二宮清純コラムオリンピック 奇跡の物語
~ビヨンド・ザ・リミット~

2026年2月16日(月)更新

銅・高梨沙羅「一番嬉しいメダル」
張家口の失意、プレダッツォの歓喜

「今までとったメダルで一番嬉しい」。高梨沙羅選手の涙ながらの言葉に、胸を打たれた人は少なくなかったはずです。2月11日(日本時間)、ジャンプ混合団体で、日本(高梨選手、丸山希選手、小林陵侑選手、二階堂蓮選手)は、同種目初の表彰台に立ちました。

ミラノ・コルティナ2026オリンピックの放送日程はこちら

4年前の悪夢

 高梨選手は、今回の銅メダルが、五輪では自身2つ目のメダルでした。前回は2018年平昌大会女子ノーマルヒルでの銅メダルです。

 世界選手権でも高梨選手は何度も表彰台に上がっています。2013年にイタリアのヴァルディフィエンメで行なわれた世界選手権の混合団体では、伊藤有希選手、伊東大貴選手、竹内択選手とチームを組み、見事金メダルに輝きました。

 このように、多くの栄誉に浴してきた高梨選手が、「今までとったメダルで一番嬉しい」というのには理由があります。

 それは4年前の北京(張家口)でスーツ規定違反となり失格、彼女は「ジャンプを諦めることまで考えた」ほど失意に暮れました。

 1本目、103メートルを飛んだにもかかわらず、スーツの太もも部分が2センチ大きかったとして失格処分を受け、記録なしに。それから50分後の2本目、再びスターティングゲートに立ち、98.5メートルを飛びました。

 この2本目について、彼女は「全く覚えていない」といいます。ショックのあまり、放心状態に陥っていたことが窺えます。

 ランディングゾーンで泣き崩れた高梨選手は、翌日、自身のインスタグラムに、次の一文を載せました。

<私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です。謝ってもメダルは返ってくることはなく責任が取れるとも思っておりませんが今後の私の競技に関しては考える必要があります。それ程大変なことをしてしまった事深く反省しております>

「五輪っていいな」

 この時の心境について、後に本人から聞く機会がありました。

「ウ~ン、あの時はとにかく事実でないことが、ものすごくニュースの中にあふれていたんです。またニュアンスが違っていたりとか。とにかく、自分の口から謝罪するしかないと思ったのですが、発信手段を考えた時に、私のSNSはあそこしかなかった。それで自分の文章で謝罪させてもらったんです」

 失格により、自分の記録が消されるのは仕方ないとして、<皆んなの人生を変えてしまった>ことに対する申し訳なさが、彼女を追い詰めてしまったのかもしれません。

 しかし、高梨選手の混合団体戦でのスーツは、2日前の個人戦と同じものだったはずです。「寒さが厳しい高地ゆえ、パンプアップしても筋肉が大きくならず、体重も減ったことが違反につながったのでは……」。高梨をよく知る関係者は、首をかしげて、そう語っていました。

 この時、失格になったのは高梨選手も含め5人もいました。これは異例です。高梨選手は「今回はW杯と測り方が違う。もう一度測り直してほしいと言ったが、聞き入れてくれなかった」と舞台裏を明かしました。

 後味の悪さばかりが残った4年前の大会で、私の胸にストンと落ちたのはノルウェーのブレーデ・ブローテン監督の次の一言でした。
「(FISは)オリンピック前に規定方法を明確にすべきだった」

 リベンジの舞台となったプレダッツォ・ジャンプ競技場。高梨選手は1本目96.5メートル、2本目97メートルと安定したジャンプを揃え、チームの銅メダルに貢献しました。「やっぱりオリンピックっていいな」という言葉に、実感がこもっていました。

二宮清純

関連コラム

データが取得できませんでした

J:COMなら、スポーツ番組が
こんなに楽しめる。

  • 圧倒的なスポーツ番組数、
    多彩なスポーツ専門チャンネル
  • テレビでも、スマホでも、
    スポーツ中継が楽しめる
  • 自動録画、リモート録画予約、
    タイムシフト視聴で
    大事な瞬間を見逃さない
PageTop