二宮清純
二宮清純コラム甲子園、光と影の物語毎月第4木曜更新
2023年3月3日(金)更新

【侍Jの“球児苑”】
桐光学園・松井裕樹、大会記録の22K
10者連続三振の奪三振ショーも披露

 十年一昔(じゅうねんひとむかし)と言います。世の中は移り変わりが激しく、10年も経つともう昔のことになってしまう、という意味です。第5回WBC日本代表に選出された松井裕樹投手(桐光学園高―東北楽天イーグルス)が夏の甲子園の大会新記録である1試合(9回)22奪三振をマークしたのは2012年、2年生の夏でした。

相手は今治西

 桐光学園高(神奈川)の初戦の相手は愛媛県代表の今治西高。文武両道の甲子園常連校です。甲子園ではベスト4に過去5回(1963年夏、73年夏、77年夏、95年春、99年春)も進出しています。

 以下は2013年時点の夏の都道府県別甲子園勝率5傑です。
 1位・愛媛県 6割5分(115勝62敗1分)
 2位・大阪府 6割4分9厘(155勝84敗)
 3位・神奈川県 6割3分2厘(117勝68敗)
 4位・和歌山県 6割1分8厘(118勝73敗1分)
 5位・広島県 6割1分3厘3毛(111勝70敗1分)

 愛媛県は1953年の第35回大会以来、60年も首位の座を守り通していました。

 ところがその後、ついに2位・大阪府に逆転を許してしまうのです。首位奪還に最も貢献したのが、2008年以降、4度も頂点に立った大阪桐蔭でした。

 いくら凋落気味の愛媛県勢とはいえ、2013年時点の勝率は、まだ全国トップです。それゆえ、松井投手には「相手は試合巧者。小技を使ってきたり、球数を多く投げさせようとするんじゃないか」との警戒心があったようです。

 初回、松井投手は1番・池内将哉選手、2番・中西雄大選手を連続三振に切ってとります。最も警戒する3番の笠崎遥司選手には四球を与えましたが、4番・末広朋也選手を三振に仕留め、上々のスタートを切ります。

 2回に入り、松井投手はさらにギアを上げます。5番・中内洸太選手、6番・東福拓朗選手、7番・曽我部祥太選手を連続三振。6つのアウトを全て三振で奪い、早くも奪三振記録更新の期待が高まってきました。

打っては3ラン

 これまでの夏の奪三振記録は1試合19個。2000年に浦和学院高(埼玉)の坂元弥太郎投手、2005年に大阪桐蔭高の辻内崇伸投手らが記録していました。

 3回にひとつ、4回に2つ三振を取り、ここまで9個。今治西は「低めのボールになるスライダーには手を出さない」作戦でしたが、ストライク、ボールの見極めができなかったようです。「サウスポーで、あれだけ切れのあるスライダーを投げるピッチャーは四国にはいなかった」と、ある選手は語っていました。

 打っても松井投手の独壇場でした。5回裏、2死一、二塁の場面で中内洸太投手の初球、高めのストレートをライトスタンドに叩き込んだのです。値千金の3ラン。これで5対0。勝負は、あらかた決まったように見えました。後半戦の興味は、ノーヒットノーラン、そして奪三振の新記録なるか――。

 6回、無死一塁から、松井投手は9番・檜垣孝明選手に、この日初めてヒットを打たれます。しかし、これで逆にプレッシャーが取り除かれたのかもしれません。6回1死から9回2死まで中西選手、笠崎選手、末広選手、中内選手、東福選手、越智樹選手、伊藤優作選手、檜垣選手、池内将哉選手、吉本選手を10者連続三振に仕留めるのです。これまでの連続三振記録は1926年に和歌山中・小川正太郎投手がマークした8。27個目のアウトも三振でした。

