ビジュアルと中身のアンバランスさが面白い
『幼女戦記』ターニャ

――『幼女戦記』ターニャ役を演じられている悠木碧さん。お芝居にあたって意識していることはありますか?
悠木:『幼女戦記』は、アニメシリーズは“特に”ですが、かなりキャラクターの表情がダイナミックに動く作品で、オーディションの段階からその表現というのは資料で共有されていました。ターニャも、見た目は普通にかわいいキャラなんですが、いわゆる「ゲス顔」もよく見せるキャラクターでもあります。
同時に『幼女戦記』という作品は、戦争をテーマにしていることもあって、結構内容がハードなんですね。とくに軍事用語も多く登場するので、その言葉を聞いたことがない方でも楽しく観てもらえるようにしたかった。
そんな気持ちから、ターニャを演じるときのお芝居もできるだけダイナミックに、爆撃音が後ろでしていてもそれに馴染むように、派手さとリズム感を意識しています。
――ターニャは見た目こそ幼女ですが、中身は冷徹な企業戦士だった中年男性の転生ですよね。その辺は演技としてどう変わってくるんでしょうか?
悠木:まさしく体は小さい女の子だけど、中身はおじさんなので、ビジュアルに似つかわしくない、ある意味堂々した「上に立つものの迫力」が表現できると、幼女とのアンバランスな面白さが出るのでは、と思っています。
ターニャのような年齢の役だと、本当は子役が演じるほうがハマるんじゃないでしょうか。でもこの役をあえて大人に演じさせるのは、迫力の部分との強弱を明確に表現したい、という製作陣の意図や狙いがおそらくあると思うんですよ。ターニャの役が決まった段階で、そんなふうに考えていたので、それを際立たせるようなお芝居はしたいと思って組み立てていきました。

©カルロ・ゼン・KADOKAWA刊/幼女戦記製作委員会
――たしかにターニャの言葉には、幼女らしからぬ迫力、威厳や勇ましさも感じますよね。
悠木:よくよくターニャのセリフを追ってみると、おじさんっぽさというよりも、小説における“地の文”のような長めの説明セリフが多いイメージなんですよ。そのセリフ自体がすでに幼女っぽくはないじゃないですか。
逆に言うと、幼女っぽいセリフが全然ないキャラクターでもある(笑)。
でも、だからこそ『幼女戦記』という作品の異質な世界観が出るのだと思うし、ターニャの不思議さや怖さ、魅力も出るのかなと思っています。
レジェンドの気迫と和やかさを感じた現場

――共演するキャストさんなどとの、アフレコ時の思い出などはありますか?
悠木:一緒に共演する、いわゆる「軍の上層部の方々」を演じるキャスト陣が、玄田哲章さんや大塚芳忠さんなど、私から見ると本当に豪華なレジェンドばかり。そんな方々が超迫力のある演技をするから、気押されちゃいそうになるけど、「それに付いて行かなきゃ」という気持ちで現場はドキドキなんですよ。
でも、確かにターニャの視点から見てみれば、軍の上層部は「命を賭ける戦場に人を駆り出す存在」なわけで、その人たちの漏れ出すような気迫や怖さをターニャも感じているんだろうと思うんです。そういう意味では、その先輩方のおかげで、収録のときは私が自然とターニャと同じような気持ちでいられたような気がします。
――レジェンドたちの気迫……! 図らずも、良い効果を生むキャスト編成だったんですね。
悠木:私との掛け合いが多かったのがヴィーシャを演じる、プライベートでもいちばん仲良しな早見沙織ちゃんだったんですけど、大体毎回アフレコが終わると喫茶店に行って、「あのレジェンドの掛け合いを生で毎回聴けるってすごいよね」という話を二人でしていました(笑)。
しかもね、もう本当に仕事人しかいないから、収録が爆速で終わるんですよ。本編30分ならば全部で1時間かからないときもあるくらい。極め付けは劇場版で、香盤表には「21時まで」って書いてあったのに、収録を終えて時計を見たら19時。2時間巻きは、さすがに驚きました(笑)。
音響監督を務めた岩浪美和さんも、私たちの集中力を切らさないような工夫をしてくださって、現場全体が「集中していいパフォーマンスを出して、パッと終わらせてすっと帰る」みたいな。本当、仕事人ばかりで最高でしたね。
――まさしく、プロの現場という感じですね。でも、逆に緊張感とかプレッシャーは大きくならなかったんですか?
悠木:もちろん収録中の大先輩の方々は気迫もすごいし、集中力もプロ中のプロという感じでしたけど、収録がストップするとみんな本当にかわいらしいんですよ。さっきまであんなに怖いお芝居していたのに、休憩中は「最近、毎朝ヨーグルト食べてる」みたいな話とか、すごい和む会話をしていて……(笑)。
そういう意味で、緊張感やプレッシャーと、なごやかな空気感がちょうどほどよいくらいの現場だと思います。