二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2019年11月5日(火)更新

15:00

Gグラブ賞、内外野での受賞は過去3人
コンバートを乗り越えた高田繁の誇り

Photo

 守備の名手に送られる「三井ゴールデングラブ賞」が31日に発表されました。選りすぐりの18人の中で、最も注目を集めたのが、プロ19年目にして初受賞の内川聖一選手でした。

守備率10割

 スポーツニッポン紙(11月1日付)によると、今季、内川選手は1904回の守備機会で、失策はゼロ。一塁手としての守備率10割は、1968年の榎本喜八さん(故人)の9割9分9厘2毛を上回るパ・リーグ記録だそうです。

 なお、19年目での同賞受賞は、2014年の中日・森野将彦さん(現中日2軍コーチ)の18年目を上回るNPB記録となりました。

 以下、内川選手の喜びのコメントを記します。

「夢みたいです。夢が現実にという気持ちで、嬉しいという言葉だけでは言い表せないですね。過去の打撃のタイトルも嬉しかったですが、守備を評価していただいたことを野球選手として誇りに思います」

 内川選手のゴールデングラブ賞受賞については、「そうだったのか……」と少々、意表を突かれた思いでしたが、元々、グラブさばきの上手さには定評がありました。大型ショートとして大分工から横浜にドラフト1位で入団し、サード、セカンド、外野、ファーストと内野を中心に数多くのポジションをこなしてきました。

 ショートといえばアマチュアでは“内野の華”です。ファーストに転向してゴールデングラブ賞をとったからといって、びっくりすることはないでしょう。

 さて、ゴールデングラブ賞は、72年にダイヤモンドグラブ賞としてスタートし、86年から現在の名称に改められました。47年の歴史の中で外野と内野の双方で受賞した選手は3人しかいません。高田繁さん(72-75年・外野、76~77年・三塁)、西村徳文さん(85年・二塁、90年・外野)、稲葉篤紀さん(06~09年・外野、12年・一塁)です。

 この3人の中でも、とりわけ高田さんのサードでの受賞は衝撃的でした。レフトで4度ダイヤモンドグラブ賞(当時・以下同)を受賞するなど名外野手としての地位を確立していた高田さんでも、「内野での成功は難しい」という声が支配的だったからです。

 高田さんは振り返ります。「長嶋さんが監督1年目の75年、巨人は最下位に終わりました。巻き返しに向けた補強の一環として日本ハムから張本勲さんが入ることになった。張本さんはレフトしかできないので、長嶋さんに呼び出され、『サードをやってくれ』と命じられたんです」。

「体で止める」

 ミスターの後釜と言えば大変な名誉ですが、果たして、その重責に耐えられるか……。高田さんは悩んだ末にコンバートを拒否し、トレードを直訴しました。外野手の他にはピッチャーしかやったことのない高田さんですから、当然と言えば当然です。

 しかし、こうと決めたら後ろを振り向かないのが長嶋さんです。もとより聞く耳など持ち合わせていませんでした。

「コンバートを拒否してトレードもダメとなれば、巨人で出場できるのは張本さんの守備固めしかない。それはイヤだったので三塁をやるしかなくなったんです。僕がついていたのは翌年から本拠地・後楽園が人工芝になることが決まっていて、多摩川グラウンドの片隅にひと足早く人工芝が張られていたこと。そこで早速、サードの守備練習に取り組みました。人工芝で守備練習をしたのは僕が球界で最初だと思いますよ」

 同じ左側でも、サードとレフトでは打球の速度が違います。高田さんが恐怖を感じたのは言うまでもありません。

「当時は秋にオープン戦があって、転向間もない僕はサードの守備についた。それまでプロに入って打球が怖い、速いと感じたことはなかったけど、阪神の田淵幸一や大洋のジョン・シピンなどは目の前から打ってくるような打球でした。その恐怖心を克服するのが、まずは大変でしたね」

 長嶋さんの目は節穴ではありませんでした。高田さんの守備は試合を重ねるごとに上達し、すぐにリーグを代表するサードへと成長しました。

 以前、本人に聞いたことがあります。

----コンバート成功の秘訣は?

「僕はプロに入って肩も壊していないし、どこも故障がなかった。だから打球を止めさえすれば、絶対にいいボールをファーストに投げる自信があったんですよ。だからきれいに捕る、うまく捕るとは考えずに、とにかくグラブでも体でもボールを止めればいいや、と思って守っていた。この体当たり精神がよかったんでしょうね」

 高田さんのホットコーナーでの奮闘もあり、76年、77年と長嶋巨人はリーグを連覇しました。サードでの2年続けてのダイヤモンドグラブ賞受賞は、今でも高田さんの密かな誇りです。

