ハードロック&ヘヴィメタル特集

~今回の「Soul of Metal」~
(コラムに出てくるバンド・情報の予備知識)

【EUROPE】

スウェーデンといえばABBA。そのイメージを覆した美男子(イケメンなんて言葉はなかった)が揃ったバンド。クラシック音楽のような旋律と、相反する激しさはやんちゃな貴公子のイメージ。3rdアルバム「FINAL COUNT DOWN」で世界的に知られることになった。

【YNGWIE MALMSTEEN】

ハーモニックマイナーを中心としたクラシカルな音階を使用した速弾きで、リッチー・ブラックモアから続くクラシカルなメタルの新しいスタイルを確立させた。20歳そこそこの頃母国スウェーデンからアメリカに渡り、そのプレイの速さ、ギターへの情熱ですぐに他のギタリストからも一目置かれる存在となった。

【DOKKEN】

ドン・ドッケンの個性的な声と最高のギターヒーロー、ジョージ・リンチの鬼気迫るプレイがぶつかり合ってドッケンサウンドの根幹が構築された。それは哀愁と情熱。ただ、ジェフ・ピルソンとミック・ブラウンのリズム隊とコーラスがなくてはあのサウンドは再現できない。アルバム「UNDER ROCK AND KEY」の完成度の高さはHR/HMの必ず聴くべき1枚だ。

【ANVIL】

カナダのメタルバンド。「Metal on Metal」は多くのメタルファンが知ることとなった曲だが、その後ワールドワイドな人気を保持できずに小さいライブハウスでライブを行うなど不遇の時代を過ごす。2009年に彼らの生きざまを赤裸々に描いたドキュメンタリー映画「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」の公開によって再びブレイクすることとなった。

「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」 公式サイト
http://www.uplink.co.jp/anvil/

【HEAR ‘N AID「STARS」】

ロニー・ジェイムス・ディオの呼びかけにより、LAを中心にしたメタルミュージシャンが集まって行ったアフリカ飢餓難民救済のプロジェクト。ミュージシャン同士が自分の持ち味を生かして競い合ったそのプレイは凄まじい。亡くなったロニー追悼の意味で、他の国でもメタルミュージシャンが集まってこの曲をカヴァーする動きがあり、Youtubeに公開されている。日本でもカヴァーされることを期待したい。

【SUPER ROCK FESTIVAL ‘84】

ANVIL、BON JOVI、SCORPIONS、WHITESNAKE、MICHEL SCHENKER GROUPの5バンドが出演した恐らく日本初のHR/HMフェス。名古屋、福岡、大阪2デイズ、埼玉2デイズで行われた。ボン・ジョヴィの手書きフラッグが「ボソ・ジョヴィ」となっていたのや、埼玉なのに東京とMCで言っていたところは、当時のメタルファンの間では突っ込みどころだった。

【GARY MOORE】

2011年に亡くなった魂でギターを弾くギタリスト。武道館公演を行うほどの人気があったのは、ブルースを基本とした幅広いプレイがメタルファンだけでなく、多くの人々を魅了したからに他ならない。特にバラードでの泣きのフレーズは心深くまで染み渡る。

第四回 人生を変えたメタルバンド

最近、Youtubeで80年台~90年代のメタルばかり聴いて一人ニヤニヤしている緒方です。今回は長いです。電車の中など、お暇なときにどうぞ。

ジャーマンメタルに続き、北欧メタル(スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなど)も注目され始めました。その筆頭はご存じスウェーデンの「EUROPE」。「イッツァファイナーッカウッダーン」ですよ。美男子揃いです、反則です。スウェーデンには他にMADISON、HEAVY ROAD、YNGWIE MALMSTEEN、ノルウェーにはTNT、デンマークにはPRETTY MAIDS、ROYAL HUNTなど日本人でも有名なバンドが多数いました。

