二宮清純コラムオリンピック・パラリンピック 奇跡の物語
~ビヨンド・ザ・リミット~

2024年8月1日(木)更新

“国防ブライアン”の神セーブ
スペイン戦でも日本を護る!

 1968年メキシコ大会以来、56年ぶりの表彰台どころか、金メダルも夢ではありません。そんな期待さえ抱かせるサッカー男子U-23日本代表の活躍ぶりです。

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余裕のウインク

 日本は初戦、U-23パラグアイ代表に5対0、2戦目マリ代表、3戦目イスラエル代表に、ともに1対0。勝ち点9のD組1位でグループリーグを突破し、ノックアウトステージ(トーナメント方式)進出を決めました。

 グループリーグでのMVPをひとりあげろ、といわれればGK小久保玲央ブライアン選手でしょう。ネット界隈では、その鉄壁の防御から“国防ブライアン”と呼ばれています。

 特筆すべきは、マリ戦での後半18分のシーンです。スコアは0対0。ペナルティーエリアほぼ正面からFWティエモコ・ディアラ選手の左足が火を噴きました。これを小久保選手は左に横っ飛びし、左手一本ではじき出したのです。もし、これが決まっていたらと思うとゾッとします。

 日本は1対0の終了間際、最大のピンチを迎えます。マリの左コーナーキック。こぼれ球を繋がれ、MFムサ・ディアキテ選手にペナルティーエリア真正面から右足を振り抜かれます。MF川崎颯太選手が身を挺してスライディングでブロックしましたが、シュートは川崎選手の左ひじを直撃。プレーオンを選択したレフェリーですが、2分後に映像を確認し、マリにPKを与えました。

 ペナルティースポットには小久保選手やDF高井幸大選手らが集まりました。その際、小久保選手は白い歯を見せたり、味方選手の声掛けに対し、ウインクで返すなど、余裕を見せつけました。相手にプレッシャーを与える狙いもあったのでしょう。

 浜野征哉GKコーチは、PKを蹴るキッカーが決まる瞬間を待っていました。誰が出てくるか。PKはこれまでに得られたデータがモノを言います。

情報処理の2分間

 キッカーはFWシェイクナ・ドゥンビア選手。小久保選手が何の迷いもなく右に横っ飛びしたところを見ると、蹴るコースの情報が正確に伝わっていたのでしょう。試合が止まった2分間を、日本は情報処理に使ったのです。ドュンビア選手のシュートが枠を外れたのは、コースが読まれていることを前提に、よりセービングされにくいコースを狙ったせいかもしれません。

 そう考えると、ドゥンビア選手のシュートミスは、小久保選手のみならず、スタッフを含めた全員のファインプレーだったとも言えます。

 思い起こせば、U-23アジアカップ決勝のウズベキスタン戦でも小久保選手はPKを止めました。1対0と日本のリードで迎えた後半アディショナルタイム。DF関根大輝がペナルティーエリア内でハンドの反則を犯し、ウズベキスタンにPKを与えてしまいます。

 相手のキッカーはMFウマラリ・ラクモナリエフ選手。延長突入止むなしの場面で、小久保選手は193センチの長身を水平にして右に飛び、両手でボールを枠の外にはじき出したのです。

「細かいところの積み重ねが結果に出ました」

 小久保選手によるとテクニカルスタッフの分析で「15番」の選手の蹴る位置を、あらかじめ把握していたというのです。そうでなければ、いくら身体能力の高い小久保選手でも、あそこまで迷いなく飛ぶことはできなかったでしょう。

 パリに話を戻します。日本は8月2日深夜(日本時間)にU-23スペイン代表と戦います。東京大会では準決勝で苦杯をなめさせられた宿敵です。天下無双の“国防ブライアン”が日本のゴールを守ります。

二宮清純

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