二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2017年10月27日(金)更新

16:00

DeNAを19年ぶりの日本シリーズに導いた
ラミレス監督の先手先手の超攻撃的継投

Photo

 セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)・ファイナルステージは横浜DeNAが広島を4勝2敗で退け、19年ぶりの日本シリーズ進出を果たしました。アドバンテージを含め0勝2敗からの4連勝。下克上の原動力となったのが、アレックス・ラミレス監督の"猫の目"継投です。

冴えた"マシンガン継投"

 起用した投手の数は第3戦が7人、第4戦が6人、第5戦が7人。1998年、横浜が日本一に輝いた際の"マシンガン打線"をもじって"マシンガン継投"と呼ぶ人もいました。

 まずは20日に行われた第3戦、DeNAの先発は井納翔一投手でした。2回にDeNAが1点を先制します。1-0のまま広島の先発クリス・ジョンソン投手との息詰まる投げ合いが中盤まで続きました。

 6回裏、広島は菊池涼介選手、丸佳浩選手の連打で1死一、二塁。一発のあるサビエル・バティスタ選手を迎えたところでラミレス監督は動きます。2番手・三上朋也投手をマウンドに送ったのです。

 ベンチの期待に応えた三上投手はバティスタ選手をセカンドフライに打ち取り、すぐにお役御免。続く左打者の松山竜平選手にはサウスポーの砂田毅樹投手をぶつけました。砂田投手が四球で松山選手を歩かせると、すぐに右腕・須田幸太投手にスイッチ。須田投手はブラッド・エルドレッド選手を1球で外野フライに打ち取り、ピンチを切り抜けました。"1人1殺"リレーの後、エドウィン・エスコバー投手、スペンサー・パットン投手とつなぎ、締めくくり役の山﨑康晃投手まで計7投手。虎の子の1点を守ったDeNAが2勝2敗のタイに持ち込みました。

「明日以降の天気が怪しく順延が考えられる状況。リリーフを惜しみなく使うつもりだった。6回以降、勝つために手段を選ばずにどんどんつぎ込んだ」。試合後のラミレス監督のコメントです。

 天気も指揮官の読み通りでした。台風21号の影響で、21日、22日と2日間、広島地方には大量の雨が降りました。

 そして迎えた23日の第4戦。DeNAは今季10勝のジョー・ウィーランド投手を先発に送りました。27歳の右腕は初回に3点を奪われたものの2回以降は立ち直り、広島打線をノーヒットに抑えていました。

 3点を追いかけるDeNAは4回、先頭の筒香嘉智選手がソロホームランを放ち2点差に迫ると、続く5回、1死一塁から9番・倉本寿彦選手、1番・桑原将志選手の連続ツーベースで同点。さらに3番ホセ・ロペス選手がセンター前にタイムリーを放ち試合をひっくり返しました。

 しかし、広島打線も黙ってはいません。3-4と1点ビハインドで迎えた6回裏、ウィーランド投手は先頭のサビエル・バティスタ選手に四球を与え、4番・新井貴浩選手にはレフト前に運ばれました。

 無死一、二塁。ここでベンチが動きます。2日間の休養で肩を温存したリリーフ陣を、ラミレス監督は惜しげもなく注ぎ込んだのです。砂田毅彦投手、三上朋也投手、エドウィン・エスコバー投手の3人で3死をとり、広島の反撃の芽を摘みました。

 そして7回にはファーストステージ第2戦に先発した左腕の今永昇太投手をマウンドに送りました。期待に応えた今永投手は7、8回をノーヒットに抑え、最終回はクローザーの山﨑投手。タイトロープを渡りきったDeNAがまたしても1点差ゲームをモノにしました。

 かつて、メジャーリーグの球団幹部からこんな話を聞いたことがあります。

「1点差の負けは監督の手腕、3点差以上は選手の能力、5点差以上はフロントの力」

 その伝で言えば、第3戦、第4戦は"監督力"の差が如実に表れたゲームだったと見ることもできます。

一手遅れただけでズブ濡れ

 DeNAが王手をかけて迎えた第5戦。ラミレス監督は第1戦に続いて、サウスポーの石田健大投手をマウンドに送りました。前回同様、24歳は立ち上がりからピリッとしません。初回、3安打1四球で2失点。ここで指揮官はスパッと見切りを付けます。2回から、今季0勝の三嶋一輝投手にマウンドを託したのです。