そのサウンドは特徴的で、共通しているのが美旋律、透明感。

TNTはメタル同級生の「かふちゃん」という男子のオススメでした。彼は他にもRIOTやRATTなども勧めてくれたりして、なかなかのメタル耳を持っていたのです。かふちゃんの家に仲間で集まっていた時に聞かせてくれたんですよね、TNTの「Knights of the New Thunder」を。全体的に高域が強調されててシャリシャリしているというか、初めて聴く感じのサウンドでジワジワ来たのを覚えてます。

http://www.tnttheband.com/

MADISONはヴォーカルのゲラン・エドマンの、思わずシャープしてしまいそうなハイトーンが魅力でした。TNTのトニー・ハーネルもそうですが、北欧にはハイトーンヴォーカリストが多いです。MADISONのアルバムを爆音で聴きながら夜のドライブ。メタル野郎ばっかりでよく夜の阿蘇をドライブしてましたよ。前が見えないほどの霧が北欧メタルは良く合います。ゲラン・エドマンは後にYNGWIE MALMSTEENのRISING FORCEに加入してアルバム「ECLIPSE」を世に残します。イングヴェイファンの間では評価が高くないのですが、僕は元々ゲラン・エドマンが好きだったのでアルバムが出ると聞いて震えましたよ。実際1曲目「Makin’ love」(直球なタイトル)でゾクゾクしましたからね。ジャケットもカッコいい!!

PRETTY MAIDSはちょっと他の北欧メタルとは印象が違いますね。ジャーマンに近いというか、骨太のサウンドとヴォーカルで攻めまくります。が、煌びやかなキーボードとバラードはやはり北欧、美しいメロディーで泣かせます。このバンドをよく聴いていたのはかなり時代があとで、20代半ばですね。それにしても最新のMVでの楽曲、相変わらずハード&ヘヴィーでゾクゾクします。

Pretty Maids "Kingmaker" (Official Music Video)

これらのバンドの中で異質なのがHEAVY ROAD。何とも言えない、届かない感じがクセになってました。北欧らしからぬ野太い声を空間系のエフェクトで北欧らしくしようとする感じもどこか不器用で好き。先日このコラムのために久しぶりに聞いたら、ジュワーっと記憶が蘇ってきて嬉しかった。

そんなこんなで北欧メタルもよく聴いていたのですが、やはり一番聞いていたのは「EUROPE」。

1stアルバム「幻想交響詩」は邦題がピッタリで、その一言で音楽性を表現してますね。ハイが強調される北欧メタルと違ってこもっている暖かみのある音で、更に全体的に不安定な部分が壊れやすさを表現しているようでした。ジョン・ノーラムのギターソロのメロディーなんて日本人好みのわびさびがありつつテクニカルでもあり。弦飛びフレーズの入れどころもツボ。ハイポジションの低音弦からフロントで上昇し、リアに切り替えての高音弦の早弾きとか、シングルコイルの良さを生かしまくってて気持ち良すぎ!

John Norum with Europe: "In the Future to Come" live (1983)

ヴォーカルのジョーイ・テンペストは、3rdアルバムの「ファイナル・カウントダウン」で歌唱力が完成されたという感じです。が、それまでの2枚が物足りないわけではなく。むしろその方が好きという人も多いと思います。曲調が変わったのもありますが、勢いは物凄いですからね。言うまでもなくファイナル・カウントダウンは世界的なヒットとなったのですが、ここでジョン・ノーラムは脱退してしまいます。確かにあのアルバムはギターが全面に出てないですからね、気持ちはわかります。でも世界的な地位を捨てての脱退ですから大いなる決断ですよ。

Europe - The Final Countdown (Official Video)

そんなジョン・ノーラムはマディソンのゲラン・エドマンとソロアルバムを制作。ファイナル・カウントダウンのオリジナルバージョン「Love is meant last forever」を世に出す訳ですが、これがまたカッコいいのですよ。甲乙つけがたしです。その後、ジョン・ノーラムはドン・ドッケンやグレン・ヒューズとやったりしつつ、ヨーロッパに再加入。現在はファイナル・カウントダウンの頃のサウンドに重さと深さを加えたような楽曲をリリースしているのです。記事がジョン・ノーラム寄りなのは大好きなギタリストなのでご容赦ください。彼の生き方は当時心底カッコいいと思ったんです。もちろん今も思ってます。