K.Ninomiya二宮清純

二宮清純コラム プロ野球ガゼット

二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

BACK NUMBER

2019年12月13日(金)更新
生誕100年迎えるV9川上哲治の肉声
生前に語った巨人軍率いる覚悟と条件
2019年12月10日(火)更新
来季導入目指す「現役対象ドラフト」
球団と選手「ウィンウィン」構築を!
2019年12月6日(金)更新
掛布雅之、親会社の新ポスト就任へ
「タイガース愛は永久に不滅です!」
2019年12月3日(火)更新
なぜ鷹の育成選手は成功するのか!?
松田宣浩解説“特A”と“オールA”の違い
2019年11月29日(金)更新
「DH制導入」でセ・リーグは弱くなる!?
使いこなせなければ“無用の長物”の懸念
2019年11月26日(火)更新
サブマリン牧田和久は浮上できるか?
日本での復活の鍵は「高めの使い方」
2019年11月22日(金)更新
王貞治、正力賞の受賞対象者拡大に言及
「チームや組織にまで広げてはどうか」
2019年11月19日(火)更新
稲葉ジャパン、プレミア12制し“世界一”
「監督経験なし」不安解消した攻撃的継投
2019年11月15日(金)更新
侍ジャパンに“カミカゼウキョー”出現
世界が仰天!“足の切り札”周東佑京
2019年11月12日(火)更新
原巨人、日本一奪還へ“元木鬼軍曹”始動
「声を出せ!」ワンチームに向け原点回帰
2019年11月8日(金)更新
阪神・矢野監督、藤浪再生に山本昌投入
「勝てぬなら勝たせてみようシンタロウ」
2019年11月5日(火)更新
Gグラブ賞、内外野での受賞は過去3人
コンバートを乗り越えた高田繁の誇り
2019年11月1日(金)更新
巨人・原監督「セにもDH制」の是非
パのリーダー、ホークスの強化戦略
2019年10月29日(火)更新
沢村賞、19年ぶりの「該当者なし」
求められる「分業制時代の新基準」
2019年10月25日(金)更新
ソフトバンク4連勝で3年連続日本一
分水嶺制した内川聖一「珠玉の打撃」
2019年10月22日(火)更新
怪物・佐々木朗希、“千葉の星”へ
名参謀・森繁和「末恐ろしい素材」
2019年10月18日(金)更新
楽天、新監督に2軍Vの三木肇昇格
石井GMが目指す「隙のないチーム」
2019年10月15日(火)更新
78年、巨人ドラフトボイコットの余波
江川事件で消えた落合博満の巨人入り
2019年10月11日(金)更新
和製大砲・筒香嘉智、MLB成功の条件
「逆方向に打て!」松井秀喜のお墨付き
2019年10月8日(火)更新
球界の巨星墜つ。金田正一の400勝神話
王貞治に対し「自分への投資を惜しむな」
2019年10月4日(金)更新
広島、次期監督は野村か佐々岡か!?
来季ミッションは「育てながら勝つ」
2019年10月1日(火)更新
ヤクルト館山昌平の“不死鳥伝説”
壮絶なる“175針の縫い跡”の教え
2019年9月27日(金)更新
巨人軍、総力戦で5年ぶりリーグ優勝
原辰徳監督曰く「個人軍では勝てない」
2019年9月24日(火)更新
「日本一」3連覇のカギ握るSB千賀滉大
「ルーズショルダー」は武器か欠陥か?
2019年9月20日(金)更新
最低防御率でリーグ連覇目前の辻西武
「理想よりも勝てる野球」のリアリスト
2019年9月17日(火)更新
ヤクルト新監督に高津臣吾浮上
投手陣再建はブルペン再編から
2019年9月13日(金)更新
“血マメ”佐々木朗希へのアドバイス
経験者・大野豊が語る「対策と処方」
2019年9月10日(火)更新
「戦力外」鳥谷敬の「いつか見た光景」
阪神、問われる功労者へのリスペクト
2019年9月6日(金)更新
広島エルドレッド、駐米スカウトに
敏腕・シュールストロムを目指せ!
2019年9月3日(火)更新
辻西武vs工藤ソフト、頂上対決の源流
「人を残すは上なり」広岡達朗の遺産
2019年8月30日(金)更新
日本ハム対西武、釧路で日没コールド
権藤博解説「地方ゲームが荒れる理由」
2019年8月27日(火)更新
今永昇太「我以外みな我が師」の投手道
川口和久が説いた「サウスポーの生命線」
2019年8月23日(金)更新
西武・森友哉の「仕留める」打撃術
史上4人目「捕手首位打者」なるか
2019年8月20日(火)更新
広島バティスタ、ドーピングで陽性反応
五輪に向け懸念される球界の「甘い認識」
2019年8月16日(金)更新
夏休み「3人退場」大荒れの獅子vs猛牛
過去には「審判集団暴行」の横浜事件も
2019年8月13日(火)更新
育成初! 野手から投手転向で初勝利
オリックス張奕の身体能力とセンス
2019年8月9日(金)更新
阪神、“死のロード”は死語のはずでは?
