昨年のプロ野球の主役は、東京ヤクルトの村上宗隆選手でした。史上最年少での三冠王に加え、記録した56本塁打は、日本人登録選手としては史上最多でした。
村上選手は熊本・九州学院の1年夏に甲子園を経験しています。4番ファーストで出場しましたが、遊学館(石川)の小孫竜二投手に4打数0安打に封じられ、試合も3対5で敗れました。甲子園は、その1回きりでした。
それでも、高校通算52本塁打のパワーがプロのスカウトの目に留まり、2017年のドラフトでは、清宮幸太郎選手(北海道日本ハム)を外したヤクルト、巨人、東北楽天から1位指名を受け、ヤクルトが当たりクジを引き当てたのは周知の通りです。
今回は村上選手の少年時代の“怪童伝説”に迫りたいと思います。栴檀は双葉より芳し、とはよく言ったものです。
語るのは故郷の熊本で野球塾を運営する元広島の今井譲二さんです。現役時代は“足のスペシャリスト”として鳴らし、通算62盗塁のほとんどを代走でマークしています。
今井さんが運営する野球塾に、村上少年がやってきたのは小学3年生の時でした。「父親に連れられ、お兄ちゃんと一緒に来たのがムネだったんです」
今井さんが驚いたのは夏の阿蘇合宿です。なんとご飯を8杯もおかわりしたというのですから埼玉西武の“おかわり君”こと中村剛也選手も顔負けの大食漢です。
「普通の茶碗なんですけど、“皆、3杯は食べろ”と言いました。ところがムネはなみなみつがれた茶碗に8杯。それを次から次へとたいらげていく。もう漫画の世界でしたね」
プロ野球で成功した選手は金田正一さんにしろ王貞治さんにしろ、ほとんどが大食漢です。400勝投手の金田さんは「胃腸の弱い選手は大成しない」とよく語っていました。
さらに今井さんは続けます。
「夏合宿ともなると子どもたちは枕投げをしたりして遊ぶんです。20人くらいの部屋なんですが、もう皆、楽しくて仕方ない。ところがムネだけは8時半くらいになると、ひとりだけ爆睡している。まわりがキャッキャッキャッキャッやっていても気にならないんです。それを見て“こいつは大物になるぞ!”と確信しましたね」
寝る子は育つといいますが、どうやらそれが村上家の方針でもあったようです。
試合会場は南阿蘇村の白水運動公園。ここで村上選手は2打席連続ホームランを記録します。打球方向は1本目がレフト、2本目がセンターでした。
そして迎えた3打席目、今井さんがベンチから「ムネ、今度は引っ張ってみろ!」とハッパをかけると、指示通りライトスタンドに運び去ったというのです。
昨シーズンの56本塁打の内訳はレフト方向に18本、センター方向に13本、ライト方向に25本。10歳の時点で広角にホームランを打ち分ける技術の萌芽が見てとれます。
度肝を抜かれた今井さん。4打席目の村上選手に、こう声をかけます。
「ムネ、この球場で4打席連続ホームランを放ったものは、ひとりもおらんらしいぞ」
外野を見渡すと、レフともセンターもライトもフェンスにへばりついていました。村上少年のケタ外れのパワーに恐れをなしたのです。
快音を発した打球は右中間へ。思わずベンチを出た今井さんですが、打球はあとひと伸び足りず、ツーベースに終わったそうです。
村上選手の少年時代を振り返りながら今井さんは語ります。
「ご飯を食べるにしても寝るにしても、全てマイペース。自分が決めたことは絶対に曲げない。性格的には負けず嫌いで頑固。ああいう子がプロでは成功するんです」
村上選手の幼少期の写真を、今も今井さんは大事に保管しています。
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