二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2020年12月11日(金)更新

15:00

中日、“厳冬更改”に選手会が抗議文
求められる“令和式”スマート交渉法

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 プロ野球は現在、契約更改の真っ只中です。コロナに揺れたシーズンのオフとしては穏便に事が運ぶ中、2日間で3人の保留者を出したのが中日です。8年ぶりにAクラス入りを果たした中日に一体何が起きていたのでしょう。

「査定基準が不透明」

 中日球団の選手との契約更改交渉は11月26日から始まりました。まず初日、木下拓哉捕手が今季1200万円(金額は推定・以下同)から倍額提示の2400万円を保留しました。

 5年目の木下捕手は、今季74試合でスタメンマスクを被り、打率2割6分7厘、6本塁打、32打点とキャリアハイの成績を残しました。倍額提示は妥当かと思われましたが交渉後は、「一度、家に持ち帰って考えたい」と渋い表情でした。

 翌27日の更改交渉も荒れました。今季、先発に転向し8勝(2敗)をマークした福谷浩司投手が、1100万円増の2900万円を保留しました。

「保留するのはすぐに決まりました。金額より、他球団の契約更改結果を含め、考えたいということです」

 続いて今季、最優秀中継ぎ投手のタイトルに輝いた福敬登投手(53試合登板、30ホールドポイント)も保留しました。

「査定にコロナの影響があるのかが知りたかった。査定基準が不透明だった」

 以下は交渉にあたった加藤宏幸球団代表の弁です。

「(木下の保留理由は)金額です。去年までは情状し上積みする余地があったが、経営の厳しい今季はそれはできない。査定方法はコロナ禍の今季も変わっていない。査定を元に出した金額を譲るつもりはない」

 これを受け、日本プロ野球選手会が中日球団へ抗議文を提出する事態に発展しました。選手会が問題視したのは、加藤代表の言動でした。

<11月26日から始まりました中日ドラゴンズの契約更改交渉においては、中日球団代表による所属選手に対する査定方法の事前説明が二転三転したり、不十分な点がありました。また所属選手との契約更改交渉後に、同代表が、メディアに対して、一方的に所属選手が年俸金額でもめているかの印象を与える発言をするなど、選手と球団の信頼関係を維持できない状況が発生しています。>

オフの“慈雨”

 この11月、選手会は前もって球団に「コロナの影響で厳しい更改が予想されますが、その上で選手へは丁寧な説明を」と求め、選手には「納得できるまで保留すること」と呼びかけていました。

 結局、木下捕手と福投手は12月4日、福谷投手は9日にそれぞれ2度目の交渉を行い合意に至りました。選手会のアシストが効いたようです。

 さて、こうした契約更改の場での労使の“衝突”を見るにつけ思うのが、なぜ事前交渉をしないのかということです。

 交渉が決裂した場合、球団の側に立てば「コロナで大変な時期に贅沢言うなよ」となります。一方、選手の側に立てば「コロナでも査定法が変わってないと言うなら、この数字はおかしいじゃないか」となります。つまり、選手には「贅沢」、球団には「ケチ」のイメージがつき、双方ともにマイナスなのです。

 かつて代理人制度の導入を提唱した野茂英雄さんは、その理由をこう語っていました。

「交渉が決裂した直後に映し出される選手の顔を見ていると、皆、しぶい顔をしている。なかには唇をとがらせ、不満を言っている者もいる。こういうシーンを見せられるお茶の間の人たちは“野球選手って何て金にうるさいんだ”とか、“さわやかじゃないわねぇ”と思ってしまいかねない。

 選手のイメージが悪くなれば商品価値が落ち、それは球団にとってもマイナス。だから交渉は代理人に任せ、まとまれば選手が出ていって、笑顔で球団幹部と握手をかわす。お互い、そっちの方がプラスだと思うんですけどね」

 仮に年俸が低く、代理人を雇えない選手でも、電話やメールでの下交渉ならできます。かつて契約更改でのトラブルは、ネタ枯れの時期、スポーツメディアにとっては“慈雨”でした。「大荒れ」という見出しの横に鬼のような形相をした選手の表情----。それだけで紙面やニュースをつくったりしていたものです。しかし、もうそんな時代ではありません。令和には令和のスマートな交渉法があるはずです。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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