
47都道府県で春夏通じて最も優勝回数が多いのは大阪府の26回です。春12回、夏14回で、ともに大阪府がトップです。続いて優勝校の内訳を見てみましょう。
大阪桐蔭9回(春4回=2012、17、18、22年。夏5回=1991、2008、12、14、18年)
PL学園7回(春3回=1981、82、87年、夏4回=1978、83、85、87年)
大体大浪商(旧・浪華商)4回(春2回=1937、55年。夏2回=1946、61年)
北野1回(春1回=1949年)
明星1回(夏1回=1963年)
興国1回(夏1回=1968年)
近大付1回(春1回=1990年)
上宮1回(春1回=1993年)
履正社1回(夏1回=2019年)
計26回の優勝は9校によって達成されていますが、“高校野球王国・大阪”を牽引してきたのは、ざっくり分けて戦後は浪華商、昭和の後半がPL学園、平成以降が大阪桐蔭と言うことができるでしょう。
そんな中、異彩を放っているのが戦後間もない1949年のセンバツを制した府立北野です。1873年創立の伝統校です。
2002年に文部省から、全国26校からなる「スーパーサイエンスハイスクール」のひとつに指定されたほどの「将来の国際的な科学技術系人材を育成するエリート校」ですが、優勝した49年春を含め、甲子園にも5回出場しています。
49年春、大阪からは北野と大鉄の2校が出場しました。2年連続2回目のセンバツ出場の北野は、1回戦で日川(山梨)に10対1と大勝します。続く準々決勝は、前年の春の準優勝校で、今大会でも優勝候補の一角に数えられていた桐蔭(和歌山)。エースは卒業後、大阪タイガースに進む西村修さんでした。
劣勢が予想された北野でしたが、6対4で快勝します。6回表までに6点を先取した北野は、桐蔭の反撃を3点に抑え、逃げ切りました。
この試合、5打数2安打と活躍した長谷川圭市さんが六陵同窓会公式サイト内の「われら六陵人」でこう述べています。
<桐蔭の西村の球は膝元に来る快速球が有名だった。右バッターの膝元をえぐるようなシュート。これが評判だったんで、ぜひ打ってみたいと思ったが、二球は飛び退いた。そのあと三球三振。それにしても西村のすごみはちょっと違っていた。それを山本がガーンとレフトのフェンスに当てた。ラッキーゾーンがあったらホームランやな>
長谷川さんが口にした「山本」とは、投手兼センターの山本次郎さんのことで、大会では投打にわたって活躍しました。
勢いに乗る北野は準決勝で、それまで春夏合わせて4度の優勝を誇る県岐阜商に3対2で競り勝ちます。
山本さんの回想。
<結局この試合は、ボクと多湖(隆司)の継投で強打の岐阜商打線を2安打に抑えた。継投というのは高校野球では初めてじゃないかな。しかもウチみたいな「右のノーコン速球派」と「左の軟投派」というリレーは非常に珍しいものでしたよ。それまでは一人で放るというのが定石だったから>(同前)
山本さんのいう「右のノーコン速球派」とは自分のこと、「左の軟投派」というのは多湖さんのことです。ご本人が語るように、この時代の高校野球で、継投策を採用していたチームは珍しく、選手たちが「ジーやん」と呼ぶ清水治一監督の野球は、きわめて先進的だったということでしょう。
決勝の相手は、お隣兵庫県の芦屋。地元対決ということもあり、甲子園は6万人の大観衆で埋まりました。
試合は高校野球史に残る名勝負となりました。先攻の北野が2点を先取しますが、9回裏に追いつかれ2対2に。北野は延長10回に2点を取って引き離しますが、その裏、また2点を返されます。
押せ押せの芦屋は4対4とし、なお1死満塁。ここで石田侃さんの痛烈な打球がレフトを襲います。ここでレフトの長谷川さんはバックホームではなく、バックセカンドを選択します。二塁ランナーは二塁に戻ることができず、一瞬にして併殺。タッチアップの三塁ランナーは、まだ本塁の手前でした。こうして北野は、絶体絶命のピンチを切り抜けたのです。このプレーにおいて殊勲の長谷川さんはこう語っています。
<練習ではいつもやっていた。空いているベースに投げろということでね。ジーやんからいつも言われていた。捕球してからどこに投げるかなんか考えるなって。捕球する前にどこへ投げるか決めておけと。ボクはボールに追いつく前に二塁が空いていて、そこへ投げると決めていた。捕球するときには二塁へ送球する体勢になっていたんだ>(同前)
名勝負に決着がついたのは延長12回。スクイズなどで2点をもぎ取った北野は、多湖さんが最後を締め、6対4で頂点に立ち、紫紺の大旗を手にしました。
大阪の公立校で春夏通じて甲子園を制したのは、後にも先にもこの時の北野だけです。
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