Europe - Last Look At Eden (Official Video)

ジョン・ノーラムとくれば、やはり同じスウェーデンの出身のギタリスト「YNGWIE MALMSTEEN」を語らない訳にはいきません。というか、語りたい!当時、雑誌でライターやミュージシャンの間で速弾きがものすごいと評判で。スティーラーの音源を聴きたくても入手できないまま時が過ぎていったのです。

そんな中、音楽雑誌に広告が掲載されてました。

「電話でイングヴェイのプレイが聴ける!!」

これは画期的でしたね。何度も書いてますが、当時は音を聴くのにも一苦労でしたから電話を使うというのはファインプレイ!と思いましたよ。特に植木町のような場所では。で、かけましたよ。ワクワクしながら。どんだけ凄いんだ?と思いながら。これだけハードルが上げられると普通は「おお、評判通り凄いね~」ぐらいが最高位置になるでしょ?ではイングヴェイはどうだったかというと。曲はALCATRAZZ(ヴォーカルはグラハム・ボネット)のJET TO JET。

イントロ「えっ!おわ!ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」。

いやいや、レインボーのスポットライトキッドみたいなんて言っていてはメタルは聴けませんよ。電話口で思わずのけぞるほどにドキドキしましたね。もうしょっぱなからヤバかった。で、問題のギターソロに入る訳です。JET TO JET~♪とグラハムのシャウトの後ブレイク。その間隙をぬって、聴いたことないような音が耳に響いてきた!!!!!!

「はっ~~~~~~~~~あああああ!?なんやこれは~~~~~~~?これギターなんかい~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~??早回しじゃないんかいな!!ス、ス、ス、ス、凄すぎる」驚愕、ブルブル。

1回目は訳がわからないまま終わってしまって。その後何回も電話口で吠えながら聴きました(坊主頭で)。速すぎてギターだとは思えない音。しかもハモってる。エドワード・ヴァン・ヘイレンのライトハンド奏法やボリューム奏法、ハーモニクスは遡って聴いたのもあって「へぇ~凄いなやっぱり」だったんですが(リアルタイムだと違ったと思う)、イングヴェイのこのプレイは僕の中のギターの概念を変えましたね。イングヴェイの何が好きって、速弾きはもちろん、そのビブラートとチョーキングにおける目的の音への到達タイミングですよ。もう、気持ち良くて気持ち良くて。発売されてすぐにアルカトラスのNo Parole from Rock 'n' Rollを購入。

1曲目のポップなキーボードにはあれ?と思ったけど、イングヴェイはイングヴェイ。グラハムはグラハムでした。音符の嵐とパワーハイトーン。奇跡的に中野サンプラザでのライブビデオを入手したんでみんなで鑑賞会。僕の周りのメタルファンは100%男子だったんで(ホントに100%男子だった)、ライブも男臭いんやろねーってみんなで話してたんです。するとなんということでしょ~めちゃくちゃ女子がいるじゃないですか!

「東京のおなごはやっぱ違うとばいね~」

東京に行きたい・・・坊主頭のメタル少年は不純な動機ながら強くそう思ったのでした。

ライブでのプレイはもう、これでもかっ!てぐらいに弾きまくってて。パフォーマンスも含めて歌を大事にとかそんな大人なことを考えてないのは一目瞭然。オレがオレが。くらえっ!ってぐらいに弾きまくる。自己主張が大爆発したような感じ。でも実力があるからそれがメチャクチャかっこよくて。一気に惚れました。グラハム・ボネットを踏み台にしてアルカトラスを脱退したイングヴェイは、やりたいことをやるためにソロアルバムを制作するのです。この辺の生き方も好きですね~。その自分に正直すぎる生き方は真似できないからこそ憧れですよ。※グラハムはその後やはりスーパーギタリスト、スティーブ・ヴァイを加入させるのです。贅沢すぎるギタリストラインナップですよ。いや、それだけグラハムが素晴らしいヴォーカリストなのです。

