二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2021年3月9日(火)更新

15:00

正念場の清宮幸太郎「ガツガツやる」
試行錯誤の先にある「4年目の覚醒」

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 7本、7本、7本。2018年にドラフト1位で早実(東京)から北海道日本ハムに入団した清宮幸太郎選手の過去3シーズンのホームラン数です。期待が大きかっただけに伸び悩みの印象は拭えません。

「自己採点は50点」

 昔、パチンコ屋にはフィーバーという名の機種がありました。7が3つ揃うと大当たり=フィーバーというわけです。野球でも7はラッキーセブンと呼ばれる縁起の良い数字。4年目を迎えた清宮選手のブレークを示唆しているのでしょうか。

 まずは過去3シーズンの成績を振り返りましょう。18年は53試合に出場し打率2割、7本塁打、18打点。19年は81試合、打率2割4厘、7本塁打、33打点。そして昨季は96試合、打率1割9分、7本塁打、22打点----。

 正念場の清宮選手、4年目はキャンプインからして意気込みが違いました。

「3年間何もできていないので、今年にかける思いは相当にあります。自信を持ち、ガツガツやっていきたい」

 その言葉通り、第1クールでは早出の守備練習に始まり、居残り特打、特守と意欲的に取り組みました。途中、前腕の張りを訴え、紅白戦のスタメン出場を取りやめましたが、これは栗山英樹監督が「一生懸命にやっている。ケガだけは避けたいので止めました。無理はさせません」とブレーキをかけたからです。

 こうした指揮官の配慮もあり、清宮選手は大きな故障もなく順調にキャンプを過ごしました。中日との練習試合(2月21日・名護)では3ランホームランを放ち、25日の紅白戦では4番を任されました。3月1日、1軍キャンプを打ち上げた清宮選手、こう振り返りました。

「1カ月しっかり野球をやり込めたことが一番達成感があり、自信になる。ただキャンプ自体は順調に過ごせたけど、状態や技術はまだまだ。もっともっと練習が必要です。自己採点すれば50点です」

 3月2日から始まったオープン戦、日本ハムはここまで4試合を消化しています。清宮選手は7打数2安打、打率2割8分6厘、ホームランと打点は0という成績です。

 過去、鳴り物入りで高校からプロに進み、球界を代表するスラッガーとなった選手の中には「4年目のブレーク」を果たした者が少なくありません。

◎主な高卒選手の4年目の成績(出場試合数・打率・本塁打・打点)
1962年 王貞治(巨人)    
 134試合 .272 38本 85点
1996年 松井秀喜(巨人)   
 130試合 .314 38本 99点
2014年 山田哲人(ヤクルト) 
 143試合 .324 29本 89点
2016年 鈴木誠也(広島)   
 129試合 .335 29本 95点
2016年 大谷翔平(日本ハム) 
 104試合 .322 22本 67点
2018年 岡本和真(巨人)   
 143試合 .309 33本 100点

「まず右足に体重」

 王貞治さんは61年オフ、その年から巨人の打撃コーチに就任した荒川博さんとマンツーマンの特訓に取り組み、素質が開花しました。松井秀喜さんは3年目の95年から4番を任されていましたが、4年目を迎えるにあたり苦手の内角球対策に徹底して取り組みました。その結果、初の大台超えとなる38本塁打をマーク。ホームランキングに輝いた山﨑武司さんに1本差まで迫りました。

 シーズンオフ、松井さんに「昨年までと何が変わったのか?」と聞くと、22歳はこう答えました。

「より長くボールを見られるようになって、体に近いところでとらえられるようになったんです」

 4年目の松井さんの変化にいち早く気付いたのが先日、亡くなった安田猛さんです。当時はヤクルトのスコアラーを務めていました。

「95年までの松井は来たボールに対し、バットが真っ直ぐに出ていました。それが96年は構えたときに手首が柔らかく感じられた。これにより遠心力を使えるようになったのが大きかった。過去の名選手を例にとっても、皆、そういう打ち方をしていました。王さん、長嶋(茂雄)さん、あるいは落合(博満)にしても、手首を回して打っています。手首を固定したまま、ゴツンという感じで打って成功した選手はいません」

 元々、清宮選手はリストの柔らかさに定評がありました。安田さんの言う「ゴツン」という打ち方ではありませんでした。しかし、ただ柔らかいだけでは器用貧乏に終わってしまいます。

 彼は今年のキャンプで新しいバッティングフォームに取り組みました。見直したのはタイミングの取り方です。昨季までは打席に入るなり軸足の左足に体重を乗せていましたが、それをまず右足に体重を乗せ、ピッチャーの投球フォームに合わせて、左足に重心を移すようにしたのです。新フォームについての清宮選手の説明です。

「昨季までは始動が中途半端になり、タイミングが合わせられず、体の軸がぶれていた。ボールにも体重を乗せられなかった。それを投手のフォームに合わせて重心を移動させることで、タイミングが合うようになっってきました。それにより思い通りの打球が増えてきましたね」。

 試行錯誤は、大打者になるための、いわば“成長痛”のようなものです。しかし、それを繰り返してばかりでは、永遠の堂々巡りになってしまいます。そろそろ"自分の型"を見つけたい清宮選手です。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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