二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2020年11月27日(金)更新

15:00

ホークス、対巨人2年連続4タテの衝撃
柳田悠岐の「セ・リーグにはない打球」

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 下馬評通りと言えば下馬評通りですが、まさか、ここまで差があるとは……。21日に始まった福岡ソフトバンクと巨人の日本シリーズは、25日、ソフトバンクの4連勝で幕を閉じました。ソフトバンクの日本一は前身の南海、ダイエー時代を含め11度目、4年連続日本一はパ・リーグでは史上初です。

「力負けだった」

 全4戦のスコアは第1戦が5対1、第2戦が13対2、第3戦が4対0、第4戦が4対1。接戦はひとつもありませんでした。史上初の2年連続4連敗を喫した巨人は、チーム打率1割3分2厘、4試合で16安打、4試合で41三振などいくつものシリーズワースト記録もつくってしまいました。

 敗軍の将である原辰徳監督は「兵」のみならず「将」についても言及しました。

「(力負けかと言われれば)その通り、ずっとそう言っている。打線がなかなか機能しなかったし、投手陣も本塁打を何本も打たれた。私も含め、コーチ、選手はひと回りもふた回りも大きくならないといけない」

 ソフトバンクのパワーを印象付けたのが、第2戦(22日・京セラドーム大阪)の初回、柳田悠岐選手の放ったセンターオーバーのツーベースです。

 1回表、1番・周東佑京選手が三振に倒れ、2番・川島慶三選手が四球を選び1死一塁。ここで3番・柳田選手が打席に入りました。巨人の先発・サウスポーの今村信貴投手は1球目フォークボール、2球目カットボール、3球目フォークボールと慎重に低めをつき、2ボール1ストライク。次の4球目でした。

 甘く入ったシュートをとらえた打球は「ガツン」という衝撃音とともにセンターへ。この打球に対し、丸佳浩選手は一旦、前進し捕球体勢に入ります。ところが、空中で打球は不思議な軌道を描きます。あろうことかライト方向に変化しながらさらに勢いを増したのです。丸選手はあわてて背走したものの追いつかず、打球はワンバンドしてフェンスへ。跳ね返ってくる間に川島選手が一塁からホームイン。先制したソフトバンクはその後も着々と得点を重ね、13対2と圧勝しました。

 周知のように丸選手は昨年まで7年連続でゴールデングラブ賞に輝いた名手です。その丸選手が目測を誤るほどですから、柳田選手の打球のエゲツなさが窺えます。

 のべ6球団でコーチを務めた鈴木康友さんがこう言って目を丸くしていました。

「あの柳田の打球は、“エグい”としか言いようのない当たりでした。バチーンと真っ芯で捉えた、打つというよりシバいたという表現がぴったりくる、実に柳田らしいバッティングです。引きつけて強く叩いているからボールが変形していたんでしょうね」

縮み上がった一打

 そして、こう続けます。

「空中でゴルフのドローボールのような変化をしながら伸びていきましたよ。あんな打球、セ・リーグの打者は打てませんから、丸も初めて見たでしょう。面食らったと思いますよ。それはマウンドの今村も同様です。“なんじゃアレは”とパニックになったんじゃないでしょうか。失投したらやられると腕が縮こまったのか、案の定、2回途中、4点をとられて降板してしまいました」

 柳田選手の「セ・リーグにはない打球」が丸選手の目測を誤らせ、今村投手を縮み上がらせたというのです。柳田選手は続く第2打席でもレフト前ヒットを放ちましたが、巨人を震え上がらせるには初回の一打で十分だったということでしょう。

 ところでこのシリーズ、「セ・リーグにはない××」というフレーズが、多くの評論家や解説者の口をついて出ました。

 たとえば初戦に先発した千賀滉大投手の落差のあるフォークボールは「セ・リーグにはないフォークボール」。2戦目に先発した石川柊太投手の通称パワーカーブは「セ・リーグにはないカーブ」といったありさまです。4勝のうち3勝に貢献した左のセットアッパー、リバン・モイネロ投手に至っては「セ・リーグにはないタイプのピッチャー」という物言いでした。

 今回のソフトバンクの優勝で、この10年に限ると日本シリーズの戦績はパ・リーグの9勝1敗です。格下のセ・リーグが格上のパ・リーグとの差を縮めようと本気で思うのであれば、手合わせ、すなわち交流戦の増加を申し込むしかありません。相撲ではありませんが一番でも多く横綱や大関の胸を借りることです。

 ところが、このところ、なぜかセ・リーグは交流戦に冷淡です。2005年にスタートした当初はホーム3試合・ビジター3試合の36試合制でしたが、セ・リーグが交流戦に後ろ向きだったため、07年からホーム2試合・ビジター2試合の24試合制に。そして15年からは1カード3試合(ホーム・ビジターは隔年開催)の18試合制へと減っていきます。今年はコロナ禍を理由に、ついに中止となりました。

 セ・リーグが交流戦に後ろ向きなのは営業上の理由が大きいとされています。巨人戦や阪神戦を減らしたくないのでしょう。しかし、ここまでリーグ格差が広がると、数年のうちに縮めるのは困難です。「セ・リーグにはない××」。リーグ間格差を物語る、これ以上の言葉はありません。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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