(スティーブ・ヴァイ時代のアルカトラス)
Steve Vai Alcatrazz Jet to Jet YouTube

ソロアルバム「Rising Force」は、FMで数曲特集でオンエアーされたので、もうかぶりつきで聴きましたよ。この潔さ、気持ち良すぎでしたね。ボリューム奏法の速さもマジかいな?と。当然ですがクラシカルな色が前面に出ていてクラシックへの興味も湧いてきたから不思議ですわ。

Yngwie Malmsteen - Black Star

その後、「Marching Out」「Trilogy」「Odyssey」「Eclipse」とリリース。オデッセイはジョー・リン・ターナーをヴォーカルに迎えて制作されたのですが、まさにレインボーの再来?って感じでした。グラハムの時よりもレインボーを感じました。ジョーの存在感ってすごいですね、はい。イングヴェイに負けてないですもん。

がっ!僕的にイングヴェイのベストアルバムはトリロジーです。エクリプスは前述のゲラン・エドマンがヴォーカルなので悩みますが、楽曲とミックスの良さでトリロジーを選びます。「Trilogy Suite Op:5」は、速弾きギタリストの登竜門的楽曲で、もちろん僕もコピーしましたよ。が、解放弦を使ったフレーズのあとの3連ゴリ押しのとこで挫折。無理!今の若手ギタリストにも挑戦して欲しいですね~。

このアルバムでは「You Don't Remember, I'll Never Forget」「Liar」「Queen In Love」も捨てがたいですが、「Magic Mirror」が一番燃えます。このアルバム、いい曲揃いです。

イングヴェイの与える影響はとてつもなく大きくて。一時期ハーモニックマイナー主体にソロを組み立てるギタリストの多いこと多いこと。タテ方向の速弾きから横方向の速弾きへ変わったような感じですかね。それでまた上手いんですよ。一緒にやるヴォーカリストは恐らくハイトーンを求められるので大変だろうな~って思いながら色んなバンド見てました。

僕の中で、イングヴェイとF1のシューマッハが重なるんですよね。速さを貪欲に追い求める姿勢、自分を信じる力、固い意志。憧れますよ。

Yngwie Malmsteen - Far Beyond The Sun Live (With Japan Philharmonic Orchestra)

他にはドイツのアクセプトやオランダのバロンロッホなどを聴いていましたが、遂に全面的にアメリカに目が(耳が)行きます。そう、LAメタルの台頭なのです!!(やっとここまで来た)。モトリークルー、ラット、ラフカット、クワイエットライオット、ライオット、ブラックアンドブルーなどメチャクチャ聴きまくりましたが、なんと言っても僕にとっては・・・。

「DOKKEN」

これまでのメタルライフの中で最も好きで、最も影響を受けました。何が魅力か?そうですねー、まずはジョージ・リンチの鬼のようなプレイ。そしてドン・ドッケンの軽めだけどトゲのあるハイトーンと甘い鼻に抜けたハスキーヴォイス。ジェフ・ピルソンの特徴的なフレーズ&コーラス。ミック・ブラウンの歌を重視しつつもぶ厚いプレイと迫力系のコーラス。

とりわけドンとジョージが発する熱の色。全然違うんですよねー。そのせいなのか、後々犬猿の仲になる訳ですが。ドッケンを長く語ってもいいですか?

