
日本高校野球連盟(高野連)は、5月の理事会において、全国の都道府県高野連に審判用ヘルメットを配布することを決定しました。プロ野球の球審負傷事故を踏まえてのものです。これにより、夏の地方大会から使用が可能となります。
事が起きる前に手を打とう、との高野連の決定は妥当だと思われます。
逆に言えば、それぐらいプロ野球での球審負傷事故を重く見たということでしょう。
負傷事故は4月16日、神宮球場で起きました。東京ヤクルトスワローズのホセ・オスナ選手の手から離れたバットが、川上拓斗球審の側頭部を直撃しました。その場に倒れ込んだ川上球審は、救急車で病院に搬送され、緊急手術を受けました。
高校野球でも、こうした事故が起きない保障はありません。まして高校野球は金属バットですから、安全対策は万全を期すべきでしょう。
避けなければならないのは、負傷事故だけではありません。熱中症対策も急務です。2023年夏の甲子園から、高野連は5回裏終了後に、原則10分間のクーリングタイムを設けることを義務付けています。この間に審判も水分補給や、氷水に浸したタオルで体を冷やすなど、安全対策を講じています。
甲子園大会における、1試合あたりの平均時間は2時間から2時間半と言われています。延長10回からタイブレークに突入します。
翻って、プロ野球の平均試合時間は9回で3時間ちょっと。プロ野球に比べると短いではないか、と思われるかもしれませんが、屋外ゆえ、体の疲弊は半端ではありません。
今夏から配布されるヘルメットに話を戻すと、色は白だそうです。色と熱吸収の関係でいえば、黒が太陽光を100%吸収するのに対し、白は大部分を反射します。白と黒のヘルメットでは、表面温度がほぼ10~20度以上異なるという実験結果も報告されているといいます。
また別の報告によると、脳は熱に極めて弱い臓器で、深部体温が40度を超えると脳機能に傷害が出始め、41~42度に達すると、意識障害やけいれんが起き、最悪の場合、死に至ると言われています。
蛇足ですが、昔は頭部への直射日光が原因で生じる症状を「日射病」と呼んでいました。夏休み前になると、先生が「山や海に行く時は日射病に気を付けなさい」と子どもたちに注意を促したものです。
それが「熱中症」に統一されたのは、どうやら2000年代に入ってからのようです。今では「日射病」なる言葉は、ほとんど聞かれなくなりました。
2、3年前のことです。夏場、たまたまテレビを見ていて、少年野球の球審が炎天下のグラウンドで倒れ、救急車で病院に緊急搬送されたというニュースに接しました。その時、初めて「深部体温」という言葉を知りました。
深部体温が過度に上昇すると多臓器不全を起こし、死亡する危険性が高くなるというのです。医療サイトには、発症後20分以内に体温を下げられるかどうかが救命のカギ、という警告とも取れる記述がありました。
朝日新聞が5月からスタートした「考7イニング制」という連載コラムで、23年の夏を制した慶應高(神奈川県)森林貴彦監督のインタビューが掲載されていました。
その一部を紹介します。
<今後100年間、炎天下の甲子園で全国大会を続けることを本当にイメージできますか。
どこかで変えるべきで、その時期がもう、今、来ているのではないでしょうか。熱中症警戒アラートが出て、テレビには外出を控えるようにというテロップが出ている。あまりにも矛盾が大きい。だから、夏でいいのか、甲子園でいいのか。本格的な検討をしてもいいと思います>(26年5月24日付け)
高校野球そのもののあり方が問われています。
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