 普通の監督なら、ひとつ勝ち越していることだし、少しは様子を見ようとなるはずです。だがラミレス監督は退路の橋を自らの手で断ちました。

 4回からは先発投手の濱口遥大投手を中継ぎで投入。2回を無失点に封じたルーキーにはホールドがつきました。さらに6回からは三上投手、エスコバー投手、パットン投手、山﨑投手と連夜の"マシンガンリレー"。リリーフ陣がセ・リーグ王者を封じている間に打線が爆発し、終わってみれば9-3の圧勝劇。かくしてDeNAはリーグ3位からセ・リーグ初の日本シリーズ進出を決めたのです。

 先手、先手とばかりに"攻撃型継投"を展開したラミレス監督に対し、広島の緒方孝市監督の継投は後手を踏んだ印象があります。

 特に第4戦の継投が悔やまれます。この日の先発は1戦目に先発し、コールドゲームの5回を"完封"した薮田和樹投手でした。

 当初は大瀬良大地投手が先発の予定でしたが、雨で試合が2つ流れたことにより、緒方監督は勝負に出たのです。

 5回表、薮田投手はウィーランド投手に四球を与え、続く倉本選手にはライトオーバーのツーベースを浴びました。無死二、三塁のピンチで打順はトップの桑原選手に回りました。

 レギュラーシーズンなら当然、続投の場面です。しかし、短期決戦にレギュラーシーズンの常識は通用しません。

 しかも薮田投手はプロ初となる中4日での登板。球数も90球に迫ろうとしていました。だが、ベンチは動きません。

 DeNAベンチは続投の薮田投手を「セットポジションになると不安定になる」と見ていました。データ通りでした。薮田投手は結局、桑原選手に三塁線を破られ3-3の同点に。指揮官は慌てて九里亜蓮投手をマウンドに送りましたが、3番ロペス選手にタイムリーを浴び3-4に。一度、手放した流れが戻ることはありませんでした。

「自分の采配で選手に力を発揮させてやれなかった。短期決戦で勝ち上がれるように勉強していきたい」。"敗軍の将"となった緒方監督の弁です。

 繰り返しになりますが、ポストシーズンゲームはレギュラーシーズンの延長線にはありません。短期決戦では後手を踏み、一度、流れが変われば、それを取り戻すのは至難の業です。

 自他ともに認める継投のスペシャリストである権藤博さんに次の格言があります。

「投手交代、継投というのは夕立の傘と一緒ですよ。ちょっとでも降るかな、危ないなと思ったらさした方がいい。遅れたらずぶ濡れですよ」

 雨にたたられることの多かったセ・リーグのクライマックスシリーズ。ズブ濡れになる前に傘をさし、しかも、いくつもの傘を使い分けたラミレス監督の手腕はどれだけ称えても称えすぎるものではないでしょう。