・・・。

・・・。

はい、ありがとうございます。では。

元々ドッケンはまたしてもタケちゃんが注目したバンドでした。何に注目したかというと「ドッケン」そのバンド名です。熊本弁で「しかし」や「でも」のことを「ばってん」と言うのですが、その音に似ているという理由です。音楽性は全く関係ありません。

よくわからない怪獣の手がドッケンのロゴをつかもうとしている「TOOTH AND NAIL」のジャケットをカッコいい~~!と思った豊和少年は自分で買いたかったけど、最初に「ばってん」で注目したタケちゃんに購入権を譲るのです。

みんなでレコード買いに行った日は、遅くならない限りみんなで試聴会を行っていました。その日僕は何を買ったんだろうなぁ。っつか、これまで出てきたバンドはほぼ他の友人が買ってたんで、いつも狙って買って失敗してたんだと思われる・・・。嗚呼、まるで人生のようだ。

で、「TOOTH AND NAIL」。

緊張感のあるSEからアルバムタイトル曲の「TOOTH AND NAIL」。

かっちょええ~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!! もちろん、今でも聴いてますよ。ジョージ・リンチの解放弦プレイ。難易度高かった!あ、これは時間をかけてギターのコピーしたんですが、文化祭ではドラム叩きました。超絶ハシリました。ちなみにタケちゃんがヴォーカル。

そんな僕ですが、つい最近この曲のヴォーカルをカヴァーしました。聴いてもらえば僕のドッケン愛が伝わるかもしれませんので、良かったら。

TOOTH AND NAIL(DOKKEN vocal cover)/ Toyokazu Ogata

このアルバムだけではここまでハマることはなかったと思うのですが、次のアルバム「UNDER LOCK AND KEY」で確定です。身も心も持っていかれました。最初に聴いたときに感じたミックスの素晴らしさ。もちろんカッコいい曲があってこそなんですが、曲が良くてもミックスが好みでなければ長きにわたって聴くことは出来ないのです。

「Unchain the Night」に代表されるような、きらびやかで重厚な音。なかなか融合しにくいこのふたつのポイントが絶妙なバランスで表現されていたのです。例えるなら財宝に溢れたエジプトの王宮のような(例えが変かも・・・)、近寄りがたい感じ。それでいて「It's Not Love」のような音の隙間があるホッとする楽曲もあり。

DOKKEN - "It's Not Love" (Official Video)

ドンの歌声はスリリングさを増し、ジョージのギターは野性の中に時折見せる知性がギターソロの完成度を究極なレベルにまで高めたのです。コーラスの美しさもドッケンの魅力ではあるのですが、僕的にはあまり大きな要因じゃないですね。やはりドンとジョージです。ジョンとポールのような感じです。

高校3年生にもなると、一応進学校の玉名高校。みんな受験勉強を始めます。僕は夏の高校野球選手権大会で3回戦敗退すると、しばらくは放心状態でした。メタルもそうですが、同様に野球にも情熱を注いできたので負けた後は勉強なんて手につきませんでした。ちなみに僕の時は優勝候補の熊本工業、八代一高(当時)ではなく、中学のチームメイトがいた熊本西高校が甲子園に行ったので余計に悔しくて。とはいえ、それまで女子に「坊主頭は・・・」と言われてきた髪型にもサヨナラです。

夏休みをどう過ごしたのかはあまり覚えていないのですが、多分補修授業に行ってもセミの鳴き声で先生の声が聞こえずに「なんやこれは」と思って寝てたと思います。もう野球の練習がないのでバンドに時間を割くことも出来るハズですが、受験なのでそうもいかず。

クラスメートたちが受験に向けて目の色が変わってくると、完全に取り残されました。ものすごく孤独を感じて、毎晩ジョージ・リンチのギターをコピーしてました。そうするしか気持ちを発散できなかったんですよね。他にもランディー・ローズやジェイク・E・リー、もちろんイングヴェイ、ヴァンデンバーグなどもコピーしたな~。

DOKKEN - "The Hunter" (Official Video)

でもやっぱりジョージ・リンチなんですよ、ドッケンなんですよね。あの寂しさを紛らしてくれたのは!!で、そんな夜を過ごしているうちに思ったんです「プロのギタリストにオレはなる!」と。そう思わせてくれたのはドッケン。そう決意してからは毎晩6~8時間ギターの特訓!!

