二宮清純コラム プロ野球ガゼット
2021年1月12日(火)更新
15:00
東西大物新人、“こだわり寝具”で入寮
専門家も太鼓判を押す「寝る子は育つ」

新春を迎えプロ野球にも動きが出ています。先週からは新人選手の入寮が始まり、6日には昨秋のドラフトで4球団が競合した東北楽天・早川隆久投手、同じく4球団競合の阪神・佐藤輝明選手がそれぞれ選手寮に入りました。
「めちゃくちゃ眠れる」
プロ野球選手としての第一歩を踏み出した2人のドラ1ルーキーの意気込みを紹介しましょう。まずは犬鷲寮に入った早川投手です。早大出身の早川投手は大学ナンバーワン左腕の呼び声高く、最速155キロを誇る即戦力サウスポーです。
「関東出身なので雪を見て、東北に来たんだなと実感しました。これから楽天のエースや、日本を背負えるような投手になれればと思っています」
続いて虎風荘に入った佐藤選手です。兵庫県西宮生まれで近大出身の佐藤選手は、関西学生リーグ新記録の通算14本塁打を放った期待のスラッガーです。
「これから新しい生活がスタートするんだという気分。誰からも目標とされるような、超一流の選手になりたい」
ともに大きな目標を掲げる2人のルーキーですが、実は寮に持ち込んだ品の中にも共通する物がありました。ともにマットレスと枕など、こだわりの寝具を持ち込んだのです。
早川投手は大学時代から愛用しているAirマットレス(東京西川社製)を新調し、枕もオーダーメイドしたと言います。
「プロとして体のケアは一番大事だと思っています。このマットは田中将大さんも愛用しているので使っています」
佐藤選手は地元・西宮の布団店で購入した特注マットレスや枕、遠征用の枕などを持ち込みました。
「マットレスは大学3年のときから使っています。すごく自分に合っているので虎風荘でも使いたいなと思い持ってきました。めちゃくちゃ眠れます」
早川投手や佐藤選手だけでなく、近年は多くのプロ野球選手やアスリートが寝具にこだわりを見せています。アスリートの体と寝具の関係について、専門家である整形外科医に話を聞きました。語るのは多くのプロ野球選手を診てきた南松山病院(愛媛県)副院長の坂山憲史さんです。
----寝具が人間にとって大切な理由は?
「寝ているときの人間の体は、全く力が入らずリラックスしている状態。逆に言えば無防備な状態でもあります。だから睡眠中に負荷がかかると首や腰を痛めることになる。それを防ぐのがマットレスや枕なんです。“寝違えた”とよく言いますよね。あれは無理な姿勢で寝たことで首部分の傍脊柱筋(ぼうせきちゅうきん)がダメージを受け、痛みが出る症状のことです」
「大切なのは均一の圧」
----腰痛も同様ですか?
「はい。腰痛持ちの人は腸腰筋(ちょうようきん)という筋肉が固く凝っていることが多いのですが、睡眠時に痛めるのは寝違えと同じく傍脊柱筋。傍脊柱筋は首から腰にかけての背骨周辺にある筋肉の総称で、大きな筋肉です。無理な姿勢で寝たり、寝具が合っていないと寝ている間にここにダメージを受け、腰や首が痛くなるわけです。それを防止するには体に合ったマットレスや枕を使って、筋肉が緩んだ状態を保つこと。筋肉がこわばると中の神経がダメージを受け、それが痛みにつながるんです」
----佐藤選手は遠征に持参する枕も用意したと言います。
「それは良いことですね。昔から枕が変わると眠れないと言いますが、体に合った枕は快眠の源です。最近は高さや硬さの違う枕を用意しているホテルもありますが、やはり自分に合った枕を持っていくのがベスト。体が資本のプロ野球選手ならなおさらです。寝具にこだわるのはプロ意識の表れですし、佐藤選手も早川投手もルーキーなのにしっかりしていますね」
----そもそも良いマットレス、枕とは?
「昭和の時代は“腰のためには硬い布団で寝ろ”と言われ、それこそ板の上で寝る人もいました。大切なのは硬い、柔らかいではなく腰に均一の圧がかかること。それが一番、リラックスできる。最近はいろいろな高性能マットレスが出ていますが、誰にでも良いわけではありません。体重や体型によっては沈みすぎることもあるし、また、あまりに快適で寝返りを打たずに朝まで寝られることで、逆に体に変調を来した例もあります。
枕に関しても同様で首の長さや肩周りの筋肉のサイズなど個人差がある。“誰々が使っているから”ではなく、実際に試して合うか合わないかを確かめる必要があります。
最後に移動の多いプロ野球選手には移動中はネックピロー(空気を入れる携帯枕)の使用を勧めます。新幹線や飛行機による2、3時間の移動でうたた寝、こういうときが危ないんです。寝違えの危険性がありますからね。首を保持しておけばその心配もありません」
この国には、「寝る子は育つ」という言い伝えがあります。睡眠にこだわりを持つ早川投手と佐藤選手は、もうこの時点で大物感が漂っています。

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