この5季で4度勝ち越しの原因と背景
2019年8月6日(火)更新
広島、「アップダウン」のその先は?
巨人、DeNAと三すくみで「混セの夏」
2019年8月2日(金)更新
最長身左腕、楽天・弓削隼人躍動せり
「うどの大木」から「大きな武器」へ
2019年7月30日(火)更新
佐々木朗希登板回避で球界に賛否
国保陽平監督が投じた一石の波紋
2019年7月26日(金)更新
広島・緒方孝市監督、ビンタで厳重注意
”愛のムチ”は過去。他球団は「他山の石」
2019年7月23日(火)更新
巨人・原辰徳監督、通算1000勝に王手
自らに誓う「聖域超え」のミッション
2019年7月19日(金)更新
DeNAヤスアキ、史上最年少150S達成
「適材適所」見抜いた中畑清の好判断
2019年7月16日(火)更新
ノムさん、「しっかりせい!」と愛のムチ
燕に「足を向けて寝られない」義理と事情
2019年7月12日(金)更新
プロコーチ吉井理人、絶妙の「立ち位置」
「距離」で判る指揮官との信頼感、緊張感
2019年7月9日(火)更新
ヤクルト石川雅規、200勝への道程
名球会入りすれば、史上「最低身長」
2019年7月5日(金)更新
迫る移籍期限、駆け込みトレード続出
「放出選手」に向けられる冷たい視線
2019年7月2日(火)更新
吉川光夫、3年ぶり「古巣」への思い
日ハム・栗山監督に「恩返し」なるか
2019年6月28日(金)更新
投手の故障予防に球数の「総量規制」
会議で聞きたい現役球児の“ナマの声”
2019年6月25日(火)更新
悪送球、ファンブル、トンネル……
広島ドラ1・小園海斗にプロの試練
2019年6月21日(金)更新
日ハム上沢直之、左ヒザ直撃で今季絶望
0.3~0.4秒で打球到達の恐怖とトラウマ
2019年6月18日(火)更新
レジェンド・杉下茂ら学生野球資格回復
今の学生に語り継いでほしい「戦争体験」
2019年6月14日(金)更新
吉田輝星、「スターの貫禄」で初勝利
初先発で見せた「新人っぽくない」84球
2019年6月11日(火)更新
広島、日本一獲りに向けクローザー交代
ハラハラ、ドキドキ「中﨑劇場」終幕か
2019年6月7日(金)更新
「ホームランはヒットの延長」は本当か?
NPBホームラン記録に挑む山川穂高の野望
2019年6月4日(火)更新
「令和の怪物」佐々木朗希、13奪三振
スピード違反!? 江川卓の牽制球伝説
2019年5月31日(金)更新
14連敗ヤクルト、トンネルの先に光は!?
OBが分析する連敗のメカニズムと脱出法
2019年5月28日(火)更新
早くも35℃超え! 今夏も猛暑の甲子園
熱中症予防「白スパイク」の早期導入を
2019年5月24日(金)更新
「雑草魂」上原浩治、44歳で現役に幕
浪人時代に養った反骨精神と背番号19
2019年5月21日(火)更新
名ファースト生むDeNAの「遺伝子」
ロペス、連続守備機会無失策の貢献
2019年5月17日(金)更新
元スカウトが断言「佐々木は大谷以上」
「令和の怪物」は甲子園に登場するか!?
2019年5月14日(火)更新
「母の日」に先発初勝利の広島・アドゥワ誠
ゴロアウト14が示す「打たせて取る」投球術
2019年5月10日(金)更新
チームの要“鯉女房”會澤翼がFA権取得
気になる「打てて守れる」捕手の動向
2019年5月7日(火)更新
「完投なし」で首位を争う東北楽天
平石監督のブルペン「働き方改革」
2019年4月26日(金)更新
「奇跡のバックホーム」の舞台裏
松山商-熊本工、名勝負の分岐点
2019年4月23日(火)更新
リリーバーも「沢村賞」の選考対象に!
沢村賞2回、斉藤和巳の脱先発選民思想
2019年4月19日(金)更新
イチロー、若き日の驚異の動体視力
テッド・ウィリアムズの“松ヤニ伝説”
2019年4月16日(火)更新
163キロ「令和の怪物」佐々木朗希
侍ジャパンTD鹿取義隆が占う将来性
2019年4月12日(金)更新
阪神・梅野、骨折後のサイクル安打
“自損事故”防ぐには「ベースは左足」
2019年4月9日(火)更新
巨人の開幕ダッシュに貢献・吉川尚輝
「うちには吉川がいる」と原辰徳監督
2019年4月5日(金)更新
雪に見舞われた楽天のホーム開幕戦
カブスのしたたかな寒冷地ビジネス

J:COMへのお申し込み

特典・キャンペーン

特典・キャンペーン

Copyright (c) Jupiter Telecommunications Co., Ltd. All Rights Reserved.

J:COM

Copyright c Jupiter Telecommunications Co., Ltd. All Rights Reserved.
ケーブルインターネットZAQのキャラクター「ざっくぅ」