でも・・・。

高校最後のライブはドラムというこの矛盾。さらにプロのギタリストになると思いながらも大学進学後はヴォーカルを担当する。なんなんだ。

大学受験(鹿児島大学理学部)に行く時も「UNDER LOCK AND KEY」を終始聴いてました。受験勉強の時、手に持っていたのはペンではんなくピック。もちろん不合格。予備校に行く選択肢もあったのですが、絶対にギターばかり弾くとわかっていたので熊本商科大学(現熊本学園大学)に進学。

地に足が着かないまま、大学1年のとき、「BACK FOR THE ATTACK」がリリースされます。

1曲目「Kiss of Death」のリフを聴いたとき、正直「あれ?」と思いました。前作で完ぺきなまでの音作りとプレイを展開していただけにものすごくラフに感じたのです。ドッケンに抱いていたイメージと違ったというか。でもアルバムを通して聴いてわかったんです。このアルバムは本能で制作されたんだと。

当然、ドンとジョージの確執が影響を与えたと思います。互いにぶつかり合ってるんです。調和から激突、王宮からストリートのようなイメージ。生々しい演奏と歌がそこには存在してたのです!

そう理解してから聴くKiss of Deathは、相当な破壊力を持っていることに気づきました。エンディングの一発触発の恐ろしいまでの緊張感。「Standing in the Shadows」は「It's Not Love」を激しく感情的に表現したような曲だし、「Mr. Scary」でのジョージのギターは凶器のように思えます。

破裂しそうな思いを見事に爆発させたアルバムです。

「Lost Behind the Wall」と「Cry of the Gypsy」、そして「Dream Warriors」が僕が燃える曲。いずれもミディアムテンポなのですが、そのグルーブの中に火傷しそうな思いを感じます。Lost Behind the WallとCry of the Gypsyのギターソロは心底震えました。

人生の目的を見失ってふわふわしていた僕は、もう一回しっかり夢を追えと厳しく叱咤されたような気持ちでした。

「UNDER LOCK AND KEY」と「BACK FOR THE ATTACK」。

この2枚のアルバムは僕の人生を変えたアルバムであり、孤独から救ってくれたアルバムです。

だから、ドッケンは僕の人生の中でとても大事なバンドなんです!!

DOKKEN - "Dream Warriors" (Official Video)

今回コラムに書いたイングヴェイとジョージ・リンチ、ニール・ショーン、ヴィヴィアン・キャンベル、ロニー・ジェイムス・ディオ、ロブ・ハルフォード、ドン・ドッケン、ポール・ショティーノ、ジェフ・テイトなどそうそうたるメンバーが参加したアフリカ飢餓難民救済のプロジェクト、HEAR ’N AID「STARS」。メタル版We are the worldと言われるような、豪華な参加メンバーです。

この制作ドキュメントビデオは、自分史上最も多く見たビデオです。もう、お手本のかたまりで研究しまくりました。ヴォーカリストでビビったのはポール・ショティーノ(ラフカット)とジェフ・テイト(クイーンズライク)。どうやってあの声を出してるのか当時は見当もつきませんでした。ドン・ドッケンがヴォーカルディレクションでロニーから「ちょっとスムーズすぎるかな」と言われて「何でスムーズじゃダメなの?」とやり取りの後、「発売はいつ?」というジョークを返すところなどはそれぞれのプライドが垣間見えて面白かった。これだけのミュージシャンをまとめるロニーは大変だったろうな~と思いますよ。

ギタリストはやはりイングヴェイとジョージ・リンチ。特にジョージの感情の赴くままにプレイしたテイクには背筋がゾワゾワ(メイキングの方)。この時イングヴェイはまだ若くて生意気盛りだったから、彼がものすごいプレイを弾いている後ろで「うわ~っ!」って頭を抱える素振りを見せるスタッフがいるのも面白い。ニール・ショーンの後ろでそれは出来ないでしょ。

