じですね(笑)。声優としては、「思い立ったが吉日」を感じることはありますか?
本渡:私の場合、日々の仕事というよりも、前々回のインタビューでお話ししたように、自分が声優になるまでの過程が「思い立ったが吉日」でやってきたんじゃないかと思います。
自分が楽しいと思えるものを「やるぞ」と決めて選び続けてきたから、いまこうして声優ができているんだと思うんです。だから苦しいことも難しいことも含めて楽しかったし、いまだって楽しい。
多分、「楽しくない」と思ったら、声優も辞めるんだと思います。中学生の頃の部活のときみたいに(笑)。
キャラ視点の景色が見えるときが最高の瞬間

――お仕事で「楽しい」と感じる瞬間は、どんなときですか?
本渡:前回のインタビューにも繋がりますが、“理性”を忘れて自分が役としてしゃべれているとき……かな。ほかの声優さんといい掛け合いができたり、しゃべり終わってキャスト同士で「景色見えた?」「見えた見えた!」って言い合っているときは最高ですね。
一方で、音響監督さんからのディレクションで私自身の課題をずばりいってもらったときや、自分が気づいていないクセを教えてもらったときも。
自分のクセを直したり、壁を乗り越えるって難しくて苦しいことだけど、同時に刺激的で楽しくもあります。
――“理性”を忘れるって、「ゾーンに入る」「トランスする」とか、そういう感覚に近いんでしょうか?
本渡:そうだと思います。収録が終わると同時に理性が戻ってくる感覚もありますし。
そういうときって画面ではなくて、「そのキャラ視点」で景色が見えるんですよね。画面にはキャラクターの姿が見えているけど、私たちが見ているのはそのキャラの目の位置から見えるもの。だから、そのキャラが感じている距離感だし、声の張り方になるんです。
――アフレコで画面を見ているときは、実際に見ているものと頭の中で立ち上がっている映像が違うんですか?
本渡:もちろん、いつもいつでもキャラ視点の景色が見えているわけではなくて、画面や台本に向かってしゃべってしまうときもあります。そういうときのしゃべり方は聞けばわかりますし、自分でも気づきます。
「いまのセリフ間違えたな」「イントネーション違ったな」とかそういうことではなくて、そのキャラクターの視点に立って話せたかどうか。例えば、「ヘリコプターに乗っているとき」。隣の人と話すだけでも全力で声を出さないと届かないじゃないですか。
これはわかりやすい例ですけど、それってどんな場面でも同じことが言えるんです。
――めちゃくちゃ面白い……プロの仕事の一端を垣間見たような気がします。
本渡:でも毎回そうできるわけじゃないし、“理性フィルター”が取れなかったとしても、「いまはもうとにかく頑張るしかない」という気持ちです(笑)。
――ありがとうございます。今後、どんな声優であり続けたいと思っていますか?
本渡:どんな作品に対しても、「楽しい」という気持ちで向かい続けられるような人でありたいなって思います。私がその作品の「好きだ!」って思ったところを観ている方にも好きになってもらいたいし、そうなってもらうことが私にとっての楽しさでもあるし。
それと、もっと具体的に近々の目標をお伝えすると、じつは1年目からずっと吹き替え作品に出演してみたくて。映画を観るのも好きで、私自身、結構映画を見ながら「自分だったらこうできるかな」みたいなことを考えながら観ちゃうんですよね。
吹き替えは、アニメとはまた全然違ってよりナチュラルなお芝居が求められると思うんです。それが難しいと思うんですけど、同時に楽しそうでもある。
ゆくゆくは、アニメと吹き替えを半々くらいのバランスで活動できたら、それが一番理想ですね!

▲取材中に話していたと思ったら、急にカメラマンに質問を振る本渡さん。明るいムードメーカーで、誰よりも現場をなごませくれました