K.Ninomiya二宮清純

二宮清純コラム プロ野球ガゼット

二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

BACK NUMBER

2019年8月20日(火)更新
広島バティスタ、ドーピングで陽性反応
五輪に向け懸念される球界の「甘い認識」
2019年8月16日(金)更新
夏休み「3人退場」大荒れの獅子vs猛牛
過去には「審判集団暴行」の横浜事件も
2019年8月13日(火)更新
育成初! 野手から投手転向で初勝利
オリックス張奕の身体能力とセンス
2019年8月9日(金)更新
阪神、“死のロード”は死語のはずでは?
この5季で4度勝ち越しの原因と背景
2019年8月6日(火)更新
広島、「アップダウン」のその先は?
巨人、DeNAと三すくみで「混セの夏」
2019年8月2日(金)更新
最長身左腕、楽天・弓削隼人躍動せり
「うどの大木」から「大きな武器」へ
2019年7月30日(火)更新
佐々木朗希登板回避で球界に賛否
国保陽平監督が投じた一石の波紋
2019年7月26日(金)更新
広島・緒方孝市監督、ビンタで厳重注意
”愛のムチ”は過去。他球団は「他山の石」
2019年7月23日(火)更新
巨人・原辰徳監督、通算1000勝に王手
自らに誓う「聖域超え」のミッション
2019年7月19日(金)更新
DeNAヤスアキ、史上最年少150S達成
「適材適所」見抜いた中畑清の好判断
2019年7月16日(火)更新
ノムさん、「しっかりせい!」と愛のムチ
燕に「足を向けて寝られない」義理と事情
2019年7月12日(金)更新
プロコーチ吉井理人、絶妙の「立ち位置」
「距離」で判る指揮官との信頼感、緊張感
2019年7月9日(火)更新
ヤクルト石川雅規、200勝への道程
名球会入りすれば、史上「最低身長」
2019年7月5日(金)更新
迫る移籍期限、駆け込みトレード続出
「放出選手」に向けられる冷たい視線
2019年7月2日(火)更新
吉川光夫、3年ぶり「古巣」への思い
日ハム・栗山監督に「恩返し」なるか
2019年6月28日(金)更新
投手の故障予防に球数の「総量規制」
会議で聞きたい現役球児の“ナマの声”
2019年6月25日(火)更新
悪送球、ファンブル、トンネル……
広島ドラ1・小園海斗にプロの試練
2019年6月21日(金)更新
日ハム上沢直之、左ヒザ直撃で今季絶望
0.3~0.4秒で打球到達の恐怖とトラウマ
2019年6月18日(火)更新
レジェンド・杉下茂ら学生野球資格回復
今の学生に語り継いでほしい「戦争体験」
2019年6月14日(金)更新
吉田輝星、「スターの貫禄」で初勝利
初先発で見せた「新人っぽくない」84球
2019年6月11日(火)更新
広島、日本一獲りに向けクローザー交代
ハラハラ、ドキドキ「中﨑劇場」終幕か
2019年6月7日(金)更新
「ホームランはヒットの延長」は本当か?
NPBホームラン記録に挑む山川穂高の野望
2019年6月4日(火)更新
「令和の怪物」佐々木朗希、13奪三振
スピード違反!? 江川卓の牽制球伝説
2019年5月31日(金)更新
14連敗ヤクルト、トンネルの先に光は!?
OBが分析する連敗のメカニズムと脱出法
2019年5月28日(火)更新
早くも35℃超え! 今夏も猛暑の甲子園
熱中症予防「白スパイク」の早期導入を
2019年5月24日(金)更新
「雑草魂」上原浩治、44歳で現役に幕
浪人時代に養った反骨精神と背番号19
2019年5月21日(火)更新
名ファースト生むDeNAの「遺伝子」
ロペス、連続守備機会無失策の貢献
2019年5月17日(金)更新
元スカウトが断言「佐々木は大谷以上」
「令和の怪物」は甲子園に登場するか!?
2019年5月14日(火)更新
「母の日」に先発初勝利の広島・アドゥワ誠
ゴロアウト14が示す「打たせて取る」投球術
2019年5月10日(金)更新
チームの要“鯉女房”會澤翼がFA権取得
気になる「打てて守れる」捕手の動向
2019年5月7日(火)更新
「完投なし」で首位を争う東北楽天
平石監督のブルペン「働き方改革」
2019年4月26日(金)更新
「奇跡のバックホーム」の舞台裏
松山商-熊本工、名勝負の分岐点
2019年4月23日(火)更新
リリーバーも「沢村賞」の選考対象に!
沢村賞2回、斉藤和巳の脱先発選民思想
2019年4月19日(金)更新
イチロー、若き日の驚異の動体視力
テッド・ウィリアムズの“松ヤニ伝説”
2019年4月16日(火)更新
163キロ「令和の怪物」佐々木朗希
侍ジャパンTD鹿取義隆が占う将来性
2019年4月12日(金)更新
阪神・梅野、骨折後のサイクル安打
“自損事故”防ぐには「ベースは左足」
2019年4月9日(火)更新
巨人の開幕ダッシュに貢献・吉川尚輝
「うちには吉川がいる」と原辰徳監督
2019年4月5日(金)更新
雪に見舞われた楽天のホーム開幕戦
カブスのしたたかな寒冷地ビジネス
2019年4月2日(火)更新
フルスイング貫くロッテ藤原恭大
大先輩・山崎裕之曰く「センスの塊」
2019年3月29日(金)更新
<平成プロ野球史③>
大魔神、横浜を38年ぶりリーグVに導く
松井秀喜も手を焼いた「伝説のフォーク」
2019年3月26日(火)更新