万が一、まだ見たこない人がいたら絶対に見て欲しいと思うのですが、残念ながら公式の動画は見つけられなかったので、Youtubeで「Hear N' Aid - Stars [Full LD Version]」で検索して確認してください。47分間、メタルファンなら震えっぱなしになります。

もうひとつ、高校時代に書いておかなければならないこと、それは・・・。

日本初の(多分)HR/HMフェス、「SUPER ROCK FESTIVAL '84 IN JAPAN」出演はANVIL、BON JOVI、SCORPIONS、WHITESNAKE、MICHEL SCHENKER GROUP。

(考えられないですが、この中で聴いたことなかったのがBON JOVIという事実)

1984年8月6日(月)。高校2年の緒方くん、これはもう、行くしかないでしょ。チケットは販売開始と同時に電話!電話!電話!したのはタケちゃん。メタル仲間4人(緒方、タケちゃん、マップ、かふちゃん)のチケットをGET!!でかしたタケちゃん!!

夏休みの補習を午前中で抜け出して、いざ!福岡。もちろん着替え持参。が、西鉄がよくわからずに普通列車に乗ってしまい、「何か遅かね~」と気付いたのは久留米あたり。当時はもちろん乗換案内的なアプリはないので時刻表で調べるわけです。でも間違う植木町+玉名郡の4人。そのおかげで柳川の女の子はとてもカワイイんだと知れたので良かったと納得。特急に乗り換えてメタル高校生4人(うち坊主頭1名)は、おのぼりさん状態で福岡に到着。地図を見ながら福岡スポーツセンターへ。

すげーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!SAXONみたいな人たちがたくさんいる!!!!!!

植木町、玉名市では気付かなかったけど、日本にもHR/HMな人がたくさんいると知りました。カルチャーショック!!

会場内に入ると、ワクワクが頂点に!!席はS席でしたが2階。ステージ真正面だけどメチャクチャ遠い。あいたす、こぎゃんとこデヴィカバが米粒にしか見えんばい!!と落胆。だがしかしっ!ステージではもうすぐで憧れのミュージシャンたちがライブをするんだという期待感ですぐに復活。

ANVILとBON JOVIのどちらがオープニングだったか記憶が定かではないですが、その2バンドまではきちんと自分の席で見てました。

ANVILは映画「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」が公開され、僕も見ました。当然です。給食センターで仕事しながらバンド活動を行うギター&ヴォーカルのリップス。家族からは早く辞めて家族を大切にして欲しいと思われているのですが・・・。共感するところばかりです。僕から見れば、リップスは家族を大切にしてます。でもやはり気持ちだけでは生きていくことはできません。お金が必要です。難しいですね。多くの夢見るバンドマン(だけじゃなく、漫画家、俳優などさまざまな夢追い人)は、いつかその壁に直面します。リアルです。もちろん、メンバー間の関係もリアルに描かれてます。最後のラウドパークの映像のところで泣きましたよ。メタルファンじゃなくても見ておきたい映画ですね。

BON JOVIはよくわからなかったので(もったいない!)座って見てました。なんだかキラキラしてたな~っていうのを覚えてます。いかんせん、アドレナリンが噴出するにはステージから遠すぎた・・・。

バンド入れ替えの際にトイレに行ったんですが、その時に気付いたんです。

「あら?これ前に行けるとじゃなかろか?」

今のフェスと違って1階にもパイプ椅子が設置されてましたが、多くの人が同じように前に行ける!と気付き、会場全体がそんな空気になってました。おのぼりさん4人は、あ~れ~お殿様~って感じで5列目ぐらいまでその波に流されてしまいました(こんなん、今では絶対に怒られて出入り禁止ですよ)。数分後かなりの人が前方に押し寄せてパイプ椅子に乗ってました。

もう、その後は狂喜乱舞。ライブの内容は良く覚えていませんが、ホワイトスネイクの音圧というか、ジョン・サイクスのグリスダウンの音がものすごくカッコ良かったのが印象に残ってます。スコーピオンズのおなじみの肩車パフォーマンスも燃えました。