 蛇足ですが、今治西は73年春、作新学院高(栃木)の江川卓投手から、準々決勝で20三振を喫しています。これは“怪物”の異名をほしいままにした江川投手が甲子園でマークした一試合あたりの最多奪三振数です。強豪ながらよくよく三振に縁のある学校と言えるかもしれません。

K.Ninomiya二宮清純
2024年2月22日(木)
99年夏、桐生一、群馬県勢初優勝
エース正田樹、潰れた血豆で熱投
2024年1月25日(木)
中京商、松山商ら名門追い詰めた
台湾の強豪・嘉義農林学校とは?
2023年12月28日(木)
「高校球界最高の策士」迫田穆成
広島商対作新、打倒江川卓の執念
2023年11月23日(木)
大久保博元の「怪童」球児伝説
木製バットで本塁打量産の狙い
2023年10月26日(木)
堤尚彦「甲子園は目的ではなく手段」
おかやま山陽異色監督のメッセージ
2023年9月28日(木)
北別府学「精密機械」誕生秘話
山越え自転車通学で下半身強化
2023年8月24日(木)
若松勉、“小さな大打者”の原点
65年夏、1試合4盗塁の離れ業
2023年7月27日(木)
“北国のエース”太田幸司の偉業
69夏、ブラジルで完全試合達成
2023年6月29日(木)
83夏、“事実上の決勝戦”池田対中京
中京エース野中徹博の「波乱万丈」
2023年5月25日(木)
興南、“我喜屋イズム”で春夏連覇
雨という逆境を工夫と知恵で克服
2023年4月27日(木)
高知対東海大相模の“横綱対決”
杉村繁と原辰徳が輝いた75年春
2023年3月23日(木)
95春、観音寺中央、初出場初優勝
「2軍でも勝てる相手」の快進撃
2023年3月13日(月)
【侍Jの“球児苑”】
花巻東・大谷翔平、甲子園に置き土産
大阪桐蔭・藤浪晋太郎から衝撃アーチ
2023年3月9日(木)
【侍Jの“球児苑”】
ダルビッシュ有が示した潜在能力
「柔と剛」のノーヒットノーラン
2023年3月7日(火)
【侍Jの“球児苑”】
村上宗隆「高いフライを打て!」
坂井宏安前監督、独自指導の真意
2023年3月3日(金)
【侍Jの“球児苑”】
桐光学園・松井裕樹、大会記録の22K
10者連続三振の奪三振ショーも披露
2023年2月23日(木)
73年春、怪物江川卓、全国デビュー
中尾孝義と達川光男が受けた衝撃
2023年1月26日(木)
九州学院・村上宗隆、甲子園は不発
“肥後の怪童”、10歳で広角本塁打
2022年12月22日(木)
06年帝京対智弁和歌山、世紀の乱打戦
1年生・杉谷拳士「1球で負け投手」
2022年11月24日(木)
00年夏、中京商・松田宣浩の痛恨
苦い記憶を糧にGグラブ8回受賞
2022年10月27日(木)
07年夏、佐藤由規155キロの衝撃
快速球生んだ「左手」の使い方
2022年9月29日(木)
高校時代からの高津臣吾“二番手人生”
自己改革で名クローザー、名監督へ
2022年8月25日(木)
仙台育英V、東北勢の悲願達成
小刻みリレーで高校野球に新風
2022年7月28日(木)
大阪桐蔭春夏3度Vの立役者・根尾昂
プロ4年目で投手転向は“水を得た魚”
2022年6月23日(木)
04年春、済美で2校目初出場V
ミラクル呼んだ“上甲スマイル”
2022年5月26日(木)
ドラ1引き寄せた06年センバツ
「桑田2世」PL前田健太の本盗
2022年4月28日(木)
上宮の初優勝阻止した東邦の執念
あとひとりから“大どんでん返し”
2022年3月24日(木)
甲子園20連勝中のPL破り岩倉V
神宮大会優勝校、初の紫紺の大旗
2022年2月24日(木)
