ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手とオークランド・アスレチックスの藤浪晋太郎投手の対決が、さる2月28日(日本時間3月1日)アリゾナ州メサのキャンプ地で行われたオープン戦で実現しました。2人が投げ合ったのは、2014年のオールスターゲーム以来、9年ぶり。両雄のマッチアップの原点は、12年春の甲子園にありました。
大谷選手の花巻東高(岩手)と藤浪投手の大阪桐蔭高(大阪)が対戦したのは12年3月21日の1回戦、第3試合でした。
結果から言えば、大阪桐蔭が9対2で花巻東を破り、その余勢を駆ってセンバツ初優勝を果たしました。
大谷選手は身長193センチ、藤浪投手は197センチ(当時)。プロのスカウト注目の対決は完投勝ちを収めた藤波投手に軍配が上がりました。
9回途中でマウンドを降りた大谷選手は三振こそ11個奪ったものの、四死球も11個与えるなど本調子ではありませんでした。聞けば左股関節の故障に悩まされ、それが原因で、投球直後の「体が一塁側に傾くクセ」を修正できなかったそうです。
それでも、大谷選手は甲子園に置き土産を残しました。それは2回裏に、藤浪投手から奪ったソロホームランです。スライダーを振り抜いた打球は、ライトスタンドに一直線に伸びていきました。そのスケールの大きなバッティングに度肝を抜かれたのは私だけではないでしょう。
その直後、私はひとりのスカウトに電話を入れました。当時、東京ヤクルトスワローズで東北地区を中心にスカウト活動をしていた八重樫幸雄さんです。現役時代は極端なオープンスタンスながら、比類なき勝負強さを発揮する強打のキャッチャーでした。
「ピッチャーでもバッターでも通用する」
八重樫さんは開口一番、そう言いましたが、「ピッチャーの場合、少し時間がかかるでしょう」とも。「まだフォームが固まっていないんです。試合ごとにリリースポイントが違っている。フォームが安定するのは、まだ先でしょう」
一方で、「バッター大谷」については、手放しの褒めようでした。
「私がここ10年間で見た中で、最高のバッターです。左右に打てて飛距離も出る。10年に横浜高からドラフト1位で横浜(現横浜DeNAベイスターズ)に入団した筒香嘉智(テキサス・レンジャーズ傘下)もよく飛ばしましたが、それ以上と言っていいでしょう。
しかも彼の場合、金属バットの打ち方じゃないんです。ちゃんとバットの軌道の中にボールを入れて打っている。まだインサイドの速いボールには対応できないと思いますが、これも時間がたてば、十分に克服できるでしょう」
10年にひとりのバッター――。実際には八重樫さんの予測をはるかに超え、30年、いや50年にひとりのバッターだったと言えるかもしれません。
高3の秋、大谷選手は北海道日本ハムファイターズにドラフト1位で指名され、13年に入団します。日本ハムは春のキャンプを沖縄の名護で張ります。「初めて見たフリーバッティングが忘れられません」。こう語ったのは、昨年限りでユニホームを脱いだ元北海道日本ハムファイターズの杉谷拳士さんです。
「飛距離はもちろんですが、インパクトの瞬間のバチンという音が半端じゃなかった。当時は“投手だけに絞った方がよい”という人の方が多かったようですが、じかにあのバッティングを見たら、誰もが“打たないなんてもったいない”と思ったはずです」
現在、WBCで日本代表を率いる栗山英樹監督に、その頃、“二刀流”について聞くと、「(投打の)どちらかをやめろ、と言えるようなレベルではないですから」と目を丸くしていました。ギフテッド(天から与えられた才能)とは、大谷選手のためにあるような言葉かもしれません。
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