二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2019年6月14日(金)更新

15:00

吉田輝星、「スターの貫禄」で初勝利
初先発で見せた「新人っぽくない」84球

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 モノの違いを見せつけた84球でした。昨夏、金足農(秋田)のエースとして甲子園を沸かせた吉田輝星投手(北海道日本ハム)が、プロ初先発で初勝利をあげました。12日、本拠地で行われた広島戦、5回1失点の堂々たるピッチングでした。なお、高卒新人の初先発初勝利はドラフト制導入以降19人目、安樂智大投手(東北楽天)以来、4年ぶりの快挙でした。

「楽しみながら投げた」

 ともあれ、吉田投手の快投を振り返りましょう。広島の1番・長野久義選手への初球は140キロのストレートでした。これは惜しくも、低めに外れました。続く2球目も141キロのストレート、これも低めに外れました。長野選手は、次は必ずストレートでストライクを取りに来ると読んだのでしょう。狙いすましたように一、二塁間を破り、ライト前へ運びました。

 続く2番・菊池涼介選手にフォアボールを与え、無死一、二塁。3番サビエル・バティスタ選手はサードゴロに打ち取ったものの、4番・鈴木誠也選手を歩かせて1死満塁。早くも試練です。

 だが、ここからが並の高卒ルーキーとは違うところです。5番・西川龍馬選手をわずか2球で追い込むと、最後は外のボール球を振らせて三球三振。ミートのうまい6番・磯村嘉孝選手には、追い込んだ後、この日最速となる147キロのストレートを真っ向から投げ込みます。これが伏線となり、7球目、115キロのカーブでサードゴロに打ち取りました。

 18歳は2回、長野選手のツーベースで1点を失ったものの、3回はクリーンアップを三者凡退。序盤に2点の援護をもらった吉田投手は、5回まで4三振を奪う力投でマウンドを降りました。

 試合はバトンを受けた日本ハムの中継ぎ陣が踏ん張り、6回以降、広島打線をわずか1安打に封じ、2対1。クロスゲームを制して、ルーキーに白星をプレゼントしました。

 初のお立ち台に呼ばれた吉田投手、笑顔でこう語りました。

「この日に向けてしっかり準備してきたことを、試合で全部出そうとしました。やはり1軍のマウンドは違うなと思いましたが、序盤のピンチを抑えられて、すごく楽しみながら投げられました。ピンチではストレートで押していって、打たれたらしょうがないという気持ちでした。空振りもとれたし、ファウルも打たせることができた。今日のようなボールがいいんだなと思いました」

二軍では0勝3敗

 敵地でかたき役となった広島の選手たちの声を集めてみました。「初球、空振りしたときに速いと思った。久しぶりにストレートがいい投手を見た」とは西川選手です。菊池選手と鈴木選手は「ストレートにクセがある」「真っスラ気味だったり、きれいな回転だったり、あまり見たことのないボールだった」と驚いていました。

 吉田投手から2安打を放った長野選手にしても、与し易い相手ではなかったようです。

「マウンドでの落ち着き方がルーキーっぽくない感じがした。セットポジションでボールを長く持ったり、反対に早く投げたり、そういうテクニックが上手だった」

 このように、相手から上々の評価を得た吉田投手ですが、初先発前は、「まだ1軍は早い」「もっと2軍で経験を積ませたほうがいい」という声が支配的でした。なぜなら吉田投手、イースタン・リーグで"炎上"が続いていたからです。4日、ジャイアンツスタジアムの巨人戦は、2回に5点を失うなど計6失点、予定より早い3回で降板となりました。イースタンでの成績は9試合に投げて0勝3敗、防御率4.15。とても1軍に上げられるような内容ではありません。

 しかし、自他ともに認める「日本一のピッチングコーチ」の権藤博さんによれば、「甲子園でスターとなったようなピッチャーに2軍の成績は関係ない」とのことです。さらに権藤さんは続けました。「一流のピッチャーは2軍戦で投げても真価は発揮できない。阪神の藤浪晋太郎なんて、その典型でしょう。上でちょっと悪くなると2軍へ行け、と言われる。そりゃ2軍で投げればモノが違うけど、そんなピッチングになんの意味もない。藤浪は高校時代、甲子園で春夏連覇をしたほどのピッチャーですよ。大舞台である1軍で使い続けてこそ成長するし、光るんですよ」

 権藤さんは、福岡ソフトバンク時代の松坂大輔投手(中日)が2軍で調整している時も、同じようなことを言っていました。スポットライトを独り占めした経験のある選手には、それにふさわしい舞台を提供したほうが、本人のためにもチームのためにもなるということでしょう。

K.Ninomiya二宮清純
                                                                          

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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