
近年の高校野球は“私高公低”の傾向にあり、公立高校の甲子園優勝となると、春は2009年の清峰(長崎県)、夏は07年の佐賀北(佐賀県)にまで遡らなければなりません。
清峰、佐賀北ともに県立高校です。一口に公立校といっても国立、都立、府立、道立ばかりではなく、市立もあれば、町立、村立もあります。
1993年の春、北海道から知内(しりうち)町立知内高が21世紀枠により出場し、1回戦で浜松商(静岡県)に3対6で敗れましたが、大きな話題を集めました。町立高の甲子園出場は初めてのことでした。
ちなみに知内町は津軽海峡に面した人口3500人程度(2026年)の小さな町で、国民的演歌歌手の北島三郎さんの故郷としても知られています。
選抜出場が決まった際には、真冬にもかかわらず花火が打ち上がったというのですから、地元の喜びぶりが伝わってきます。
同校の甲子園出場は、この1回きりですが、プロ野球選手も輩出しています。2022年夏に同校を南北海道大会決勝に導いた坂本拓己投手が、同年のドラフト会議で東京ヤクルトスワローズから4位指名を受け、入団しました。
坂本投手は渡島半島の西に浮かぶ奥尻島の出身で、この島の出身者としてはプロ通算165勝の佐藤義則さん(元阪急ブレーブス~オリックスブルーウェーブ)がいます。
公立の中には組合立という形態もあります。複数の市町村が「一部事務組合」(地方自治法に基づく特別地方公共団体)を結成し、共同で設立する高校のことを言います。
調べると現存する組合立高校は、以下の2つだけです。
利根商(群馬県/利根沼田学校組合=沼田市、みなかみ町、片品村、川場村、昭和村)
古賀竟成館高(福岡県/古賀高等学校組合=古賀市、福津市、新宮町)
2校とも甲子園には未出場ですが、利根商からは高橋信夫さん(元オリックス)、内田湘大選手(広島カープ)の2人のプロ野球選手が出ています。内田選手は組合立高出身の唯一の現役選手です。
町立高に組合立高。それくらいで驚いていてはいけません。97年のセンバツには、和歌山県立日高中津分校が、分校史上初の甲子園出場を果たしました。
分校とはいえ、和歌山県は野球どころです。激戦区で、過去に5回も夏の県大会決勝に進出しているというのは実力のある証拠です。
センバツでは、惜しくも1回戦で名門の中京大中京高(愛知県)に3対6で敗れましたが、甲子園を大いに沸かせました。
有名な卒業生としては、西武ライオンズや千葉ロッテマリーンズで活躍した垣内哲也さんがいます。長年ファームでくすぶっていましたが、西武時代の96年には28本塁打57打点とキャリアハイの成績を残しました。
ちなみに同校からは、垣内さん以外にも入山海斗選手(オリックス)、木本幸広さん(千葉ロッテ=育成)、芝﨑和広さん(西武)、千原淳弘さん(同)、濱矢廣大さん(東北楽天ゴールデンイーグルス―横浜DeNAベイスターズ)と、計6人のプロ野球選手が誕生しています。
また分校出身者の中には、メジャーリーガーになった者もいます。2002年にミルウォーキー・ブルワーズで21試合に登板し、2ホールドを記録したサウスポーの野村貴仁さんです。
野村さんは高知県立高岡高校宇佐分校(現高知県立高知海洋高校)の出身です。以前、本人に聞くと、高校時代、空き缶を指で握りつぶすという独特のトレーニングで指力や握力を鍛えたといいます。それがブレーキの効いたスライダーを生んだようです。
野村さんが名をあげたのは96年の巨人との日本シリーズです。“左殺し”として仰木彬監督に重宝され、主砲の松井秀喜選手を封じました。
「マウンドに上がれば、僕はバッターに憎しみを抱いて勝負に臨む。“コノヤローッ”と思うと、体内のアドレナリンが沸騰するんですよ」
松井さんからすれば、顔を見るのも嫌な存在だったはずです。
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