二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2017年11月24日(金)更新

16:00

セMVP、丸佳浩の武器は選球眼
ポイントゲット兼チャンスメーク

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 大方の予想通り、パ・リーグは日本一に輝いた福岡ソフトバンクのデニス・サファテ投手、セ・リーグは連覇を果たした広島の丸佳浩選手が最優秀選手(MVP)に選ばれました。

 サファテ投手はシーズン最多54セーブをあげる大車輪の活躍でリーグ優勝に貢献しました。彼のことはこれまで何度か触れているので、今回は丸選手について書きましょう。

文句のない3番打者

 プロ入り10年目の丸選手は、今季、全143試合に出場して打率は3割8厘。本塁打23本と打点92はともにキャリアハイでした。171安打で最多安打のタイトルも獲得しました。守備でも5年連続でゴールデングラブ賞に輝いています。

 このように丸選手は、3番打者として文句の付けようのない働きを見せました。特に私が注目したのはリーグ4位の83四球です。自ら打点を稼ぐポイントゲッターであるばかりでなく、彼は出塁して好機をつくるチャンスメーカーでもあるのです。

 以前から丸選手の選球眼の良さには定評がありました。2014年、15年はリーグの"四球王"になっています。とはいえ最初から四球を狙っているわけではありません。以前、丸選手はこう語っていました。

「当然、打つ前から四球で出ようと思ってはいません。打ちにいくべき球、打ちにいってはいけない球をきちんと整理しておきます。それで打席に入る。その結果、打ちにいく球がこなければ、四球でいいという考えです」

 広島OBで14年まで巨人の投手総合コーチを務めた川口和久さんは、"丸対策"についてこう語っていました。

「比較的早打ちのバッターが多い広島の中で丸は選球眼がいい。簡単に三振しないし、甘いボールを見逃さない。そんなバッターにストライクで勝負するピッチャーはいません。基本的な攻め方はアウトコースから入って、インコースのボールを見せる。こうして内を意識させておいて、最後は外、あるいは低めのボール球。両サイドと高低を目いっぱい使わないことには彼は抑えられません。まあ丸からすれば"その手には乗らない"とばかり、低めのボール球はきっちりと見極めてましたがね」

 丸選手が選球眼、特に低めのボールの見極めに磨きをかけたのは、弱点を補うためでした。柔らかいバッティングが身上の丸選手ですが、意外なことに体は硬いのです。

 12年オフから15年まで広島で打撃コーチを務めた新井宏昌さんは、丸選手にとって恩師にあたる人物です。その新井さんはオリックスの打撃コーチ時代、イチロー選手を育てたことでも知られています。以下は新井さんの述懐です。

「丸は関節が硬いため、低めのボールをうまくさばけないんです。たとえば、イチローと比べてみてください。イチローは体勢を崩されようが何をされようが、どんな形でもボールの芯にバットの芯を持っていく技術がある。子供のころに身につけたものだから、これは他人に教えようとしてもできません。翻って丸の場合、関節が硬いため、一度、体勢を崩されてしまうと対応できない。完璧な形でなければヒットゾーンにボールを運べないんです」

出塁率はリーグ2位

 四球数が増えれば、必然的に出塁率もアップします。100四球を選んだ14年の出塁率は4割1分9厘でリーグ2位。今季も出塁率はリーグトップの田中広輔選手にわずか7毛差の3割9分7厘5毛で2位でした。

 出塁率と聞いて思い出すのが、アスレチックスのビリー・ビーンGMが主人公のノンフィクション「マネー・ボール」です。アスレチックスは00年から4年連続でプレーオフに進出しましたが、年俸総額はヤンキースの約1/3でした。その間の選手平均年俸は30球団中24位(00年)、29位(01年)、21位(02年)、20位(03年)。少ない投資額で驚くほどの成果を得る、いわゆるローコスト・ハイリターンの球団運営が話題を呼びました。

 では敏腕GMはドラフトやトレードで打者を獲得する際、どんな数字を重視したのでしょう。答えは出塁率でした。「野球は27個、敵よりも先にアウトを奪われなければ少なくとも負けることはない。送りバントはみすみす敵にアウトをプレゼントするようなものだから論外。盗塁も先のベースでアウトになる確率が3割もあればチームの戦術として用いることはない。打率や打点も状況によって左右される数値だから重視しない」との考えが根底にありました。

 ビーンGMは現在、アスレチックスの上級副社長の座にあります。丸選手には、こっそり二重丸を付けているかもしれません。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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