
今夏の甲子園で、甲子園史上最速の156キロをマークした右腕の織田翔希投手(横浜)が「米国挑戦」の記者会見を開いたのは、ドラフト会議の1週間前のことでした。会見で織田投手は「最終目標である世界一のピッチャー、世界で活躍するという目標に向け、アメリカの地で挑戦することに決めました」と宣言しました。
NPBを経ることなく高卒選手が海を渡った例としては、2025年1月にオークランド・アスレチックスと151万500ドル(当時のレートで約2億3621万円)で契約した森井翔太郎選手の例が知られています。
森井選手は東京の進学校である桐朋高校で、投打の“二刀流”として活躍しました。身長184センチ、体重89キロ。右の本格派で投げては153キロ、打っては(左)高校通算45本塁打。もし森井選手がNPB入りを希望していれば、間違いなくドラフトの上位で消えていた逸材だと言われています。
NPBを経ずしての米国行きについては、「将来、MLBで活躍するためには、早くアメリカに行って生活や食事に慣れた方がよいと思った」と語っています。
気になるのは、森井選手の近況です。ルーキーリーグでプレーした後、今年5月に1Aのストックトン・ポーツに昇格し、打っては63試合で打率2割2分7厘、4本塁打、24打点、5盗塁。投げては10試合で0勝4敗、防御率15.26という成績を残しています。
野手としては主にセカンドでプレーするなど、今はポジションの幅を広げているところです。仮にピッチャーとして芽が出なかった場合、守るところがない、では困ります。内野を経験していれば、MLBに昇格しても潰しが効きます。その意味では、将来を見据えて、着々と布石を打っている段階といっていいでしょう。
話を織田投手に戻しましょう。会見では「マイナーリーグもそうですけど、大学の方も考えております」と述べました。最終的な目標はMLBのマウンドに立つことですが、森井選手のようにマイナーリーグ契約からスタートするのか、大学を経由してMLB入りを目指すのかは、まだ決めかねているようです。
後者の代表例が、今年7月のMLBドラフトで、フロリダ・マーリンズから8巡目指名を受け、マイナー契約をかわした佐々木麟太郎選手です。スタンフォード大学に2年在籍した後、プロの世界に飛び込みました。
マーリンズの入団会見で、佐々木選手は通訳をつけず、英語で「マーリンズは素晴らしいチャンスを与えてくれた。マイアミにくることを歓迎してくれたし、育成プランも説明してくれた。(MLB昇格は)厳しい道のりだが、得意のバッティングだけでなく、守備、走塁など全ての部分で成長していきたい」と抱負を述べました。
この記者会見の模様を見ていたかどうかはわかりませんが、織田投手の「若いうちから生の英語に触れることにより、メジャーリーグに上がった際に、チームと意思疎通が図れる。それが一番かなと思います」とのコメントが印象に残りました。
仮に大学を経ることなく、直接プロを目指す場合、織田投手は「国際アマチュアフリーエージェント」の対象となります。MLBドラフトは主に米国、カナダ、プエルトリコのアマチュア選手を対象としているため、それ以外の国、地域に居住するアマチュア選手の獲得のために設けられた制度です。森井選手もこの制度を利用して海を渡りました。
大学かプロか。どちらを選択するかで揺れ動いた選手は昔からたくさんいます。しかし、それはあくまでも国内の大学かプロかという話でした。それが今では「米国の」大学かプロか、と選択の前提が変わりつつあります。これが「ニューノーマル」となる時代は、もうすぐのところにまできています。
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