二宮清純コラムオリンピック・パラリンピック 奇跡の物語
~ビヨンド・ザ・リミット~

2021年8月10日(火)更新

スケボー女子、10代がメダルラッシュ
「反射神経は20代より10代」と医師

 東京オリンピックから正式競技に採用されたスケートボードで、日本の女子選手は4つのメダルを獲得しました。西矢椛(ストリート金、13歳)、中山楓奈(ストリート銅、16歳)、四十住さくら(パーク金、19歳)、開心那(パーク銀、12歳)。4人の平均年齢は15歳でした。

史上最年少金メダリスト

 これまで、オリンピックにおける日本人最年少金メダリストは1992年バルセロナ大会の競泳女子200メートル平泳ぎで優勝した岩崎恭子さんの14歳でした。「今まで生きてきた中で一番幸せです」との名セリフで一躍、有名になりました。

 その岩崎さんの最年少記録を破ったのが西矢選手です。まだ中学2年生、13歳で金メダルを胸に飾りました。

 試合中、銅メダルを獲った16歳の中山選手と談笑するシーンが見受けられました。「ラスカルの話をしていました」と西矢選手。どうやら人気アニメ「あらいぐまラスカル」の話題だったようですが、この屈託のなさは、過去のメダリストたちにはないものでした。

 スケートボードはストリートとパークの2種目に分かれます。西矢選手と中山選手が表彰台に立ったのはストリートです。こちらは、その名の通り、ベンチや手すりなどストリートを模したコース設計がされており、トリック(技)の難易度や完成度、オリジナリティなどを競うものです。

 ストリートが直線的なら、パークは曲線的です。アール(湾曲)を使っての駆け上がり、空中へ飛び出すエア・トリックが、この種目の華といっていいでしょう。

 西矢選手と中山選手が表彰台に立った9日後、パークでも日本人女子選手が活躍しました。19歳の四十住選手が金メダル、そして中学1年生の12歳、開選手が銀メダルと、いわゆるワンツー・フィニッシュを決めたのです。夏季五輪で日本史上最年少出場の開選手は、夏冬通じて日本人最年少メダリストの栄誉も手にしました。

“恐いもの知らず”がプラスに

 4人に共通して言えるのは、そのチャレンジングな姿勢です。オリンピックという大舞台であるにも関わらず、プレッシャーをエネルギーに代えて躍動していました。

 聞けば、スケートボードの世界には「10代後半は、もうベテラン」という言葉があるそうです。若いほどジャンプの高さや切れ、スピードが出やすいとの指摘もありますが、実際にはどうなのでしょう。

 スポーツドクターとして数々のアスリートを診療してきた南松山病院副院長の坂山憲史さんに話を聞きました。

「個人差はありますが、反射神経が20代より10代の方がいいのは事実です。これは神経伝導速度の検査で明らかになっています。神経には運動神経と知覚神経がありますが、神経伝導速度はこの2つを別々に測定することができます」

 さらに、坂山さんは続けます。

「若い人の方が“恐いもの知らず”といった面もある。年齢を重ね、ケガをしたりすると、どうしてもそれがトラウマとして残り、臆病になりがち。つまり、経験が邪魔をしてしまうんです。そこへ行くと、若い人には恐怖心が少ないため、チャレンジを恐れない。またケガをしても治りが早い。その意味で、この競技は若い人、特に10代に向いていると言えるかもしれません」

 付け加えるなら、パークで銅メダルに輝いたスカイ・ブラウン選手。日本人の母を持つ英国代表選手ですが、彼女も14歳。また世界ランキング1位ながら惜しくも表彰台を逃した岡本碧優選手は15歳。10代の笑顔がはじけた2021年、東京の夏でした。

二宮清純

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