二宮清純コラムオリンピック・パラリンピック 奇跡の物語
~ビヨンド・ザ・リミット~

2024年8月2日(金)更新

スケボー“革命広場”で日本選手躍動
ストリートカルチャーの魅力を発信

 五輪でメダルを量産する柔道、体操、レスリング、水泳(主に競泳)の4競技を1988年ソウル大会競泳男子100メートル背泳ぎの金メダリストで、初代スポーツ庁長官の鈴木大地さんは「御四家」と呼んでいました。新参者ながら、メダルを量産しているのが、2021年東京大会から正式競技に採用されたスケートボードです。

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堀米雄斗連覇達成

 東京大会では3人の金メダリスト(男子ストリート・堀米雄斗選手、女子ストリート・西矢椛選手、女子パーク・四十住さくら選手)とひとりの銀メダリスト(女子パーク・開心那選手)、ひとりの銅メダリスト(女子ストリート・中山楓奈選手)が誕生しました。西矢選手にいたっては13歳。金メダリストの日本人最年少記録を塗り替えました。

 このメダルラッシュに影響を受け、パリを目指し始めたのが今回女子ストリートで金メダルを胸に飾った14歳の吉沢恋選手です。東京大会の選考レースに出ていた赤間凛音選手は、15歳となった今回銀メダルを獲得しました。

 男子ストリートでは、堀米選手が大逆転で連覇を達成。22歳の白井空良選手も4位入賞を果たしました。

 言うまでもなくスケボーは、ストリートカルチャーから出発しています。IOCが東京大会でスケボーやサーフィン、スポーツクライミングを正式競技として採用した背景には、若年層の五輪離れを食い止める狙いがありました。

 パリ大会でスケボー会場となったコンコルド広場は、フランス革命で王政が廃止され、ルイ16世や王妃マリー・アントワネットが処刑された歴史上の舞台でもあります。

 かつては「革命広場」と呼ばれていましたが、革命後に「コンコルド広場」と改められました。フランス語で「調和」や「和解」を意味するようです。

 このコンコルド広場ではスケボーの他、ブレイキン、BMXフリースタイル、3X3バスケットボールなどの、いわゆるアーバンスポーツも実施されます。新旧競技の「調和」や「融合」といった狙いがあるのかもしれません。

 話をスケボーに戻しましょう。1990年代の米ニューヨークを舞台にしたドキュメンタリー映画『ビューティフル・ルーザーズ』には、スケボー以外にも、ヒップホップ、パンク、サーフィン、グラフィティ、ファッションなどストリートカルチャーの若き担い手がたくさん出てきます。

ボーダーを超えろ!

 ルーザーズ、いわゆる“社会の落ちこぼれ”と烙印を押されたアウトサイダーの若者たちには居場所がありません。唯一、自己を表現できる場が、自由で制約の少ないストリートだったのです。

 もっと直截に言えば、彼らは国歌や国旗から最も程遠い存在でした。

 現在、スケートボード日本代表のヘッドコーチを務める早川大輔さんは1980年代後半、若者向けの雑誌『ポパイ』や『ホットドッグ・プレス』で紹介されていた記事を見てスケボーに興味を持ったといいます。

 実家は理髪店。家業を継ぐため理容専門学校に入学したまではいいのですが、どうしても本場の米国西海岸で滑りたくなり、スケートボードを1台持ってロサンゼルスのベニスビーチを訪れました。

 そこで見た風景、滑った経験が彼の人生を変えたのです。

「上野にあるムラサキスポーツの店頭に流れていたビデオの光景が、そのまま目の前にありました。空気の軽さや空の広さにも感動しました」

 要はカルチャーショックを受けたのです。

「スケートボードさえあれば、言葉はいりません。一緒に楽しむ中で自然にコミュニケーションが取れ、分かり合える。スケボーは、そういう競技なのです」

 確かにスケボーには年齢、性別、人種、民族、宗教、国境など、この世に存在するあらゆるボーダーを軽やかに超えていく競技的魅力があります。パークは日本時間6日午後から始まります。心地よい夏風がコンコルド広場には吹いています。

二宮清純

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