ドラ9で広島入り、天谷宗一郎
指名を手繰り寄せた運命の一戦
2022年1月27日(木)
野球漫画の4番・水島新司氏死去
「ドカベン」香川伸行引退秘話
2021年12月23日(木)
都城・田口竜二、最強PL相手に力投
84年春、サヨナラ負け直後に謎の笑顔
2021年11月25日(木)
「清原和博の恋人」田子譲治
81年夏、準完全試合達成秘話
2021年10月28日(木)
04夏、大旋風巻き起こした駒大苫小牧
指揮官は道産子の意識をどう変えたか
2021年9月23日(木)
“満塁男”駒田徳広の奈良伝説
「満塁で敬遠」の真相に迫る
2021年8月26日(木)
西本聖vs江川卓、怪物に挑んだ雑草
練習試合の衝撃「ボールが浮いた…」
2021年7月29日(木)
三冠王3度の最強打者・落合博満
秋田工時代を知るライバルの証言
2021年6月24日(木)
87年、PL学園春夏連覇の立役者
橋本清「野村、岩崎への対抗心」
2021年5月27日(木)
78年夏、延長17回制した仙台育英
大久保美智男「背番号1」の呪縛
2021年4月22日(木)
雑草・川相昌弘vsスター荒木大輔
「ひょいとかわされた」苦い記憶
2021年3月25日(木)
90年センバツ準V“ミラクル新田”
史上初2本のサヨナラ弾で快進撃
2021年2月25日(木)
74年春、“さわやかイレブン”旋風
山びこ前夜の池田、奇襲で準優勝
2021年1月28日(木)
15歳と4カ月、史上最年少で夏制覇
桑田真澄、“リアル巨人の星”を語る
2020年12月24日(木)
熱血指導で横浜、80年夏の戴冠
エース愛甲支えた影のヒーロー
2020年11月26日(木)
高知、“傷だらけ”の県勢初V
主砲・有藤通世、1打席の夏
2020年10月22日(木)
甲子園ノーヒッター名電・工藤公康
運命を変えた「ドラフト6位」の謎
2020年9月24日(木)
“脅し”に屈しなかった槙原寛己
金村義明、意地の弾丸ホームラン
2020年8月27日(木)
深紅の大旗、33年ぶりの箱根越え
湘南のラッキーボーイ佐々木信也
2020年8月13日(木)
「左腕の咆哮」静岡商・新浦壽夫
「狙わなくても三振が取れたよ」
2020年8月6日(木)
池田・蔦文也“攻めダルマ”伝説
優勝メンバーが語る「野球と酒」
2020年7月30日(木)
「死球」で完全試合逃した新谷博
「狙ってたら外角に投げていた」
2020年7月23日(木)
85年春、PL清原和博沈黙せり!
2年生捕手が語る渡辺智男の凄み
2020年6月25日(木)
「昭和の怪物」江川卓、最後の夏
作新学院vs銚子商、雨中の死闘
2020年5月28日(木)
荒木大輔擁する早実を粉砕した池田
82年夏、江上光治先制2ランの衝撃
2020年4月23日(木)
「逆転のPL」の立役者・西田真二
78年夏、奇跡を呼び込んだ“読み”
2020年3月26日(木)
上宮・元木大介、隠し球で抗議電話
初甲子園で見せた「くせ者」の片鱗
2020年2月27日(木)
92年夏、松井秀喜5連続敬遠に世間騒然
野村克也が語った「私が明徳の監督なら」
2020年1月23日(木)
熊工・伊東vs八代・秋山、最終回の明暗
ライバルから同僚へ。西武黄金期を牽引
2019年12月26日(木)
習志野対新居浜商、劇的サヨナラ決着
肩を休ませ熱闘を演出した「恵みの雨」
2019年11月28日(木)
牛島と香川。偶然の出会いと早過ぎる別れ
名門・浪商を蘇らせた「黄金バッテリー」
2019年10月24日(木)
78年センバツ、津田恒美の衝撃デビュー
ライバルが見た“炎のストッパー”の原点