引退イチロー、感動のカーテンコール
甦る44年前の光景、ミスターの名台詞
2019年3月22日(金)更新
新潟県高野連提案「球数制限」は先送り
投手の肩、ヒジ故障防止は「喫緊の課題」
2019年3月19日(火)更新
セ最下位はローテ充実の矢野阪神!?
「守備に難」権藤博が看破した弱点
2019年3月15日(金)更新
日本シリーズ視聴率が示す球界近未来
プロ野球は最強のローカルコンテンツ
2019年3月12日(火)更新
西武、広島の捕手併用制は是か非か?
二番手捕手の起用法こそが優勝の条件
2019年3月8日(金)更新
4連覇目指す広島に待望の国産サウスポー
3年目・床田寛樹、“ケガの功名”で復活へ
2019年3月5日(火)更新
野球、パリ五輪落選で次の一手は?
侍ジャパン「東京で金」の前提条件
2019年3月1日(金)更新
開幕前から赤ヘルフィーバーに沸く広島
地域活性化の「優等生」を支える懐事情
2019年2月26日(火)更新
<平成プロ野球史②>
20世紀最後の宮崎キャンプで見た「熱狂」
「背番号3」長嶋茂雄のワンマンショー
2019年2月22日(金)更新
背番号ひと桁ルーキーの「恍惚と不安」
甲子園V3根尾昂と藤原恭大の強心臓
2019年2月19日(火)更新
日ハム吉田、柿木に見る当世ライバル事情
「蹴落とす」よりも、互いに「高め合う」
2019年2月15日(金)更新
“捕手頭脳”矢野監督はトラを再建できるか
捕手は現場の司令塔、“分身”の育成が急務
2019年2月12日(火)更新
大物の証明、根尾昂の“ブルペン目慣らし”
「世界の王」驚異の選球眼はどこで鍛えたか
2019年2月8日(金)更新
阪神・矢野監督は“ベテラン特権”剥奪
競争原理導入でチームは活性化するか
2019年2月5日(火)更新
“名参謀”鈴木康友が語る「王者のキャンプ」
「強いチーム」と「弱いチーム」はここが違う
2019年2月1日(金)更新
「野球離れを防げ、子供の将来を守れ」
侍J4番・筒香嘉智の勇気ある問題提起
2019年1月29日(火)更新
中日ドラ1・根尾昂と若松勉の共通点
スキーで鍛えた内転筋がパワーを生む
2019年1月25日(金)更新
<平成プロ野球史①>
第1回WBCを制した王貞治の執念
“世紀の誤審”で沸騰した日本世論
2019年1月22日(火)更新
殿堂入りの80歳・権藤博が解説する
「できるコーチ」と「できないコーチ」
2019年1月18日(金)更新
「天才」立浪和義、晴れの殿堂入り
PL恩師・中村順司は何を教えたか?
2019年1月15日(火)更新
原巨人にFA人的補償選手の波紋
プロテクト漏れ選手の「疑心暗鬼」
2019年1月11日(金)更新
沢村賞と最優秀中継ぎのマルチ投手
ホークス攝津正は平成の「器用長者」
2019年1月8日(火)更新
巨人・長野、FA丸の人的補償で広島へ
赤ヘル、リーグV4に向けガチンコ指名
2018年12月25日(火)更新
丸佳浩&岡本和真、「MO時代」到来か!?
王貞治復活劇の影に「3番」張本勲あり
2018年12月21日(金)更新
G菅野智之、史上最多タイの年俸6.5億
「夢の10億円」誕生に向けた球界改革を
2018年12月18日(火)更新
ブルペンの待遇改善なくして躍進なし
年俸アップこそが“勤続疲労”の特効薬
2018年12月14日(金)更新
平成最後の大補強敢行した原巨人
番頭・元木コーチのサバイバル術
2018年12月11日(火)更新
プロ野球選手の「格」について考える
ベテランを生かす実績尊重型の起用法
2018年12月7日(金)更新
契約更改は交渉力磨く絶好の機会?
球場の広告提案まで行った里崎智也
2018年12月4日(火)更新
FAの目玉・丸佳浩「栄光の巨人」入り
長嶋茂雄、高橋由伸に連なる千葉人脈
2018年11月30日(金)更新
巨人・菅野智之、「19」から「18」へ
悲運のエース小林繁のビンテージイヤー
2018年11月27日(火)更新
最多ホールド左腕・宮西、実は右利き?
レジェンド江夏豊、鈴木啓示も転向組!
2018年11月23日(金)更新
FA市場の目玉・丸佳浩流失に備える広島
“打高守低”西川、メヒアに外野転向指令
2018年11月20日(火)更新
オフは遊び時間じゃない!とSB工藤監督
04年V落合中日はキャンプ初日に紅白戦
2018年11月16日(金)更新
日米野球、“タナキク”コンビで決勝点
稲葉ジャパン、東京五輪の予行演習?
2018年11月13日(火)更新
侍J・柳田悠岐、秋山翔吾、菊池涼介
MLB迎え討つ地方大学出身の精鋭たち
2018年11月9日(金)更新
DeNA1位・上茶谷にレジェンド背番号
平松政次の“カミソリシュート”伝説
閉じる
J:COM未加入の方 プロ野球見るならJ:COMで
未加入の方

J:COMへのお申し込み

特典・キャンペーン

特典・キャンペーン

Copyright (c) Jupiter Telecommunications Co., Ltd. All Rights Reserved.

J:COM

Copyright c Jupiter Telecommunications Co., Ltd. All Rights Reserved.
ケーブルインターネットZAQのキャラクター「ざっくぅ」