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創刊40周年を迎えるスポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』のバックナンバーから、
球団ごとの名試合、名シーンを書き綴った記事を復刻。2020年シーズンはどんな名勝負がみられるのか。

2013楽天 日本一

[インサイド・レポート] 楽天野手陣、結束Vの全内幕

text by Osamu Nagatani

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第4戦の初回、岡島は先発ホールトンに対し、〝心得〟通りじっくり球を見極めて四球を選ぶ。動揺したホールトンは藤田に死球を与え、1死一、二塁になったところでジョーンズに本塁打が飛び出し、楽天はいきなり3点のリードを奪った。5回に逆転を許したが、続く6回、松井が出塁すると、嶋がきっちり送り、ここで、レギュラーの座を一度は失い、目の色が変わったかつての1番打者・聖澤諒が同点打を放った。以前の楽天には見られなかった粘り。結局、7回に勝ち越しを許して試合には敗れたものの、「これまでなら逆転されたところでシュンとなるのに、よく追いついた」と、田代コーチも星野監督も光明を感じられる敗戦だった。

これで2勝2敗のタイにされたが、選手の間に暗い雰囲気がまるでなかったのは、仙台に戻れるという安心感があったからだろうか。銀次が言うように「失うものは何もない」という思いが強かったのかもしれない。

銀次や枡田慎太郎が松井に食事に連れて行かれた時、いつも聞かされる言葉がある。

「野球はミスがあっても、取り返しのつくスポーツやから」

第5戦は、第1戦で1点もとれなかった内海が先発。楽天ナインは「取り返そう」という強い気持ちで臨んでいた。

3回、松井がセンター返しで出塁すると、嶋がエンドラン。打球は一塁手ロペスの頭上を越えて一、一二塁と、チャンスが広がった。

星野監督がシーズン中、7番・松井、8番・嶋の打順を崩さなかったのには理由がある。松井が塁に出れば、右打ちの上手い嶋を使って、様々な仕掛けができるからだ。「二人だけで決めた」というサインでエンドランをかけたこともあった。

一死後、岡島は「コントロールのいい内海」に対し、積極的に打ちに出た。2球目を三遊間に流し打って、松共が生還し、先制。さらに銀次がライト前に運び、追加点を挙げる。銀次は、この日の第1打席の二塁ゴロで、内海に4打席連続の内野ゴロを喫していた。ここで思い出したのが、ジョーンズの「目線を上げたらいいよ」という言葉。その助言通りのバットコントロールが呼んだ2点目だった。

下位でチャンスを作り、上位で得点を挙げる。これこそが今季の楽天の勝ちパターンだ。9回に同点に追いつかれるも、延長10回、2点を奪って突き放し、日本一に王手をかけた。星野監督が「本当にしびれるような試合だった」と振り返った一戦の重みを、聖澤はこう振り返った。

「シリーズが始まるまでは〝強い巨人〟という意識があったけど、全員が〝いける〟と感じたと思う」

嶋は、こんな思いを胸に、東京を後にした。

「不敗の田中もいるけれど、自分たちには絶対の東北のファンがいる――」

第6戦、楽天の先発は不沈艦・田中。この大事な一戦で、楽天はまたもや先取点を奪った。2回1死後、巨人の先発・菅野に対し、枡田が8球粘って四球で歩くと、松井は6球目を打ってライト線に運ぶ。これがエンタイトルツーベースとなり、二、三塁。この時、次打者の嶋は打席に入りながら考えていた。自分に対する配球が内角に偏っていることに気づいていたのだ。「阿部(慎之助)さんは内角を攻めてくる」と読んだ嶋は、4球目の内角球を思い切り引っ張った。強い打球が三塁に転がる。走者の背中に送球が当たるのを恐れた村田修一は本塁へ投げられず、先制点が入った。さらにロペスのトンネルで2点目も入り、誰もがこれで楽天の日本一は決まりと思った。

だが5回、そのロペスに一発が出て試合は振り出しに。さらに田中は連打を浴び、まさかの逆転を許してしまった。打たれた田中のもとにマギーが歩みより、何度も何度も首筋をさする。それは、野手たちがこれまで抱いてきた田中への思いを表しているかのようだった。

敗戦後のロッカールームで、主将の松井は「田中の160球に報いるため、明日は絶対に勝とう」とだけ言った。銀次も「自分が絶対に打つ」と誓ったという。嶋は「完投してくれたことで、よーし、という気持ちになったかもしれません」と、のちに振り返った。

第7戦は総力戦だ。勝ちたいという思いが強い方が勝つ。

「どんな形でも欲しい」と松井が話していた先制点が、初回、坂本勇人のエラーという思わぬ形で楽天に転がり込んだ。「立ち上がりをつぶせ」というデータ通りの攻撃で先発の杉内を攻めたて、続く2回にも嶋の四球と岡島の二塁打で1点を追加。さらに4回には、牧田がソロ本塁打を放ち、試合の主導権を握り続けて、3-0で快勝。ついに悲願の日本一を達成した。

今回のシリーズで、楽天の打者は自分のやるべきことを理解し、それを徹底していた。それはセンター中心、逆方向へのバッティングであり、データに忠実な投手攻略法だった。ジョーンズ、マギー両外国人の「フォア・ザ・チーム」の精神をサポートしたのは、メジャー帰りの松井だった。岡島、藤田、銀次の左トリオは、つなぎのバッティングを見事に実践。そして嶋や聖澤は、何とかして出塁を、という気持ちで打席に立ち続けた。投手ばかりが目立つ楽天だが、彼らに〝後につなぐ〟気持ちがあったからこそ勝ち取れた日本一だった。

野球を始めてから今まで一度も日本一になったことのなかった松井は、9回の守りについた時、体に震えが来たという。そして試合後、後輩たちにこう言った。

「なっ、重苦しい試合が続いたろ。こうやって強いチームになっていくんだよ」

それを聞いた全員が、黙って領いた。

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