2019年9月26日(木)
高野連、金属バットの規制強化へ
国際大会不振の陰に“飛ぶバット”
2019年8月29日(木)
古豪高松商、伝統の「志摩供養」復活
四元号下での勝利、一番乗りなるか!?
2019年7月25日(木)
甲子園に託した夢、「沖縄と戦後」
「南九州の壁」を砕いた安仁屋宗八
2019年6月28日(金)
投手の故障予防に球数の「総量規制」
会議で聞きたい現役球児の“ナマの声”
2019年6月4日(火)
「令和の怪物」佐々木朗希、13奪三振
スピード違反!? 江川卓の牽制球伝説
2019年5月28日(火)
早くも35℃超え! 今夏も猛暑の甲子園
熱中症予防「白スパイク」の早期導入を
2019年5月17日(金)
元スカウトが断言「佐々木は大谷以上」
「令和の怪物」は甲子園に登場するか!?
2019年4月26日(金)
「奇跡のバックホーム」の舞台裏
松山商-熊本工、名勝負の分岐点
2019年4月16日(火)
163キロ「令和の怪物」佐々木朗希
侍ジャパンTD鹿取義隆が占う将来性
2018年9月4日(火)
吉田輝星が体験する「書かれざるルール」
大差でフルスイング、新庄剛志に報復死球
2018年8月24日(金)
敏腕スカウトの小園、根尾、藤原、吉田評
小園は立浪和義、吉田は桑田真澄の再来か
2018年8月21日(火)
西鉄の主砲・中西太、甦る「怪童伝説」
過去と未来をつなぐ「レジェンド始球式」
2018年8月17日(金)
184球完投は「美談」か「酷使」か!?
次なる百年に向け安全確保と健康管理を
2018年8月7日(火)
レジェンド始球式に太田幸司と井上明
三沢対松山商の球審が明かした判定秘話
2018年7月31日(火)
76年前、戦中に行われた”幻の甲子園”
球史から消えた徳島商-平安の名勝負
2018年7月27日(金)
熱闘甲子園が”熱湯”甲子園に!?
猛暑の夏、求められる熱中症対策
2018年6月29日(金)
”ジャイアン”金村義明が輝いた夏
81年報徳V、予選から13連続完投
2018年6月26日(火)
甲子園100回大会に向け熱戦スタート
敏腕スカウトが注目する投打の逸材
2018年1月16日(火)
夏の甲子園でもタイブレーク制導入へ
求められる次の100年に向けた大計づくり
2017年10月3日(火)
清宮幸太郎が求める「環境」と「指導者」
学ぶべきは王貞治、松井秀喜の育成法
2017年9月12日(火)
清宮、安田、中村。史上最強U-18に木製の壁
世界の王の教えは「体で振るな」「壁を作れ」
2017年8月22日(火)
甲子園を沸かせた商業高校の受難
今夏は1校。なぜ勢力図は変わったか!?
2017年8月18日(金)
本塁打量産から見える「変わりゆく高校野球」
加速する「小技からパワー重視」の流れ
2017年8月8日(火)
主役交代の夏 '83PL学園-池田戦
踏み込んだ桑田、踏み込めなかった水野
2017年7月18日(火)
「練習は量より質」が早実流
甲子園レジェンド荒木大輔の回想
2017年7月4日(火)
高校野球、夏の地方大会が続々開幕!
「未完の左腕」のコントロール矯正法
2017年6月22日(木)
列島を熱狂させる”清宮の夏”
甲子園最大のヒーローは誰か?
2016年8月23日(火)
夏の甲子園は2回戦組が有利
連投軽減で将来性の確保を
2016年8月09日(火)
宮本、筒香らを鍛えた
高校野球強豪校の教え
PageTop

J:COMへのお申し込み

個別サービスのお申し込み

資料請求

加入申込

サービス追加・変更

料金シミュレーション

問い合わせ