記憶に残っているといえば、良くも悪くもMSGに急遽ヘルプで参加したヴォーカルのレイ・ケネディーですね。最初そのニュースを聞いたとき、「えっ?!あのレイ・ケネディーがMSGで歌うの?」と思いました。様々な意見がありますが、ここでは多くは語らないことにします。

熱狂のライブ後、多数の壊れたパイプ椅子が・・・。今考えるとアリーナに椅子とか危ないし、ライブって感じがしないですね。

今この公演を行うとしたらチケットはいくらになるんだろう?と考えてしまうほど豪華なランナップでした。入れ込み過ぎてライブ自体の記憶があまりないのが残念ですが、メタル仲間4人と学校抜け出して見に行った人生初のメタルフェスは鮮明に心に刻まれてます。

最後に恋とメタルのお話。高校1年から3年間、卒業してからもしばらく好きだった女子がいました。中学の時に付き合った子はいたけど、厳密にはこれが初恋かなと思います。3年間ずっと片思いでした。その子はメタル仲間の一人のことが好きというなんともマンガによくあるような展開でしたよ。頑張って告白した時にそう言われて、ショックなんてもんじゃなかったですね。そんな彼女も片思いで。じゃ、片思い同志くっつけばいいじゃ~ん!と思うかもしれませんが、告白はその1回きり。メタルの曲とかを多重録音でDJ風に紹介したテープを渡したりという痛いプレゼントはあげてましたが。プレゼントもメタル推しの自己中的な感じだったから、今考えればそもそも無理でしょって感じです。ちなみに彼女はサザン・オールスターズのファン。

そんな継続的な失恋(?)を癒してくれたのは、ゲイリー・ムーアでした。「Corridors Of Power 邦題:大いなる野望」に収録されている「Falling in love with you」。胸が痛む度にこの曲を聴いていました。コード進行がお洒落というか、大人というか。このアルバムはベースが二ール・マーレイ、キーボードにドン・エイリー、そしてドラムにイアン・ペイスという素晴らしいラインナップだったので演奏も素晴らしく、ベッドに横たわってこの曲を聴く度にジワ~ときてました。というか、ある時期は毎晩でしたね。

大いなる野望は名盤です。END OF THE WORLDの冒頭のギターソロ。コピーしました。これを見ている人の中にも「オレもコピーしたぜ!」って人、結構いると思います。失恋の痛手を癒した後は、女なんてどーでもいいぜ!とベッドから飛び起きてEND OF THE WORLDを弾く!!で、翌日また胸が痛くなりFalling in love with youを聴いてベッドから飛び起き、END OF THE WORLDを弾く!!で、また翌日・・・・ゴニョゴニョ。

僕の青春の1ページは、ゲイリー・ムーアと共にあります。

さて、かなり長くなったので今回はここまで。次回は高校卒業後のバンド活動とメタル。メタルの聴き方も大きく変わってきましたし、メタルから派生した様々な音楽が生まれました。その辺りのお話です。

では酒呑みの時のネタをどうぞ。

「似てるリフの曲」

これはたくさんありますね、あの曲とあの曲。それにあの曲も。でも似てるからと否定的になっていてはメタルは語れません。似ててもカッコ良ければいいのです!!

では次回お会いしましょう~♪

緒方豊和

本名:緒方豊和
年齢:49歳
職業:イベント制作、ヴォーカリスト
経歴:ASH(熊本)→MAJESTY(BMGビクター)→CRAZE(テイチク)
→Thumb Up Boys(REALROX)→tubTRaCK(NINE STATES 自主レーベル)
現在はアイドルユニット「タタカッテシネ」など、歌詞、楽曲提供や歌の指導を行う。
HR/HMが緒方豊和という人間にどのような影響を与え、人生がどう狂ったか、ポジティブなものに変わったかを通して、その魅力を伝えていきたいと思います。読んでもらって「そうそう、そんな時代だった」みたいに思っていただければ幸いです。

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